Archive for the ‘書評’ Category

(書評)「モチベーション3.0(Drive)」と自律の4要素

書評 | Posted by IHayato
Jul 30 2010

モチベーション3.0」を読んでからというもの、モチベーションについて考え続けています。「フリーエージェント社会の到来」も多大な影響を受けましたし、ダニエル・ピンクの著書は僕と相性が良いようです。

もうたくさんの人がレビューを書いていると思いますので、凄く印象的だった箇所をピックアップ。


・Type I(内から湧き上がるモチベーションを持って働くことができる状態)の行動は、人々が4つの自律を持っている時に生じる。

1.タスク(Task)
Googleの20%のルールのように、どんな仕事をするかについての自律は、モチベーションを高める。

2.時間(Time)
場所や時間に関する自律も、モチベーションを高める。どこで働くかを自由にすることで、離職率も低下する。

3.テクニック(Technique)
ザッポスはマニュアルの無いコールセンター運営で有名。コールセンター社員は顧客に感動を与えるために、自らのテクニックを自由に追求することができる。

4.チーム(Team)
働くチームに関する自律も重要。


「4つのT」の自律がモチベーションに関わる、という指摘は本当に納得のいくところ。これらに関する自律は生産性にも大いに影響する、ということは科学的にも立証されているそうで。

この本の中で何度も繰り返されるメッセージの一つは、「科学的に証明されていること」と「ビジネスの現場で起きていること」のギャップを埋める、というものです。

科学的事実と慣習の不合理が、ピンク氏の問題意識であり、それが彼にこの本を書かせたDriveなのでしょう。


本書の中で紹介されている、セス・ゴーディンの言葉も素晴らしいです。自力で訳しているので、翻訳が宜しくないのはご愛嬌…。意味あってないかも?

起業家として、私はタスク、時間、テクニック、チームに関する100%の自律を祝福している。

これらの自律を維持する限り、私は必ず失敗する。発することに失敗する。抜きん出ることに失敗する。フォーカスすることに失敗する。何も生み出せなかったり、市場から排除されるものを作ってしまうことは避けられない。

アート(Art)の素晴らしい点は、自分の限界を掴み取れることだ。こうした私は自律を愛してやまない。限界を掴み取ることができる自由を。


ダニエル・ピンクの説く、これからのモチベーション(モチベーション3.0)に必要なのは「ビジョン」や「問題意識」なのかな、と読み取っています。

自分のビジョンを実現していくためには、自律が求められます。自律が許されない状況では、目指すべき到達点へは一歩遠のいてしまいます。そうした環境ではモチベーションは内から沸き起こってはきません。


ピンク氏のアイデアは、幸せに働く人を増やす力を持っていると考えます。

僕の周りでも自律を持って働いている人は、誰もが幸せそうです。

もちろん憧れもありますが、「自律」がもたらす幸せと生産性は、僕自身も経験から感じるところです。経験上、少なくとも文章を書くなら自宅やカフェの方が良いものが生まれます。(僕の場合は)オフィスでは集中力が細切れになります。


最近「マネジメント」という言葉の意味を考えています。

外注可能な仕事が増えていく社会においては、「管理」という言葉の文脈を変える必要があるんじゃないかな、なんてことをフニャフニャと。

人はもっと、幸せに働くことができるはずです。モチベーション3.0の考え方が広まり、問題意識・ビジョン・自律を携え、幸せに働ける人が増えていけばとても素敵です。


個人的に、今年のトップ3に入る本です。なんとなく、このブログを読んでいる方には相性の良い本だと思います。


(書評)「つぶやき進化論」

書評 | Posted by IHayato
Jul 25 2010

献本を頂いたのでレビュー。原著のSocialnomicsは前から読みたいな、と思っていたので願ったり叶ったり。

読書メモとして面白いと思った点を箇条書きで。


・ソーシャルノミクス(みんなの経済)は「ふつうの人」が主役の経済

・不動産情報サイトのZillow.comは、不動産業者に加えてユーザーが情報の更新をすることができる。wikipedia的な要素を盛り込むことで、情報を最適化。

・ベーコンソルト(ベーコン味になる調味料)はMySpaceで生まれた。クチコミで広がり、18ヶ月で60万本を売り上げた。

・ソーシャルメディアを使えば、子どもの様子を「そっと」うかがうことができる。親と子を近づける効果もある。

・これまで多くの顧客はわざわざ企業にクレームを伝えたりしなかった。今は消費者がどこからでも不満を発信できるようになっている。

「今の若い人は、1対多のコミュニケーションを好みます。そんな彼らにとって電子メールは時代遅れなのです」

・ボストン大学では2013年以降は新入生に電子メールのアカウントを配布しないことにしている。

若い世代は慈善活動が好き。2008年最も人気の高かったアプリはチャリティアプリ「Causes」。


・1980年代に生まれたジェネレーションYは、自分勝手な行動が社会をどれだけだめにするかを目の当たりにしてきたので、できるだけその反対を目指そうとした。//ジェネレーションYは「世の中をもっと良くしたい」という意識が強い世代なのだ。

・この新しい世界では、まずメッセージ戦略を決め、市場からのフィードバックを参考にしながら、戦略が正しいかどうか見直したり修正したりしても構わないのだ。

・Amazonのレコメンドは、たまたま同じ購入パターンをもつ何千人と言う人の集まりでしかない。個人的なつながりは一切ない。

・「友達が読むかもしれないレビューは“辛口”になる」という法則がある。自分のことを知っている人が読むことを考えると、スペルミスも避けたいし、慎重に評価をするはずだ。

・動画サイトのHuluは、あらかじめコマーシャルの長さがどのくらいなのかを知らせてくれる。

・今採用担当者が注目するべきポイントは、その人の持つネットワークだ。新しい人材を大量に採用しようとしている場合、すばらしいネットワークをもった人を1人見つけるだけで、即戦力を手に入れることになる。

・「ソーシャルネットワークの技術は求人の現場に素晴らしい変化をもらたらしました。適切なキーワードを使ったプロフィールさえ書いてくれれば、こちらは簡単にその人を見つけることができるのですから。

・Facebookのステータスを「彼氏あり」から「婚約」に変えたとたん、結婚式場や写真館の広告を受け取るようになった。

・広告主にとってソーシャルメディアで広告を出すことの大きなメリットは、ユーザーの年齢や職業などの属性だけでなく、趣味や人間関係といった「行動様式」までわかることだ。


黒字でピックアップしていますが、LinkedInについて書かれた「ソーシャルネットワークの技術は求人の現場に素晴らしい変化をもらたらしました」という言葉は印象的。

日本では、まだこの変化は訪れていません。が、ツイッターを就活に使う学生なんかを見ていると、着々と機は熟しつつあると感じます。就活生向けのLinkedInは可能性があるでしょう(誰か一緒に考えませんか?)。

ウェブでの情報発信がビジネスにつながるようになれば、オンライン/オフラインで一貫したアイデンティティを持つ人が増えるので、日本のウェブはもっと面白くなると考えています。「会いたい!」と思った人に会うMeetupも、より頻繁に発生するようになるでしょう。


スターバックスやコムキャストといった大企業の施策や、Hulu、トリップアドバイザーといったスタートアップに触れている箇所も新たな発見が多かったです。

タイムマシン経営は難しくなっているとは言え、米国の方が進んでいるのは確かですから「これ日本にもあったら良いなぁ」という気付きは本書から十分得ることができました。


原著のSocialnomicsは82のレビュー投稿、星4.5の評価を得ているベストセラー本です。

こうした情報を日本にしっかりと届けてくれるのは意義深いことだと思います。翻訳を手がけた原田さん、竹村さん(@tokyopingu)に感謝です。


現在予約受付中です。ソーシャルメディア全般に興味のある方はぜひ。


(洋書紹介)Open Leadership

書評 | Posted by IHayato
Jul 01 2010

グランズウェルの続編、と名高いシャーリーン・リーの「Open Leadership: How Social Technology Can Transform the Way You Lead」からエッセンスをご紹介。


@Capoteさんが紹介しているインタビュー記事で、本書が執筆された背景などが書かれているので先に読まれると良いかもしれません。

グランズウェルの作者が語る「オープンリーダーシップ」


以下、エッセンスです。


・オープンであることは、絶対のマントラや哲学であるべきではなく、価値ある結果をもたらすための一つの手法だと捉えるべきだ。

・透明性、本物らしさ、リアルさをもって、「どの程度(how much)」オープンになるか、ということが問題だ。

・リーダーシップは新しいアプローチが求められている。良いコミュニケーターであるだけで不十分だ。より親密な関係を構築するために、あなたは個人的な観点や感情を共有しなくてはならない。ネガティブなコメントについても、それはあなたのオープンさを発揮し、学ぶための機会だと捉える必要がある。さらに、謙虚であるだけでは不十分だ。あなたは「謙虚になれる機会」を常に探すことが求められる。

・Appleはクローズドでコントロールされた会社。高品質のプロダクトを開発できる彼らは、オープンである必要がない。

Glassdoor.comは勤務中の会社に対する情報を匿名で投稿できるサイト。コントロールがもはや不能であることの一つの事例。

・Open Leadershipは「目的を達成するために、コントロールすることを諦め、自信と人間性をもって人々の関与を奨励すること」と定義される。

・Open Leadershipの5つのルール。1.顧客と消費者が持つ力を尊重すること 2.信頼を得るために恒常的にシェアすること 3.好奇心と人間性を養うこと 4.オープンさと責任を結びつけること(Hold openness accountable) 5.間違いを許容すること

・オープンであることの4つの目的。1.学ぶこと(Learn) 2.対話すること(Dialog) 3.サポートすること(Support) 4.革新すること(Innovate)

・オープンリーダーは楽観的である必要がある。悲観的なマインドセットでは、行動することができない。

・オープンリーダーは失敗から効果的に学ぶ。Googleは”Fail fast, fail smart.”を掲げている。


コントロールを諦めること、というメッセージは力強いです。

タイトルどおり、リーダーシップについて書かれた本。その意味では企業のソーシャルメディア担当者のみならず、ビジネスマン全般に薦められる本。ソーシャルメディアを活用する上では、本書で書かれているようなオープンさが必要なのでしょう。

当たり前ですが、数値的な根拠をもってオープンさの大切さを説いています。オープンにすることで得られる効用を費用的に分析したテーブルは興味深いです。社内を説得する資料としてもそのまま使えそうな感じ。

他にも、各種チェックシート、豊富な事例など、ここでは取り上げてないものも多数あります。


Amazonの紹介文より、英語ですが従来的なリーダーシップとオープンリーダーシップの違いを示した表。



非常に価値のある一冊だと思います。この本を読んで、道が開ける人は多いでしょう。

事例も豊富で、組織のあり方を考える上では参考になります。ソーシャルメディアと企業のあり方に興味がある方は、読んでおいて間違いなく損はないでしょう。



米AmazonからDLできるKindle版は$11.99。iPhoneなどの端末があれば日本からでもDL可能。今更ですが、全然値段違いますねぇ…。僕は貧乏さも相まってもっぱら電子書籍。電車の中でも片手で読めるので便利。


(洋書紹介)コトラー「Marketing 3.0」

書評 | Posted by IHayato
May 25 2010

社長から「これ読んでエッセンスまとめといて」と手渡された一冊。待ってました!

コトラーの著作をまともに読むのはこれが2冊目。まだまだ駆け出しマーケターですから、深く論じることはできません。

現在3/4程度読み進めました、ここまでで気になったセンテンスを幾つか紹介します。


・価値志向(value-driven)の時代になり、マーケティング3.0が立ち上がってきた。

・マーケターは消費者をマインド、ハート、スピリットを持った人間として扱う必要がある。

・混乱を極めた現代において、人々は社会、経済、環境の問題に対して、明確なミッション、ヴィジョン、価値をもって解決に向かおうとする企業を捜し求めている。

・消費者は、機能的、感情的な満足だけではなく、人間精神の満足(human spirit fulfillment)を追い求めている。

・マーケティング3.0は、消費者を完全な人間存在(complete human being)として扱う。

・マーケティング1.0の目的:製品を売ること。マーケティング2.0の目的:消費者を満足させ、保持すること。マーケティング3.0の目的:世界をより良い場所にすること。

・今や、企業は消費者とコラボレーションしなくてはならない。

・マーケティング3.0は、垂直的なコントロールが効かない、水平的なコミュニケーションの時代を表している。正直者、オリジナリティ、本物感(Authenticity)のみが有効である。



打ち震えたのは、マーケティング3.0の目的を「世界をより良い場所にすること(Make the world a better place)」と表現していること。社会貢献に関心が高い身としては、この意味を少なからず「体感」することができました。今後の人生を通して、この一言を体で感じていきたいものです。



本書、驚くくらい平易な言葉で書かれています。ページ数も180ページ程度ですので、英語が苦手な方でも少ない抵抗で読んでいただけると思います。

色々書きたいのですが、経験が付いてこないので何だか言葉になりません。とにかくお勧めです。ページをめくるのがワクワクします。社会貢献、特にBOPビジネスなんかに興味がある方は必読と言って良いかも。

個人的な話と絡めれば、「全て人と組織にソーシャルウェブの力を!」というのが、最近考えているミッションです(「日本にソーシャルメディアの風を!」はそろそろ終わりな気分です)。世界をより良くするために、確固たるミッションをもって行動していきたいと考えさせられました。




Amazonより本書の紹介文を引用。

出版社/著者からの内容紹介
現代マーケティング論の第一人者フィリップ・コトラーがマーケティングの未来像を語る、注目の新著。

本書でコトラーは、これまでのマーケティングの潮流を「製品中心主義」のマーケティング1.0から「消費者中心主義」のマーケティング2.0への変化と整理した上で、来たるべきマーケティング3.0は「人間中心主義」になると予測する。

人間中心主義のマーケティングとは、顧客を単なる「消費者」としてではなく、多元的で能動的な存在、価値の創造に積極的に関わろうとする人間として理解し、そのような顧客のニーズに応えることを意味する。いくつかの先進的な企業は既に、顧客の参加意識・創造性・コミュニティ意識・理想主義といった深層的なニーズを満足させる製品・サービス・企業文化を提示し始めている。そのようなマーケティングを実現するには、環境・健康・社会問題に取り組む企業の社会的責任を果たすことも重要な要素となる。

マーケティングの世界的な流れに関心を持つすべての人々にとっての必読書。


(書評)池田紀行『キズナのマーケティング』

書評 | Posted by IHayato
Apr 06 2010

僕の所属しているトライバルいkうメディアハウスの代表取締役社長、池田紀行(@ikedanoriyuki)の著書がついに手元に。

ゲラのチェックを手伝ったこともあり、僕にとっても思い入れのある本です。ゆえに、ある程度バイアスが掛かってしまうので、いくらか割り引いてご覧になって頂ければ幸いです。



そもそも、僕が転職を決めたのは、社長の「健全にソーシャルメディアを浸透させていこうじゃないか」という一言でした。まさにそれは自分のミッションと合致するところでしたので、半ば即決で入社を決めた次第です。
そして、この本を読んで、改めてトライバルメディアハウスに入社して良かったと感じることができました。この本は「ソーシャルメディアは魔法だ」という誤解を解き、健全にソーシャルメディアが浸透していくための一助となるはずです



内容としては、ソーシャルメディアを企業として活用していくにあたって、抑えておくべき内容が網羅されている、と言えるものです。それもそのはず、この本なんと334Pもあります。お手元に新書があれば比較していただきたいのですが、通常の新書の1.5倍はあるボリュームです。

僕がこれまでブログに書いてきた内容は、ほとんどこの書籍に詰まっています。しかも、当然ながらより分かりやすい形で。なんだか月並みの表現になってしまいますが、ソーシャルメディアを企業として活用したいのなら、読む価値は大いにある本でしょう。



こういう本が出てくると、なおのこと頑張らなきゃ、と奮起させられます。トライバルメディアハウスのアナリストの一人として、最先端のソリューションを研究・提案していきたいと思います。




と…これだけじゃ何なので、読書メモとしてセンテンスをいくつかご紹介します。

・皆さん、そろそろ目を覚ましましょう。ソーシャルメディアマーケティングは「魔法の杖」ではない。何でもかんでもソーシャルメディアマーケティングで解決するわけはないし、広告やPRを代替するものでもない。

・ソーシャルメディアは流行ではない。電話の普及が僕たちのコミュニケーションや生活を変えたように、ソーシャルメディアも僕たちのコミュニケーションと生活を大きく変えているのだ。

・ソーシャルメディアはクチコミ同様、消費者同士が利害関係無く、自由にコミュニケーションをしている公園なのだ。その公園であなたはマーケティングを「させていただく」のである。それがソーシャルメディアマーケティングなのだ。

・いいですか、皆さん。お願いですから、いますぐにブログを解説して、今日からブログを書き始めてみてください。ツイッターを始めてみてください。ミクシィのコミュニティで会話をしてみてください。…(中略)…。大げさかもしれないけれど、ソーシャルメディアへの参加は、確実にあなたの感覚を変えるだろう。

・すべては「熱意を持った一人」の社内啓蒙から始まる。

・消費者とのキズナを深めることで、毎度シェアや顧客生涯価値を向上させ、結果として競合他社との差別的競争優位性を確保する。1980年頃から叫ばれ始めた「消費者志向のマーケティング」に、結果として原点回帰しているのです。



なんてフレーズにピンと来たら是非。

*Amazonアフィリで得られた収入は、JustGiving Japanを用いて寄付に回します。現在1,000円寄付

(書評)「ツイッターノミクス」

書評 | Posted by IHayato
Mar 05 2010

@tsudaさんが解説している、タラ・ハント(@missrogue)著の「ツイッターノミクス(原題:The Whuffie Factor)」の献本を頂きました。
@yteppeiさん、@andvertさん、ご好意感謝です!)


原著読もうと思っていたので、大変助かりました。そして、予想通り、これはなかなか面白い本です。以下簡単にレビュー。


「ウッフィー(信頼・評判・評価・共感)」はWEB2.0の通貨。

ウッフィーは与えることで増えていく。

・ウッフィーを失うことは、経済的な損失に繋がる。DELLは炎上事件で目標売り上げを達成できず、株価を低下させた。

・DELLはブログとIdeastorm(掲示板サイト)を立ち上げ、ウッフィーを取り戻した。

・「贈り物は、人と人を結びつける。そして、ギブアンドテイクの精神を生む。一対一のやり取りが容易の行えるオンライン・コミュニティでは、贈り物を起点に一対一の関係が形作られていく。贈り物から始まる“つながり”が、オンライン・コミュニティの原動力だ。

・社会貢献そのものを事業の目的とすれば、事業は成功する。クレイグスリストの事例。

・真の顧客重視が求められている。

・「誰かが誰かを助けるのを助ける」と、ウッフィーの循環が生まれる。

ウッフィーの多寡は企業間競争における差別化の要因となる。

この本が面白いのは、ソーシャルメディア時代の貨幣を「ウッフィー(評判)」としている点でしょう。これは本当に同意します。僕もウッフィーを得るため、日々邁進しています。そして得てきたウッフィーは、確実に僕にメリットを与えてくれています(献本を頂いたのもウッフィーのお陰です)。

そしてウッフィーは経済的な利益を与えてくれる、とタラ・ハントは説いています。この点についても、やはり同意できます。個人レベルではそれは確実ですし、企業レベルでも「ウッフィー」の獲得は競争優位に立つための手段となり得るでしょう。ソーシャルメディアを有効活用して、「ウッフィーの獲得」を一つの目的にしていく。これはsmashmediaの河野さんの“最愛を目指せ”に通じる話だと思います。

この本は「ウッフィーの大切さ」「企業がどうウッフィーを得ていくか」について、具体的な事例を出しながら解説しています。いずれも首肯できる内容で、全く知らなかった事例も数多く、研究するには最適の資料です。

ソーシャルメディアのビジネス利用への入門書として有用でしょう。ある程度ソーシャルメディアに慣れ親しんでいる人にとっても、豊富な事例や「ウッフィー」という観点はやはり知るに値すると思います。

著者であるタラ・ハントと同様、僕もウッフィーを通貨とする「ギフト経済」からたくさんの恩恵を得ています。勝手ながら、かなり著者にはシンパシーを感じます。上のレビューには少しバイアスが掛かっていることもご了解ください。ですが、面白い本ですのでご興味があれば是非どうぞ。予約受付中です。



この流れで、本書中でもたびたび言及されているGary Veynerchukの著書「Crush It!」の邦訳も期待します。「ツイッターノミクス」は企業向け・ビジネス利用向けですが、「Crush It!個人がどうソーシャルメディアを活用し、人生を変革していくか、という熱い題材です。

現段階では、ソーシャルメディアをより上手に活用できるのは、組織ではなく「個人」だと考えています。「ツイッター、競合もやってるし企業として使わないと!」という風潮がありますが、個人レベルの活用についても、追求していくべきなのでしょう。「Crush It!」や「Me 2.0」など、海外では既に「個人のソーシャルメディア活用」についての良い本が出ています。日本語訳の登場に期待です。

書評「<聞き上手の法則> 人間関係を良くする15のコツ」

書評 | Posted by IHayato
Jan 18 2010

ソーシャルメディアと全く関係のない本ですが…ソーシャルメディアの本質は「会話」であり「関係構築」だと考えているので、「会話」それ自体に関する本も読むべきかなと思いまして。僕自身、ツイッターの会話なんてものすごく手こずったりします。

この本の著者、澤村直樹氏は「傾聴セミナー」も主催している臨床心理カウンセラー。経験豊富なカウンセラーだけあって、非常に平易で真理を付いた本です。

個人的に有用だった指摘をピックアップ。

・人は自分の得意なフィールドへ話を持って行きたがる。聞き手が自分の得意な話題に誘導しがちだ。話し手は「クラシック全般」について話したいのに、聞き手が「マーラーの交響曲」の話に誘導する、といったことは体験レベルでも良くある。これでは会話はぎくしゃくしてしまう。

・聞き手は自分に「承認欲求(自分の有能さを評価されたい欲求)」「防衛反応(劣等感を感じ、相手に対して攻撃的になる)」があることを十分に知らなければならない。

・話し手が使ったキーワードを共有する。違うキーワードを出さない。

・有能感を出さないために「無能になって聞く」ことを心がける。話し手は優越感を感じることで満足し、聞き手に話す機会を与えてくれる。

・「でも」を使わない。

・求められていないアドバイスはしない。「アドバイスをしたい」感情は「自分の承認欲求」や「相手に対する優越感」から生まれていることを知る。自分が満足をしたいがために、アドバイスをしない。

・相手が「評価して欲しい部分」を評価する。

・「聞き方のクセ」「心のクセ」を知る(本には自己分析用のエゴグラムが付いています)。

いやはや、この抜粋では伝わらないかもですが、読めば読むほど「あるある」と感じさせる本です。現実社会でのコミュニケーションはもちろんのこと、ツイッターのような文字数が限られたコミュニケーションを行なう上でも有用な指摘です。

ソーシャルメディアマーケティング(SMM)をやる上で、「傾聴術」は非常に重要だと思います。そもそもSMMのスタートは「聴くこと」から始まるものですし。

ソーシャルメディアに担当者レベルで携る上では、マーケティングや広告に対するリテラシーよりも、むしろ基礎的なコミュニケーション能力が重要になってくるでしょう(プランニングをやる場合は別ですか)。コミュニケーション能力のない担当者には、やっぱり顧客との「会話」任せることはできません。人によってはマーケティング本よりも、自己啓発本読んだ方が有用な場合もあるかも知れません。実際、カーネギーの「人を動かす」なんて本当に良いマーケティング本です(いずれSMMの観点から書評書こうと思います)。

と言うわけで、現在「influence: The Psychology of Persuasion (Collins Business Essentials)(説得の心理学)」という本を読んでいます。米国では今ベストセラー。邦訳が出て欲しい本の一つです。これもソーシャルメディアを直接扱った本ではありませんが、ソーシャルメディア上で「会話」をしていく上では、きっと役に立つでしょう。有用な指摘があったらいずれブログで書評を。読み進めます。

(書評)山岡隆志著「アドボカシー・マーケティング」

書評 | Posted by IHayato
Jan 13 2010

ソーシャルメディアマーケティング界隈で話題の素晴らしい本。内容自体は直接ソーシャルメディアを取り上げたものではありませんが、非常に本質的な指摘に満ちています。副題は「顧客の信頼を勝ち取る18の法則」。山岡氏はMITスローン経営大学院でアドボカシー・マーケティングを学んだ方です。お会いしたことがありますが、マーケティングに対して大変情熱的だったのが印象的です。ブログはこちらツイッターはこちら

例によって得られたインサイトをまとめ。

・「アドボカシー・マーケティング」とは徹底的に顧客側に立って物事を考え実行する信頼ベースのマーケティング手法。

・インターネットの普及を要因として、カスタマーパワーが増大している。

・顧客優位の世界では、全ての顧客に対して、あらゆる情報を包み隠さず提供することが得策。「透明性」が求められている。

・ファッション雑誌「sweet」のポジショニングは、従来のようなデモグラフィックスに基づくもの(20代女性、30代女性)ではなく「いくつになってもカワイイものが好きな人向けに、普段着を提案すること」。デモグラフィックスによらない、顧客視点でターゲットを定めている。「sweet」は100万部を超える、低迷する雑誌業界の中では異例の成功。

・デモグラフィックスに合わせて杓子定規に行なわれるようなCRMは、時代遅れで効果もない。顧客の生活・考えを考慮し、それに対応したCRMが求められている。

マーケティングは全社員で行なうべきもの

・「マーケティングはあまりに重要だからマーケティング部にばかり任せておけない。たとえ企業が最高のマーケティング部署を持っていたとしても、他の部署が顧客の利益を満足させられなかったら、マーケティングは失敗する(ヒューレット・パッカード共同創業者、デビッド・パッカード氏)」

・競合他社とシェアを奪い合うよりは、顧客ロイヤリティの競争に軸足を移すべき。

ロイヤリティは間違いなく売上げ増とコスト減に貢献する(本文中に航空業界、レンタカー業界を分析したデータあり。衝撃的!)。

信頼関係を強固にする要素は「誠実」と「献身」。顧客の要求に何でも応じるのではなく、できないことははっきりと明言し、できる範囲で最大限の誠意と努力を示す方が良い。

・オーケーストアは店にとって不利な情報もそのまま載せる(「来週から割安となるので、お急ぎでなければ買い控えをお勧めします」)。

クレーム対応はコストではなく、収益源であると認識すべき

・アドボカシー戦略では、顧客が困っていることを解決する提案をし、顧客が望んでいる情報やサービスを提供する。

現場への権限委譲によって従業員のモチベーションは高まり、創意工夫をして顧客にとっての最良を考えるようになる。未来工業では「ホウ・レン・ソウ」は禁止。創業者曰く「現場が一番現場を知っているから、無知な上司に相談するより、自分で考えてどんどん自分で決めればよい」。

・職場生活の質を高めることも顧客満足を追求する上で重要。SASインスティチュートは福利厚生の充実度で有名。企業ポリシーは「幸せな社員がお客様を幸せにする」。

トップダウンで、失敗を賞賛する組織になる必要がある。「成功の反対は失敗ではなく惰性である(ジレット元会長、ジェイムズ・キルツ)」。「やってみなはれ(サントリー)」。「失敗もしないで小さな成果しか出さない社員は、仕事をしていないのと同じと見なします(日本マクドナルド社長、原田泳幸)」。

これらの言葉にピンと来た方は読む価値大いにありです。マーケティングの大転換期を捉えた、素晴らしい本です。なぜソーシャルメディアマーケティングが必要なのか?という問いに対する答えも得られます。つまり、「透明性」と「“個”客対応」が求められる時代であり、その対応策としてソーシャルメディアは有効な解になり得るのです。

例えば、「アドボカシー戦略では、顧客が困っていることを解決する提案をし、顧客が望んでいる情報やサービスを提供する。」という一節から、ツイッター検索で特定のキーワードをクロールし(例えば「不眠」)、困ってる顧客を見つけ提案をする(「うちの睡眠導入剤はいかかですか?無料でお届けしますよ」)といったSMM戦術を思わせます。

また、アドボカシー・マーケティングの実現には、トップダウンで現場に権限委譲を行なう必要がある、という指摘も理に適ったものです。ここら辺で悩んでいる企業担当者は多いのではないでしょうか。ツイッターを用いてさらなる顧客サービス(クーポン発行、お試し品贈呈など)がしたいのに、組織がそうさせてくれない、といったような。

ザッポスの奇跡(書評へリンク)」と同様に、働くことについても深く考えさせられました。マーケティング部門は勿論、人事部門の方々にも是非読んで貰いたい内容です。事例も非常に豊富です(山岡氏の研究の成果に感嘆します)ソーシャルメディアマーケティングに興味のある人は文句なしにお勧めです。

(書評)石塚しのぶ著「ザッポスの奇跡」

書評 | Posted by IHayato
Jan 04 2010

ツイッターを使ったカスタマーサポートで知られるザッポスについての興味深い本を読んだのでレビュー。サッと読める割りに、非常にたくさんのことを考えさせられました。良著です。

得られたインサイト・面白いと思った点をピックアップ。

顧客サービスは最も効果的なマーケティングであり、価値生産活動であるカスタマーサポートの電話ほど重要なブランディングの機会はない。顧客が自分たちの言葉を一対一でしっかりと聞いてくれるチャンスが他にあるか?

・「企業文化」というものは多くの企業で二の次にされているものだが、ザッポスは企業文化を前景に据え、全てはそこから始まると考えている。

・採用においては企業文化に合っているかどうかを最重要に考える。お金のためだけに働こうとする人間をあぶり出すために、採用後のトレーニング期間中には「採用辞退ボーナス」として2000ドルを与える制度も存在する。徹底した企業文化主義。

・企業文化を刷り込むための様々な仕組みがある。ここはかなり入念に練られている。教育の機会をふんだんに提供することも、企業文化刷り込みのための重要な施策。

人々の欲求は変わってしまった。マズローの段階欲求説で例えると、さらに上の欲求を消費者は求めるようになった。「送料無料」は当然だし、どんな製品も買うことができてしまう。その上で差別化の要因となるのは「顧客サービス」。

・消費者に限らず、労働者もマズローの段階の最上位(自己実現)を求めるようになった。労働者はお金だけでなく、帰属意識、満足感、創造力、達成感、使命感といったものを仕事に求めるようになっている。

サービス経済の高度化とウェブは、「個」のパワーを飛躍的に拡大させた

・顧客が個性を主張し、ネットを通じて「部族」を形成する「マス・ニッチ」の世の中では、「個」客に対応することが重要になってきた。

ザッポスのマーケティングは「ピープル・プランニング」。従業員一人一人がメディアとなっている。ブランディングにおいて「人」をいかに活用していくか。

・「個」の時代は「透明性」の時代でもある。透明性を追い求める企業こそが成功する。ソーシャルメディアによる情報開示・対話の窓口の開放が進んでいく。時代が進めばあらゆる企業は透明にならざるを得ない。

僕の考えと引用がごちゃ混ぜなのはご勘弁を…。これらの言葉にピンと来た方は読む価値ありです。ザッポスというとソーシャルメディア先進企業で、積極的に使おうと努力しているイメージがありますが、むしろ事実は逆で、企業文化を実現しようとしたときたまたまソーシャルメディアが最良の解となっていただけ、と言えそうです。「ツールから入らない」というソーシャルメディアマーケティングの大原則に適っていますね。

トニー・シェイは読者へのメッセージとして印象深い言葉を述べています。

今、我々は新しい時代に突入しています。過去には比べものにならないくらいのすさまじいスピードで、一般の人々がお互いに情報を交換し、伝播できるテクノロジーのおかげで、好むと好まざるとに関わらず、企業の透明性は日に日に増してきています。今日、ザッポスよりもっと規模の大きい、そして歴史のある企業が、苦戦しているのはそういった理由からです。

彼の言うように、ソーシャルメディアは社会の透明性を高めています。近い将来、さらなる透明性が企業経営に求められるようになり、好むと好まざるとに関わらず、企業はソーシャルメディアに取り組まなければならなくなるでしょう。「対話」から逃げようとすれば顧客から見放されるのみです。

トニー・シェイの指摘からは、ソーシャルメディアを利用する上では「企業文化」がいかに大事であるかが良く汲み取れます。トップが従業員を信頼し、顧客との対話に権限を与え、「個」が存分に活躍できる、といったような企業文化なくして、ソーシャルメディアの利用はまずもって成功しません。そして企業文化の変革にはトップの度量が求められ、また相応の時間が掛かります。しかし、そのハードルを越えた企業だけが、ザッポスが享受しているような「顧客に囲い込まれる恩恵」を手にすることができるのです。

…うーん、まだまだ色々言いたいことがありますが、キリがないのでこの程度で。ソーシャルメディアを企業で利用している方は勿論、管理職や人事部門の方にも是非とも読んで貰いたい本です。働くということを大いに考えさせられました。

(書評)「プレゼンテーションzen」

書評 | Posted by IHayato
Jan 04 2010

少し古い本ですが、大変面白い本でした。


いかに退屈なプレゼンが多いか
、ということはビジネスマンなら誰しも実感していることかと思います。この本は嘆かわしいプレゼンの現状に一石を投じる名著。

多くのページを割いて語られているのはプレゼンテーションのデザインと作り方。納得できる素晴らしい内容です。

とはいえ、slideshareなどで良質なプレゼン資料を見たことがある方にとっては、そこまで目新しいものではないかも知れません。要は情熱を持って簡潔に資料を作りなさい、ということだけですから。ですが、おぼろげに掴んでいたテクニックを言語化してくれることは非常に有益です。今後もリファレンスとして使用することになるでしょう。

本書で特に印象的だったのは、スライドのデザインや作り方云々より、日本文化研究や実体験に裏打ちされた精神論の部分です。

「貢献、およびその場に集中すること」と題した一文では、あらゆるプレゼンテーションはパフォーマンスである、という指摘がなされています。
引用されているボストンフィルの指揮者、ザンダーの言葉は素晴らしい。

ここが勝負所である――今こそ正念場だ。
つまり、我々は貢献することを求められている。それが我々の任務である。
良いところを見せたり、次の職を得たりすることが重要なのではない。
何らかの貢献を果たすことが重要なのだ。

勿論指揮者の言葉ですから、これは音楽の演奏について語られているものです。が、貢献しようという精神は、良いプレゼンテーションを行なうためにも必須のものです。どんなプレゼンも、何らかの形で「貢献する」ために行なわれるものです。顧客のため、会社のため、観客のため。

ガー・レイノルズが指摘しているように、考えれば考えるほど、プレゼンは音楽演奏に似ています。自分の思いを伝えるためには、ある程度の芸術的なセンスや技術的なテクニックが必要。上手くなるには練習が必要。緊張するのは、経験不足と練習不足のため。没我状態になってしまえば緊張はしない。観客に貢献するために行なう。理論も重要だが、情熱はもっと重要。

僕は一応アマチュアのミュージシャンなので(打楽器を演奏します)音楽家の比喩にとても共感しましたが、別に音楽家に限らず、例えばアスリートにも同じことが言えそうです。実際に本書では柔道の心得を引用しながら、プレゼンテーションの秘訣も説いています。結局は必要とされるものはどんな場合でもあまり変わらないのかも知れません。

こうして振り返ると、いかに一般的なビジネスプレゼンが愚かしいものか。大人数を集め、部屋を真っ暗にして、無駄に電話会議までつないじゃって、読めもしない表をキャプションに従って黙々と読み上げ、質問の時間はごくわずか。肝心の質問にも担当者が答えられず。答えられても「検討します」程度。っていうか一番聞かなきゃいけない人たちが寝てるし…。といった惨状は「パフォーマンス」にはほど遠く、情熱や貢献といったエッセンスは消え去っています。

プレゼンテーションはパフォーマンスであるべきだ、というメッセージは、この先忘れないようにしたいものです。そして、一線を画したパフォーマーを志願する者には、本書は最高の指南書となるでしょう。良著です。

ちなみに著者のガー・レイノルズは禅アートの研究家でもあり、随所で鈴木大拙の言葉や、日本文化についての言及が見られます。外国の方が日本文化に精通していると、なんか嬉しいですよね。