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藻谷 浩介,NHK広島取材班「里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く」

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現在セール中の一冊。読み終えたので読書メモを残しておきます。


里山資本主義とは何か

・「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入りつづける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、あらかじめ用意しておこうという実践だ。

・山あいの自然豊かな農村に暮らす人。ちょっと散歩をすれば、たきぎの4、5本拾うのはそれほど難しいことではない。過疎地と呼ばれる島に住む人。天気さえ良ければ、ちょっと釣り糸を垂れれば、その日の夕食を飾るアジの一匹くらい、連れるかもしれない。そうした恵みを享受する暮らしを、年金に頼る暮らしの「サブシステム」として組み込んでみてはどうだろうか。

・岡山県真庭市。岡山市内から車で北へ向かうこと一時間半。標高1000メートル級の山々が連なる中国山地の山あいにある町だ。ここで日本でも、いや世界でも最先端のエネルギー革命が進んでいる。

・そんな中島さんが、1997年末、建築材だけはじり貧だと感じ、日本で先駆けて導入、完成した秘密兵器が、広大な敷地内の真ん中に鎮座する銀色の巨大な施設だ。高さは10メートルほど。どっしりとした円錐形のシルエット。てっぺんには絶えず、水蒸気が空へと登っている。これが今や銘建工業の経営に欠かすことができない、発電施設である。(中略)専門用語では「木質バイオマス発電」と呼ばれている。

・中島さんの工場では、使用する電気のほぼ100%をバイオマス発電によってまかなっている。(中略)電気代が1億円節約できた上に、売電による収入が5000万円。しめて、年間で1億5000万円のプラスとなっている。しかも、毎年4万トンも排出する木屑を産業廃棄物として処理すると、年間2億4000万円かかるという。これもゼロになるわけだから、全体として、4億円も得しているのだ。1997年末に感性したこの発電施設。建設には10億円かかった。

・真庭市の調査によると、全市で消費するエネルギーのうち実に11%を木のエネルギーでまかなっているという。

・このエコストーブ、名前は「ストーブ」だが単なる暖房ではなく、煮炊きなどの調理に使えば抜群の力を発揮する。木の枝が4〜5本もあれば、夫婦ふたり一日分のごはんが20分で炊けるのだ。

・なぜ人口1000万に満たない小さな国、オーストリアの経済がこれほどまでに安定しているのか?その秘密こそ、里山資本主義なのだ。

・ギュッシングでは、なんと、エネルギーの自給率72%を達成した。もちろん、人口4000という小さな町だから達成しやすかった数字ではあるが、オーストリアがいくら先進的とは言っても、国全体でみると木質バイオマスエネルギーの割合はまだ10%(日本はわずか0.3%)、世界の他を探してもこれほどの町はほとんど見当たらないからいかに驚異的な数字か分かるだろう。

・「ギュッシングではエネルギーの値段は自分たちでコントロールしています。だから、世界史上の需給に依存しなくてすみます。価格が相場に左右されることもありません」

・中島さんの次なる革命は、工場の片隅でひっそりと進められていた。製造ラインはまだないため、手作りで試作を繰り返しているという建築材。一見、板を重ねあわせただけの何の変哲もない集成材。ところが、よく見ると、通常の集成材は、板は繊維方向が平行になるよう張り合わせているのだが、こちらは板の繊維の方向が直角に交わるよう互い違いに重ねあわせられている。その名もCLT。クロス・ラミネイティッド・ティンバーの略で、直訳すると、「直角に張り合わせた板」だ。それがどうしたのか。実は、たったこれだけのことで、建築材料としての強度が飛躍的に高まるのだという。

・CLTはもともと、1990年代、ドイツの会社で考えだされたものだったらしい。しかし、その会社には製材部門がなかったため、その技術は1998年、オーストリア南部のカッチュ・アン・デア・ムアという、小さな村にある製材所が採用した。(中略)CLTで壁を作り、ビルにしたところ、鉄筋コンクリートに匹敵する強度を出せることがわかったのである。

・そこからオーストリア政府の動きは速かった。木造では二階建てまでしか建てられないとしていたオーストリアの法律が、2000年、改正されたのだ。今は9階建てまで、CLTで建設することが認められているという。

・以後、それまでは石造りが基本だったオーストリアの町並みが木造へとシフトしていく。CLT建築は、単に強度に優れるだけでなく、夏は暑く、冬挟む石造りや鉄筋コンクリートより快適な住環境を提供した。オーストリアの片田舎で生まれた技術は、ヨーロッパ各地に伝播。生産量はヨーロッパ全体で、7年間で20倍、50万立方メートルに増え、ヨーロッパにおける健在生産量400万立方メートルの8分の1を占めるまで成長した。ロンドンにはなんと、9階建てのCLTビルまで登場している。

・間違えてはいけない。生きるのに必要なのは水と食料と燃料だ。お金はそれを手に入れるための手段の一つに過ぎない。

・地元農家はこれまで、マネー資本主義の中では市場価値のない半端な農産物を捨て、地元福祉施設はこれまで、地域外の大産地から運ばれてきた食材を買って加工していた。全国レベルで見れば効率のいいシステムかもしれないが、地域レベルで見れば外へお金が出て行くだけの話だ。ところが捨てていた食材を地元で消費するようになれば、福祉施設が払う食費は安くなり、しかも払った代金は地元農家の収入となって地域に残る。農家の収入が増えるだけでなく、関係者にやる気も出るし、無駄も減る。地域内の人のつながりも強くなる。全国レベルで見ればマネー経済が縮小したという現象なのだが、地域レベルで見ればこれは、活性化以外の何ものでもない。

・里山資本主義がマネー資本主義に突きつけるアンチテーゼの第一は、「貨幣を介した等価交換」に対する、「貨幣換算できない物々交換」の復権だ。

・規模の利益の追求には重大な落とし穴がある。規模の拡大は、リスクの拡大でもあるということだ。システムが上手く回っている間はいいが、何か齟齬が生じると、はるか広域にわたって経済活動が打撃を受ける。

・そして里山資本主義がマネー資本主義に突きつけるアンチテーゼの第三は、リカードが発見した分業の原理への異議申し立てだろう。

・リカード的分業は、各自の守備範囲を明確に区分けすることができて、かつその守備範囲に重複がなく空白部分もできない、という条件が整った場合にはセオリーどおりに有効なのだ(中略)。そのため現実社会では、ヘタに分業を貫徹しようとすると、各人に繁閑の差が出たり、拾い漏れが出たりする。

・まず、「52%」。これは、発売から2年以内に消えるヒット商品の割合。なんと、世に新たに登場した商品の半分以上が発売から二年を待たずに消滅しているのだ。1990年代までは、たったの8%だったおいう。逆に言うと、9割以上の商品が発売後2年以上、市場に残りつづけていたのだ。

・(高知県では)農業や漁業、林業など一次産業が黒字でとっても健康的であるのに対し、電子部品を除く二次産品が軒並み赤字となっている。なかでも圧倒的な赤字となっているのが、石油や電気、ガスなどのエネルギー部門。そして意外なのが、飲食料品が赤字となっていることだ。

・「インフレになれば借金が目減りするので、政府にとっては都合がいい」という俗説があるが、これは大間違いだ。前期の通り、インフレになるときは国債金利も上昇している。発行済の国際の価値はどんどん減るが、他方で政府の税収は多くが利払いに消えることになり、通常の政府機能を果たそうと思えば、インフレ率を上回る高利で国際を新規発行するしかない。

・そのような不安とは、そろそろサヨナラしてはどうだろうか。中間総括に欠いた通り、里山資本主義こそ、お金が機能しなくなっても水と食料と燃料を手にしつづけるための、究極のバックアップシステムである。いや木質バイオマスエネルギーのように、分野によってはメインシステムと役割を交代することも可能かもしれない。なににせよ、複雑で巨大な一つの体系に依存すればするほど内心高まっていくシステム崩壊への不安を、癒すことができるのは、別体系として存在する保険だけであり、そして里山資本主義はマネー資本主義の世界における究極の保険なのだ。

うーん、こういう価値観好きです。この手の話は若手の論者から出てくることが多い印象ですが、著者の藻谷さんは1964年生まれ、49歳。こうしたポジティブな防衛の思想が、世代間を超えて広がっていることに気づかされますね。ちなみにこの本、うちの近所の書店で売れ筋トップとなっていました。


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