おすすめ本・セール情報

社交的で、音楽好き:「ウィリアムズ症候群」という障害

スポンサーリンク

「音楽嗜好症」より、三本目の記事。いやー、この本、本当に面白いです。

「ボレロ」を作曲したとき、ラヴェルは痴呆症だった? – ihayato.書店 | ihayato.書店
[動画あり] 「トゥレット症候群(チック)」を抱える天才ミュージシャンたち – ihayato.書店 | ihayato.書店


「ウィリアムズ症候群(Williams syndrome)」とは

本書は「脳の疾患と音楽」について、様々な事例を紹介しつつ論考を深めていく作品。第28章に掲載されていた「ウィリアムズ症候群」の話が、大変面白いのでご共有。

ウィリアムズ症候群(ウィリアムズしょうこうぐん)はまれな遺伝子疾患。症状には知能低下などの発達障害、心臓疾患などがあり、独特の顔つき(”エルフのような”(Elfin)顔つきと言われる)を示す。知能低下に比べて言語は比較的良好に発達することが知られており、知らない人にも陽気に多弁に話しかける。

もっとも印象的なのはその顔つき。オリヴァー・サックスは「大きな口、上を向いた鼻、小さいあご、そして丸くて好奇心に輝く目をしている」と描写しています。

スクリーンショット 2013 09 09 17 18 22
Williams Syndrome Associationより)

さらに性格も特徴的で、「それぞれ個性はあるが、並外れて饒舌で、興奮気味で、話好きで、他人に手を差し伸べ、知らない人を怖がらず、そして何よりも音楽が大好きである」とのこと。ウィリアムズ症候群の患者たちが集まるキャンプに参加した著者は「単一の部族に属しているように見えた」とも感想を述べています。


ウィリアムズ症候群は知的な障害を伴いますが、必ずしもそれは、一般的なイメージの「障害」に当てはまる様相ではないことがあります。

ウィリアムズ症児の親はそれぞれ同じように、自分の子どもが示す知力と知的障害の妙な取り合わせに衝撃を受け、彼らがふつうの意味の「精神遅滞」ではないために、適切な環境や学校を見つけるのはとても難しいと感じる。

彼らは「言語的な能力の高さ」も特徴として現れるそうです。

ウィリアムズ症候群の子どもが、IQが低いにもかかわらず、豊富な語彙と変わった単語を使うことに、彼女は強い関心を抱いた。「犬歯」、「中絶する」、「癪に障る」、「立ち退く」、「厳粛」といった単語だ。できるだけたくさん動物の名前を挙げてと言われて、ある子どもの最初の答えは「イモリ、剣歯トラ、アイベックス、レイヨウ」だった。そしてその子どもたちは、豊かで妙な語彙だけでなくコミュニケーション能力も、とくにIQが同じくらいのダウン症児とくらべて、高いものを身につけているように思われた。


本書では、特に音楽の才能について詳しく言及されています。「世界でいちばん不思議な歌」の著書があるグロリア・レンホフ(Gloria Lenhoff)氏は、30以上の言語でオペラのアリアを歌うことができるという才能の持ち主。

グロリア氏はその特異な才能が注目され、1988年にドキュメンタリー番組が放映されたのですが、なんと放映時点では、本人も周囲の人も、彼女がウィリアムズ症候群だと気づいていなかったそうです。

ドキュメンタリーを見た視聴者から、「なぜグロリアがウィリアムズ症候群だと話さなかったのですか?」と質問され、両親は初めてその存在を知ったとのこと。そのときグロリアは33歳。

娘のグロリアは豊かなソプラノの声をもっていて、聞いた曲をほぼ何でもフルサイズのアコーディオンで弾くことができます。レパートリーは約2000曲あります。……しかし、ウィリアムズ症候群患者のほとんどがそうですが、5足す3の計算ができませんし、自立してやっていくこともできません。

もちろんすべてのウィリアムズ症候群患者がグロリアのような才能を持っているわけではありませんが、研究によれば、ウィリアムズ症候群患者の音楽処理方法は、脳の神経構造レベルで健常者と違いがあるそうです。

健常な被験者ではほとんど活性化しない小脳、脳幹、扁桃体を含め、はるかに広範の神経構造を使って、音楽を近くし、音楽に反応していたのだ。このかなり広範にわたる脳の活性化、とくに扁桃体の活性化は、ほとんど抑えようがない音楽への関心、そしてときに圧倒されるほどの情緒反応と、整合するように思われた。


ウィリアムズ症候群についてはどの遺伝子が障害の原因になっているかはわかっているものの、なぜその遺伝子の欠損が、特殊な才能を生み出すのかは不明だそうです。人体の不思議ですね…。

ちなみにウィリアムズ症候群は、約1〜2万人に1人の割合で発症するそうです。日本の新生児数は約100万人ですから、年間50〜100人程度のウィリアムズ症児が生まれていると考えられます。まだまだ世界的に知名度が高いとはいえないようなので、みなさんの身近な範囲にも「気づいていないけれど、実はウィリアムズ症候群だった」という人もいるかもしれません。

関連サイト:
エルフィン関西-日本ウィリアムズ症候群の会-
ウィリアムズ ノート(Williams Syndrome)
極端にやさしい遺伝子を持つ、ウイリアムス症候群の子どもと大人 : カラパイア


その他、脳と音楽の不思議な関係について多数の事例が紹介されている名著です。音楽が好きな方は一度読んでおくと衝撃を受けるはず。


スポンサーリンク