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加藤伊都子「私は私。母は母。」—母親が嫌い、と言う勇気

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現在Kindleでセール中の書籍。母との関係に悩む女性に向けて書かれた一冊です。重めですが、救われる人が多そうな内容。収録されている実際のエピソードは、純粋に読み物としても面白いです。読書メモをご共有。


母親が嫌い、と言う勇気

・娘の母娘葛藤の原因は母の側にある。母の生き方の問題、母の娘への関わり方の問題であることが多い。しかし、権力者である母はそのことを自覚しない。だから、苦しさを感じた娘の側からアクションを起こすしかない。それは母に変容を迫ることではない。母に変容を迫ることは、母娘葛藤のさらなる深みに、二人ではまっていくことになりかねない。娘自身が母との関係の持ちようを変えていくしかないのである。

・戦いの火ぶたを切ったなら簡単にもとに戻ってはいけない。勝利をおさめるまで戦いつづけなければならないのだが、そのとき最も手ごわい敵となるのが娘自身が感じる罪悪感である。

・秋子さんの母親みどりさんは、常に「お母さんが○○しておいたからね」ということばを使っていた。たとえば、小中学校でクラス替えがあるたびに「お母さんが、あなたと遊んでくれるように○○ちゃんに頼んでおいたからね」と言い、担任が変わるたびに「お母さんが、ちゃんと先生にご挨拶しておいたからね」と言う。

・秋子さんを縛っていたものに、周囲の人の存在がある。まずは「夫」である。怒りにかられた秋子さんが「お母さんはおかしいわ」と言うと、夫は「そんな言わんと、相手したったらええやないか。ひとりぼっちで寂しいんやから」と言う。秋子さんの苦しさを夫に理解してもらうことはできなかった。

・ここまでに六人の娘たちを紹介してきたが、どの娘も無理と思いながらも母に変わってほしいと願っている。その願いの共通点は、母親に自分を認めてほしいという承認欲求である。

・他者を思いやれること、他者のニーズを読みとれること、他者のニーズを満たすために行動できることが、女性として好ましい資質とされ、こうしたトレーニングが行われる。拒否すると「わがまま」「自分勝手」「優しくない」という非難が返ってくる。この非難もまたトレーニングの一環である。

・女性としてあるいは人間としての成長をとめた哲子さんだが、哲子さんのように、生きがいであったものを途中で手放す女性は少なくない。演劇やスポーツなど、生きがいとしていたものを断念する男性もいるが、それらの多くは自信の限界の自覚であったり、夫や父、跡継ぎとしての責任からであり、ケア役割を担うためではない。当然ながら、多くが次の職業生活に入っていく。

・哲子さんのようにケア役割のために自分の夢を断念した女性の中には、過去そのものを捨てたような女性がいる。

女性が大人になることを歓迎しない社会、かわいい女性に価値がある社会では、女性たちは無意識のうちに成長をとめる。恵子さんや哲子さんの例とは異なるが、自分が成長することを喜ばない存在、あるいは成長することを阻む存在があるときにも女性たちは自分の成長をとめる。成長を阻む存在は、夫、実母、義母などさまざまである。

・母の不幸に最も大きく関わっているのは、母自身の意思である。母を不幸や孤独の中に置き去りにしてはいないかと罪悪感を感じながら暮らす娘たちがいるが、母を不幸の中に置き去りにしているのは母自身である。多喜子さんのように「あなたのせいだ」と母から不足・不満を言い立てられ罵られようとも、母の不幸の責任は娘にはない。

・実際に子育て講座などで、お母さんたちに「母親がしなければならないこと」「母親の役割」をあげてもらうと、この十、二十年であげられるものがどんどん増えている。

・母親にほめられたことがないという女性は多いが、これはこの社会に娘を適応させるためのジェンダー教育の一つである。ほめられていい気になり、自分が主人公であるかのような勘違いを娘がしないように、母は娘をしつける。

・娘をジェンダー格差社会に適応させようとする母親の行為が、娘の自尊心を傷つけ、自分らしく生きたいと願う娘の足を引っ張る。これが、母娘葛藤の本質である。

・自分が親であることをアピールする以外に目的のない反応言語は、他者の強烈な、不快感の表明をおしてでも表現され続けられるほどの意味も力もない。

・多くの母親が「自分の育て方が悪かった」ということばを口にする。このことばは、一見自分を否定しているように見えるが、否定しているのは自分ではなく娘である。

母娘関係というのは、日本社会的な人間関係の縮図なんだなぁ、とか思ってしまいました。

特に印象的なのは「娘をジェンダー格差社会に適応させようとする母親の行為が、娘の自尊心を傷つけ、自分らしく生きたいと願う娘の足を引っ張る」という指摘。男女問わず、出る杭が打たれる社会においては、多かれ少なかれ足の引っ張り合いが起きてしまうのでしょう…。

母親との関係に悩んでいる方(男女問わず)、子育て中の方はぜひ読んでおくとよいでしょう。有意義な一冊。


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