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いくつ知ってる?抑えておきたい9つの「価格戦略」(「スマート・プライシング」より)

「スマートプライシング」、これ隠れた名著ですねー。メモがてらこの本で紹介されている価格戦略をまとめてみます。


1. ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ方式

「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ」、つまり払いたい額だけ購入者が払う、という価格戦略です。人気バンド、レディオヘッドのアルバム「In Rainbows(デジタル配信版)」はこの方式を導入し、60%が無料でダウンロードし、40%が平均2.26ドルの代金を支払いました。コムスコアの調査によれば、この配信方法は、通常の販売方法よりも多額の利益をもたらしたとみられるようです。

他の事例では、ユタ州ソルトレークシティの「ワン・ワールド・カフェ」というレストランも紹介されています。

TIME誌によれば、「ワン・ワールド」で毎日食事をする150人から200人の顧客のなかには、弁護士やCEOもいれば、学生や高齢者もいる。中流家庭の主婦もいれば、つきに見放された人々もいる」。顧客はお金を払わなくてもよいのだが、ワン・ワールド・カフェはそれでも儲かっている。この店は2005年から黒字経営を続けており、今年の売上高は35万ドル利益率は5%を予想していると、2007年にウォールストリート・ジャーナルが報じた。

この販売方式は、いわゆる「メニューコスト(価格を決定・調整・変更するコスト)」を排除できること、プロモーション効果があること、(理論上は)顧客満足度を向上させられることなどがメリットとして挙げられます。


2. フリーミアム

このブログをお読みの方には特段の解説はいらないと思いますが、一応ご紹介。

フリーミアム(Freemium)とは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金する仕組みのビジネスモデルである。無料サービスや無料製品の提供コストが非常に小さい、あるいは無視できるため、Webサービスや、ソフトウェア、コンテンツのような無形のデジタル提供物との親和性が非常に高い

フリーミアム – Wikipedia

こうして無償で情報を公開し、書籍や講演などで収益化している僕の活動なんかも、ある意味フリーミアム的です。


3. 価格戦争

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photo credit: tantek via photopin cc

競合他社に比べて、ドラスティックに価格を下げ、戦争を起こすという戦略。「スマートプライシング」のなかでは、中国のテレビメーカー「チャンホン」の事例が紹介されています。

1996年3月26日、チャンホンは第一撃を放った。自社の17インチから29インチのすべてのカラーテレビを8〜18%値下げすると発表し、1000元から850元の価格引き下げの口火を切ったのだ。
この価格戦争は、ほぼチャンホンの予想通りに進展した。すべての国内メーカー、とりわけ小規模メーカーは、チャンホンの価格引き下げに衝撃を受け、激怒した。だが、それに抵抗するのはためらった。
(中略)価格戦争を始めて2〜3ヶ月で、チャンホンの総合的な市場シェアは16.68パーセントから31.64%に拡大した。とくに25インチ・テレビの市場では飛躍的に伸びて20.76%から45.25%になり、29インチの市場でも14.37%から17.15%に拡大した。

他には同じく中国の電子レンジメーカー「ギャランツ」の価格戦争事例も紹介されています。お察しのとおり価格戦争は両刃の剣ですが、「適切な状況下で賢明、かつ巧みに実行された場合、価格戦争は強力で効果的なマーケティング戦略になりうる」と本書は指摘しています。


4. 小額戦略

利益をあげるためには「価格を上げて・販売数を増やす」ことを普通は考えますが、「スマートプライシング」では「価格を下げて・販売数を増やす」という価格戦略が紹介されています。

この分野で有名なのは、ムハマド・ユヌス氏がはじめたマイクロファイナンスです。低所得者向けの金融商品で、小規模の資金を大量に貸し出すことでビジネスを展開しています。

今日、ユヌスのグラミン銀行をはじめとする何千ものマイクロファイナンス機関は、少なくとも顧客数の点では成長を続ける巨大産業になっている。一度に数ドル融資することで、今では年間1億5,000万人以上の顧客に到達しているのである。うち1億人が、一日1.25ドル未満で暮らしている最貧層の人々だ。

また、身近なところでは「一日あたりの金額」にいいかえる戦略も紹介されています。

1980年代に雑誌社が定期購読料金を、年間いくらから一冊あたりいくらに言い換え始めたとき、これらの広告の効果は10〜40%上昇したのである。

それはなぜか。一日あたり数セントという価格設定は、われわれがその価格をコーヒー一杯や宝くじ一枚を買うような、少額で無理なく払える小遣いの一部と思わせるからだと、ある学者は考えている。

これはすぐにでも使えそうですね。僕も有料コミュニティでもはじめるときは「1日あたり30円です」とか書いておこうと思います。


5. 自動値下げ方式

こんなのあるのか!と驚いた価格戦略。

ニューヨークに本社を置く衣料品小売企業、シムズは、動きの悪い商品を値引きし、同時に流行プレミアムもつかみとる手法を編み出している。

(中略)シムズでは、すべての婦人服の値札に、顧客が購買決定を下す助けになるいくつかの情報が記載されている。その商品の全米小売価格、シムズ価格(はじめて売り場に置かれた日に付けられた価格)、そして以後10日間隔で付け替えられる3つの価格(いずれも前の価格より安くなる)である。

あらかじめ明示された日に自動的に値下げされるので、特定の衣服に関心のある顧客は、それがいつ値下げされるか、正確に分かる。

こんなの機能するのか?と訝しく思ってしまいますが、「値下げ時期の明示は希少性の感覚を高め、むしろ通常より大きな心理的プレッシャーを顧客に与える」「流行重視の客にも、お買い得感重視の顧客にも対応できる」「買い物を一部の人にとってスリルと興奮に満ちた経験にする」「リピート来店を増やす」「買い手の後悔を減らす」と、かなり合理的な戦略だそうです。

が、この話には続きがあり、本書の出版後の2011年にこのシムズは破産法適用を申請し、事業を清算しています。この価格戦略をどう評価するかは、なかなか難しいようです。

他の事例ではこの価格戦略を導入したホテルなどが紹介されています。こちらのホテルはこの価格戦略によって、大幅に利益を増やしたとか。


6. 購入価格指定方式

先日Kayakを18億ドルで買収したPricelineの事例。

プライスラインは航空券を固定価格で販売するのではなく、消費者に「あなたの価格を指定してください」と、つまり自分の求める航空券に対し、自分の払いたい金額を入札するよう促していたのである。

システムは単純だった。消費者はまずフライトを調べる。日にちと目的地は指定できるが時刻やルートは指定できない。それから入札する。しばらくすると、電子メールで返事がくる。入札が受入れられた場合は、その消費者のクレジットカードにすでに課金されている。受入れられなかった場合は、ゲームオーバーだ。

「購入価格指定方式」は書籍では第6章に当たるのですが、個人的にはここが一番面白かったです。ちょっと引用すると長くなるので、詳しくはぜひ書籍にてご覧下さい。


7. 定期購入(サブスクリプション・アンド・セーブ)

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日本でも流行っている定期購入。「スマートプライシング」のなかではAmazonの定期便が紹介されています。

Amazonは消費者が買う食品・日用雑貨の大部分が毎週、もしくは毎月買うものばかりであることに気付き、サブスクリプション方式によって顧客の食料庫の大きな割合を掴んだ。

愚かな食料品店がやるように、個々の商品の個々の販売からできるだけ多くのお金を搾り取ろうとするのではなく、Amazonは顧客との関係の広がりや深さや期間を拡大するためにサブスクリプション方式を使っている。

本章では、定期購入以外にも「マーケティング収益性」を高めるための価格戦略の事例が複数紹介されています。顧客との関係性について考え直すという、重要な示唆を与えてくれます。


8. スノッブ・プレミアム

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photo credit: Clemson via photopin cc

カタカナでピンときませんが、ようするにアメックスのブラックカードのような「見栄っぱりのための追加料金」です。

センチュリオン(ブラックカード)は超富裕層向けで、年会費は2500ドル、入会金は5000ドルだ。少数の選ばれた人しか取得できず、財布にブラックカードを入れている人は1万7000人しかいない。(中略)最大の特典はチタン製のカードをカウンターに置くときに感じる、ある種の特別意識だと言う。ある会員はCNNドットコムにこう語っている。「ブラックカードが与えてくれるスター扱いは気分のいいものだよ」。

その他、「安いワインの価格をあえて高く偽ることで、実際に飲んだ人が美味しく感じる」という実験結果、めったに割引をしないApple・BMVや、逆にあえて価格を下げることで人気を演出しているロック・コンサートなど、「スノッブ」という切り口の価格戦略の実例が紹介されています。あえて低い価格を設定し、人気を演出するというのは使えそうですね。


9. 成果に基づく価格設定

本書で紹介されている最後の価格戦略がこちら。最初に紹介されているのは、薬に効果がなかったら代金を返還するというJ&Jの薬剤販売の事例。

製薬会社にとっては「成果に応じて支払う」方式はリスクが高いように感じられるかもしれないが、この方式は実際に3つの目的を達成する。
第一に、支払い者の「ノー」を「試してみてもいいかもしれない」に変える。
第二に、従来の価格設定法では効果のない医薬品にも代金を支払わねばならないという、ワナメーカー型の反発を乗り超えることができる。
第三に、価格が正当か否かという本質的に守りの論争から、その医薬品がどれだけの価値を生み出したかという、より前向きな—そして勝ち目のある—論争に議論の焦点を移すことができる。

この価格戦略について「『成果に応じて支払う』方式が特異なのは、それが取引をパートナーシップに変えるからだ」というコメントもなるほど!という感じ。


というわけで、様々な価格戦略を豊富な事例とともに紹介する「スマートプライシング」。これはマジで名著ですね。起業家、マーケターの方は必読といってよいでしょう。いやー、もっとはやく読んでおけばよかった…。


ちなみにこの本は田中伶さんの有料サロンで紹介されていた一冊。初月無料な上、一日あたり約33円で入会できるので、とってもおすすめです。と、早速スマートプライシングを使ってみる。


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