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(必読本)クリス・アンダーソン「MAKERS [メイカーズ] 21世紀の産業革命が始まる」

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本誌でも追いかけまくっている3Dプリンタの動向について述べた「MAKERS」。「フリー」のクリス・アンダーソンの新作です。NHK出版の方がなんと献本をくださったので、発売前に一足早く読んでみました。これ、未来社会について考えたい方は必読です。


21世紀の産業革命が始まる

・僕らはみんな作り手(メイカーズ)だ。人間は生まれながらにメイカーズで、もの作りへの愛情は、多くの人々の趣味や情熱の中に生きている。それは、工房やガレージやおたくの部屋の中だけのことではない。料理が大好きな人はキッチン「メイカー」で、オーブンがその工房だ。植物が好きな人は、ガーデン「メイカー」だ。編み物、裁縫、スクラップブック作り、ビーズ編み、クロスステッチ—どれも、もの作り(メイキング)だ。

いま、世界中におよそ1000カ所の「工作スペース」—みんなで共有する工作施設—が存在し、驚くべき速さでその数は増えている。上海だけでも、100カ所の施設がオープンしている。(中略)このムーブメントを認めたオバマ政権は、2012年のはじめ、今後四年間で1000カ所の学校に、3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を完備した「工作室」を開くプログラムを立ち上げた。

・つまり、メイカームーブメントには、三つの大きな特徴がある。(中略)①デスクトップのデジタル工作機械を使って、モノをデザインし、試作すること(デジタルDIY) ②それらのデザインをオンラインのコミュニティで当たり前に共有し、仲間と協力すること ③デザインファイルが標準化されたこと。おかげでだれでも自分のデザインを製造業者に送り、欲しい数だけ作ってもらうことができる。また自宅でも、家庭用のツールで手軽に製造できる。これが、発案から企業への道のりを劇的に縮めた。まさに、ソフトウェア、情報、コンテンツの分野でウェブが果たしたのと同じことがここで起きている。

・第一次産業革命は、天然資源と交通インフラの備わったマンチェスターのような都市でしか起こりえなかったが、新しいメイカームーブメントはどこででも起きる可能性がある。(中略)「メイカー」たちは、さらにさまざまな場所に分散していて、自宅からデザインのファイルをアップロードすることもできる。現代のもの作りに「場所」はますます無関係になりつつある—場所よりも、アイデアが重要なのだ。

いま僕らが目にしているのは、新しい時代の家内工業への回帰だ。新たなテクノロジーは、人々にふたたび生産手段という力を与え、草の根からの企業と分散されたイノベーションを可能にした。

・そしていままさに、世界中の工場が開かれつつある。デジタルなデザインとクレジットカードさえあれば、だれにでもウェブベースのオンデマンド製造サービスが提供されはじめたのだ。それは、まったく新しいクリエーターの層がもの作りを行うことを可能にした。工場を建てたり、会社を作ったりしなくても、試作品を製品化できるようになったのだ。

・デジタルなファイルを誰でも「編集(リミックス)」できることが、コミュニティを動かす原動力になる。それはコミュニティへの招待状なのだ。なにかをゼロから発明しなくてもいいし、独自のアイデアがなくてもかまわない。コミュニティに参加して、だれかのアイデアやデザインを全員で改良すればいいのだ。

・昔は「ラップトップを持った人が三人集まれば、ウェブのスタートアップができる」と言われた。いまではそれがハードウェア企業にも当てはまる。MIT教授のエリック・フォン・ヒッペルが言うように「ハードウェアはますますソフトウェアのようになりつつある」

・ゴムのアヒルを一個ずつ3D出力する場合と、一分もかからずに一ダース以上まとめて射出成形する場合を比べると、数百個作るなら、機会の償却費用を入れても射出成形の方が安く上がる。小ロットの生産なら、いまではデジタル生産に分がある。(中略)ちょっと考えてみてほしい。数百万個単位ではなく、数百個単位で作った方がいいものがどれほどあるかを。

・デジタル生産は、これまでのもの作りの経済をひっくり返すものだ。(中略)
①「多様性はフリーになる」 ひとつひとつ違うものを作っても、全部同じものを作るのとコストは変わらない
②「複雑さはフリーになる」 手間のかかる小さな部品がたくさんついた、精巧な細工が必要な品物も、3Dプリンタなら、平らなプラスチックの塊と同じコストで作ることができる。
③「柔軟性はフリーになる」 生産が始まったあとで商品に変更を加えようと思ったら、指示コードを変えるだけでいい。同じ機械でそれができる。

・ローカルモーターズは、軽量で安全性の高い車台を開発し、年間2000台の生産で利益をあげる。オープンソースのコミュニティが生み出すデザインが、この車台の上に搭載される。コミュニティは世界中から集まる優秀でやる気のあるデザイナーたちに力を与え、革新的で洗練されたデザインを作り出す。(中略)ローカルモーターズの施設は、従来の自動車工場の100分の1の資本で20人のスタッフにより運営される。そこで自動車は一台一台組み立てられ、品質検査され、その場所で販売される。

・僕はなにも、中国やその他の低コスト諸国への生産委託がなくなるだろうと言っているのではない。広東省に存在する比較的安い労働力と集中したサプライヤー群の組み合わせは、多くの産業にとって非常に魅力的だ。(中略)だが、それが唯一の選択肢でないことも明らかだ。一定以上の数量を生産する場合には、中国の巨大工場が今後も圧倒的に有利だろう。しかし、規模によっては地元に近いところで生産し、遅延を最小限にとどめながら柔軟性を最大限にする方がいい場合もある。

・クラウドファンディングはメイカームーブメントのためにベンチャーキャピタルだ。製造の手段が民主化されたことで新たな生産者の層が生まれたように、新しい資金調達の手段もまた、新たな投資家の層を生み出した。彼らは企業への投資家ではなく、製品への投資家であり、もっと正確いうならば、「製品アイデア」への投資家である。

・「一万個単位の市場」とは、オンラインで販売する製品やサービスが成功できる規模のニッチな市場という意味だ。一万個単位なら十分に商売が成り立つ市場規模だが、同時に規模が大きすぎないので専門性を維持しながら激しい競争を回避できる。それは大量生産の手が届かない場所であり、市場の影の部分—モノのロングテール—なのだ。

その他、様々な「メイカー企業」たちのエピソードが紹介されています。一世を風靡しているSquareの試作品は、ファウンダーが工場で手作りしたものだったという話は面白かったです。こういう形のハードウェアスタートアップは増えていくのでしょう。


デジタルファブリケーション、パーソナルファブリケーション、色々な呼び方がありますが、こうした「家内制機械工業」の未来は非常にワクワクさせられます。簡単なモノはもちろん、「薬」や「内蔵」、「家」といった突飛もないモノたちも印刷が試みられています。詳しくは当ブログの3Dプリンタカテゴリをぜひ。日本有数の情報がまとまっていると自負しております。

「メイカーズ」は「フリー」同様、歴史的な一冊となる確信があります。流石NHK出版。クリス・アンダーソン本らしく、かなりボリューミーですが、まぁ騙されたと思って読んでおくべきです。この分野の知識がない状態だと、そうとう衝撃を受けると思います。


類書では田中浩也さんの「FabLife」が出版されています。こちらも名著なので、未読の方はセットでの購入がおすすめ。日本の話なのでメイカーズより読みやすいかも。「デジタルファブリケーション」の動向がまとまっています。



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