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(本)為末大「走る哲学」

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アスリートを引退して早速ご活躍中の、為末さんのツイートをまとめた一冊。ツイートまとめというレベルではない、素晴らしい警句集になっています。気に入ったものをメモしたのでご共有。


トップアスリートの世界の見え方

・長く競技をやってきて振り返ると、強烈に何かを信じて突っ走ったじきと、それが急にばからしく思えてふっと方向転換する時期の二つがある。昔はそれがぶれてるようで嫌だったけど、結局、揺らぎが小さかったり、もしくはこうあるべきと、どこかに居着こうとした選手は伸び留まっていた。

・25年間走り続けてきたけれど、走りたくなかった時期もあるし、強烈にモチベーションが湧いた時期もある。人間は社会的存在だから環境で揺らぐ生き物。揺らがないで一心に努力し続ける姿をみんなはアスリートに見るけれど、本当は揺らぐ自分を責めたりせずに上手に揺らしてあげているんだと思う。

・やればできた、の段階が終わり、やってもできないかもしれない、の領域に入ると、自分観察をせざるを得なくなった。陸上の練習は単純で辛い。しかも頑張っても将来が保証されていない。つまり”頑張ってる今”が楽しくないと続けられない。それは自分が本当に欲しているものを知らないとわからない。

・再現性を持たせようとする段階がいわば積み重ねで、いい感じを探るという段階が遊びという事もできる。反復練習しかしない選手が伸び止まるのは、再現性が高くても、次のレベルにはみ出る手法をもたいあにから。遊ばないと予想外のいい感じが出なくて、それが出ないと人はそこに留まる。

・僕は陸上を続けるという事意外は結構やめまくっている。いつもそう言うのだけれど、どうしてもメディアに出るときは”苦しいときを耐え抜いたからこそ出た結果”になってしまう。ハードルへの転向もハードルに適性を見いだしたからだと今なら言えるけど、当時は100mに限界を感じての撤退だった。

・日本社会の苦しさは、やめる事がそもそも前提に置かれていない社会の仕組みにあると思う。みんな同じだから、一人やめるのは怖い。逃げるな耐えろと教育されて、いざ社会に出てからさあ自己責任でどうぞと言われても無理だと思う。耐え方は習ってもやめ方を習わない。

・スランプの時、自信がない時、人は後から考えると驚くほど近視眼的になっている。人の言葉に左右されたり、ふらっと何かを妄信してしまうのもこの時期。辛い時期に、こうだと答えらしきものを言い切ってくれるものに人は弱い。でも直接的に人が答えをくれる事はない。

・結果で判断する人は、過去の経歴で相手を判断する。そして何を言ったかより誰が言ったかを重視する。(中略)結果が出たものにみんな群がる。みんなが群がっているものが本物と思われる。大事なのは集団から離れて眺める事。まだ誰も気付いていない本物を見つければ、そこから得られる恩恵は大きい。

・究極のところ、正義を強要する人は依存症といえる。一人で正義を遂行する事ができない。人と共有しないと不安になる。正義を振りかざす人はたいてい孤独に弱い。

・世の中で起きている話題で僕が一番好きなのは、法では整備されてないようなところの話。法と倫理の間でこれどうなのよというラインは、人ごとに見方も違うし、考えていくと自分がどんな性質があるかわかるし、僕はこういうのを見ると興奮して飛び込む癖がある。

・弱さからくる優しさもある。相手を傷つけたくないのは相手のためか自分が嫌われたくないためか。相手を気遣うふりをして自分の善をみせつけようとしてないか。いざとなれば人を傷つけみんなに嫌われる勇気はあるか。

・辛い練習をすれば安心と満足感は約束される。楽な練習はこれでいいのかと不安になる。勇気があるから辛い練習をするのではなくて、臆病だから辛い練習をしている場合もある。

・他人に嫌われる事は罪でも何でもない。”真面目なアスリート”はここに罪の意識を感じ、自分らしさを捨ててしまう。少数派にすぎない批判的な意見を過剰に取り入れ、どこから見ても問題のない、丸い特徴のない存在になっていく。

・最終的に選手を高みに押し上げるのは「問い」のセンス。「答え」のセンスではない。答えが出ない問いを持ち続ける強さを内側に持った者だけが上り続けられる。


というわけで、びしばし刺さる言葉の数々です。ここに引用したのはほんの一部。どれも素晴らしいです。

個人的に変なところで激しく共感したのが「世の中で起きている話題で僕が一番好きなのは、法では整備されてないようなところの話」という点。僕もこのテーマ大好きです。自他の価値観が透けて見えて楽しいですし、こういう議論が今の日本では必要だとも思います。


読んでいて、プロゲーマーの梅原氏が書いたこちらの一冊を彷彿とさせました。道を究めようと努力した人たちからは、ジャンルを問わず多くのことを学ぶことができますね。

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