こんにちは!サトモト(@Hyakujuoh)です。
先日、高知県にある素敵な畳屋さんを取材させていただきました。
ざっくばらんに、いろんなことを話してくださった代表の池上さん。楽しい取材になりました。
—-
西洋文化が日本に浸透しフローリング主体のマンションが増えている。それに反比例するように和室は減少し、畳産業も厳しい状況になりつつある。
畳の原材料「い草」の作付面積(福岡県及び熊本県)をみてみると、平成17年度は 1,700ha であったのに対し、平成26年度は 739ha まで減少。
同様に畳の表面部分である「畳表」の生産量は 782万枚 から 367 万枚にまで減少している。
若者の畳離れ、い草嫌い。そんな言葉も耳にしたことがある。けれども、本当にこのまま畳産業が衰退していってもよいのだろうか。もう一度、畳の魅力に目を向けてみたいと思う。
高知県いの町にある「畳いけうえ」。代表の池上 仁さんは「昔ながらの畳文化」を復活させるべく取り組まれており、池上さんのこれまでとこれから、畳の魅力をうかがった。
おしゃれな畳、インテリア、和の生活スタイルのご提案から製作まで
畳いけうえ
代表:池上 仁 1979年生まれ 36歳
高知県吾川郡いの町池ノ内56
平成14年設立
事業概要:畳の張替、新調
オリジナル新商品 「土佐柄 畳縁」とは?
「畳いけうえ」では畳の張替、新調のみならずオリジナル新商品も扱っている。その代表的な商品が「土佐柄 畳縁」(とさがら たたみべり)。
畳といえば「い草」を使った表面の「畳表」に目が行きがちだが、それだけではない。
畳の四方を囲む「畳縁」もまた見どころのひとつで、高知の自然を取り入れた「土佐柄 畳縁」はメディアで取り上げられるほど注目されている。
土佐柄畳縁:鰹
言わずと知れた高知の県魚。漢字では「松魚」とも書き、目出度い魚の代表格のひとつです。高知では昔から重要な水産資源として生活ときっても切れない魚です。
土佐柄畳縁:やまもも
やまももは高知の県花です。毎年3〜4月頃に花弁のない小さな花を咲かせます。梅雨時になると暗紅色で甘酸っぱい実がなります。
土佐柄畳縁:土佐金
天然記念物にも指定されている土佐金。名称の通り土佐(高知)地域を中心に飼育されています。リュウキンとは尾平が異なり、反転した尾ひれが特徴のとても美しい金魚です。
土佐柄畳縁:四方竹
四方竹の旬は、10月中旬ころからわずか1ヶ月程度です。秋しか味わえない希少な山の幸は高知ではお馴染みのものです。切り口が四角い形に近いことから、この名がついています。
「土佐柄 畳縁」のルーツとなっているのが、畳いけうえ最初のオリジナル商品「土佐テボン」。
土佐柄畳縁を使ったバッグ
土佐柄畳縁を使ったペンケース
もともと、この道に進みたかったわけではない
「この道に進んだきっかけについて、これまでは『今まで御縁があって・・・』と適当に答えていました(笑)。」
取材中、池上さんは本当のことを話してくださった。もともとは20歳の頃に会社に就職。けれども薄給でボーナスもあるかないか。
経済的にも厳しい中で両親が他界。今後の道を考えているときに、思い出すことがあった。
実は小学生の頃から親戚のおじさんが畳屋をしており、「うちに来い!」と言われていたのだ。ずっと嫌だと断り続けていたが、将来を危惧し、この道に入ることを決めた。
師匠からの教えは「現場で揉まれろ」
こうして畳の修行がはじまった。なんと修行期間は1年だという。「そんなに短くていいんですか?」という問いかけに対し、師匠の指導方針を教えてくれた。
それは「早く世に揉まれろ」ということ。
「機械も壊れるし。当時は、スピードと安さと体力で乗り切ったようなものです。30歳を越えてからはしんどかったですね。」
本来4年間は修行が必要な業界だが、極めて短い期間で独立。店を出してからも師匠は頻繁に様子を見にきてくれたという。
当初は技術もなく仕事に対して恥らいもあったそうだが、事業開始から5年、努力も実り軌道に乗りはじめた。子供が生まれたことも原動力になった。
口下手だからこそ、できることをやる
「営業もあまり得意ではないですし、広告を打ってその中で自分を売っていこうと決めました。」
畳業界にも価格競争はあり、県外勢から押されている状況。アパート関係の案件はほとんど外に流れている。
営業も少し苦手だということで、広告の中で自分という人間を見てもらう。まずはお客様に興味を持ってもらうことが最優先だ。
こんにちは。「畳いけうえ」です。
私はたくさんお話するのが苦手です。
なので、紙面を借りてお話しさせてください。
畳とひとくちで言ってしまうと、”和室の敷物”と考えてしまうと思います。単純に言えばそうなんですが、果たしてそれだけでしょうか?(以下省略)
未来の子供たちに畳を通じて伝えていきたいこと
「僕らが子供の頃、おやじと畳の上で相撲を取った景色っていいなと思うんです。僕も子供と相撲を取るし、そうやって体と体をぶつける家族同士のコミュニケーションって大事なんです。」
人との繋がり、コミュニケーションは重要。だが、某テレビ番組で謳われる「絆」などという “明らさますぎる表現” がちょっと苦手な池上さん。
地味だけどジワジワと心に染みる伝え方をしたいという。
畳の上だからこそできるスキンシップがある。しつけの範囲で子供を投げ飛ばせば、父の威厳がそこに表れる。
そんな古き良き時代の風景を、畳は教えてくれる。
編集後記
ちょっとシャイな職人さん。取材後はそんなイメージが残った。
しかし会話が進むにつれて、自分がこの道に入った経緯や家族のこと、そして地域の未来を見据えていることが伝わってきた。
畳を通して伝えたいこと、守っていきたいもの。その想いがひとつひとつの仕事に生きている。
取材の後半には放送禁止用語も飛び出した。池上さんの少年のような心が垣間見えたことも嬉しい。
Innovator No.34 池上 仁
畳いえうえ
高知県吾川郡いの町池ノ内56
TEL: 088-892-3613
FAX: 088-892-3618
MAIL: info@jin-factory.jp
(by
Share Local)