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「信頼できる人にも相手の重荷になるから相談できません…。」受刑者を待つ母の気持ち。

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元受刑者でブロガーのイノシシさんの記事を掲載します。ページビューはそこまで伸びないけれど、重要かつ骨太なテーマを扱っているので、うちで拡散しようという試みです。

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きっかけは、読者から届いた一通のメールでした。

いつもブログを読ませていただいてます。私の息子が刑務所に入っていおり、今週末に松山の矯正展に行くのですが、もしよかったら一緒に行きませんか?

この方(=岡本茂子さん:仮名、50代)は以前から僕のブログにコメントをくれていた方で(現在コメント欄は閉鎖しています)、僕も覚えていました。願ってもいない機会だったので「お願いします!」と勢いよく返信。

当日は茂子さんの車と運転で松山矯正展へ向かうことに。

少し説明しておくと、茂子さんには現在ご主人はいらっしゃいません。また、息子さん(=岡本春樹さん:仮名、30代)は一度逮捕され、そのあとの執行猶予中に再度事件を起こし、今回受刑することになったそうです。

車中では茂子さんに「息子の帰りを待つ母の気持ち」や「息子が逮捕された当時の心境」、さらには「現在までの心の折り合いのつけ方」などを聞かせてもらいました。

初めて逮捕を聞かされたときの心境

一度目の逮捕当時、茂子さんと春樹さんは別々に暮らしていたそうです。当時はほとんど連絡を取っていなかった茂子さんの元に、突然弁護士から「息子さんが逮捕されている。」との電話があり初めて逮捕の事実を知ったとのこと。

とにかく驚きました。

◯◯(関西地方の都道府県)に住んでいるのは知っていましたが、色々あってほとんど連絡を取ってなかったので…。とにかく行くしかないと思い遠いところ何度も面会に行きました。弁護士の先生が頑張ってくれなんとか執行猶予の判決となり、また一緒に暮らすことにしたんです。

僕のブログでも記事にしていますが、最初の逮捕で即刑務所行きとなるのは「約60人に1人」です。累犯や比較的重罪でない限り刑務所に入るケースは稀といえます。

裁判では茂子さんも情状証人として証言台に立ち、春樹さんの情状酌量を訴えたそうです。当時は「人間だから間違いはある。」と思い、逮捕されてしまった息子さんを受け入れることができたとのことでした。

その後、春樹さんは茂子さんと一緒に暮らしながら就職先も見つけ新たなスタートをきり、茂子さんも「立ち直ってくれてよかった。」と感じていたそうです。

二度目の逮捕。「裏切られた気持ち」

しかし、同居生活も長くは続かず、春樹さんは再び家を出ていったそうです。茂子さんも自身の生活や仕事で忙しく、連絡も取っていなかったとのこと。

そして、またもや突然弁護士から電話がかかってきたそうです。茂子さんは当時の心境をこう振り返っています。

「何でまた?」と正直裏切られた気分になりました…。

事件のせいで迷惑をかけた先に謝りにもいきましたし、怒られもしました。しかし、私としては事件の詳細を知らずにひたすら謝りしかありません。裏切られたことへの怒りをよく覚えています…。

一度面会に行ったのですが、面会拒否をされてしまい、そのことから「もう知らない!」とさらに怒りが湧き、どんどん息子との距離は遠のいていました。検察でも取り調べを受けましたが、検察の方から「お母さん、これはちょっと言い過ぎじゃないですか?」と言われるぐらいに息子を非難する調書でしたね

一度逮捕され、しかも執行猶予中の逮捕。茂子さんが怒る気持ちも分かります。検察の方から指摘を受けるほどの調書ですから…。しかし、実はことの真相は少し違っていたようです。

罪をすべて着せられたかもしれない息子

面会はおろか手紙のやり取りすらする気が起こらず、息子と距離を置いてある日、春樹さんの弁護士から電話がかかってきます。

「茂子さん、面会には来ないんですか?」

「もう私は関わりたくないんです。何度も裏切られて…。面会まで拒否されて…。」

「そうですか…。実は春樹さん、冤罪かもしれないんですよ。」

結局、冤罪ではなかったのですが、茂子さんが弁護士から聞かされたことを箇条書きにしてみると、

・事件に関わったのは春樹さんだけではなく共犯が複数名いた。
・しかし、逮捕されたのは春樹さんだけだった。
・他の共犯も任意同行で取り調べを受けているがすべて「春樹さんがやった」「知らない」と供述している。
・春樹さんは「自分だけが罪を着せられた」ことに納得がいっていない。

もしこれが事実なら、春樹さんにも非はあるものの、他の共犯も薄情なものです…。結局、他の共犯たちは何のお咎めも無しにそのまま生活しているとのこと。

息子を信じてあげられなかった自分を悔いる

その話を聞いた茂子さんは春樹さんとのやり取りを再開します。「息子を信じてあげられなかった自分」を悔いたといいます。

今なら「春樹が逮捕された」と聞いても「もしかしたら無罪かもしれない。事情を聞いてみよう。」と考えると思います。取り調べも、「とにかく弁護士を呼ぶ。来るまでは何もしゃべらない」というのも分かります。

しかし、当時は何の知識もなく、1度目の逮捕のこともあり逮捕と聞いた瞬間「またやったんだ」と思い込んでしまいました…。もう少し息子の気持ちを考えてあげればよかったと思います。

逮捕は本当にいきなりです。「内偵」といって容疑者が逃げないように逮捕状が出るまで警察がしばらくの期間張り付くこともありますが、多くは不意を狙ってきます。

本人はもちろん、そのことを聞かされた家族も一種のパニックに陥りやすいのです。そこで「警察が言っているからそうなんだ。」と思い込むとあとはあちらの都合の良いように調書を取られそのまま裁判になってしまいます。

ほとんどの人は一生経験することはないと思いますが、「とにかく弁護士を呼ぶ。それ以外は何もしゃべらない。」は本人と家族ともに覚えておいた方がいいでしょう。

納得がいかず共犯に話をしに行くも「威迫罪」に

春樹さんは「逮捕されたことではなく、自分だけが罪を着せられたこと」に納得がいってなかったようで、保釈された後に共犯に文句を言いにいったようです。

しかし、それが「威迫罪」とされ、その後は一切連絡を取ってはいけない状態になったとのこと。僕も初めて知ったのですが、威迫罪とは、平たくいえば「事件の重要な証人に圧力を加え証言を変えさせようとする行為」。春樹さんの行為が「共犯への圧力」と受け取られてしまったようです。

当時は歯がゆい思いをしたようですが、今ではもうそのことについては区切りをつけ、ご自身の更生に目を向けているとのことです。

「相談できる相手がいない」待つ側の苦しみ

その後、上告まで1年以上の裁判を行ったそうですが、結局は刑務所に収監されることに。

春樹さんは当初手紙で「死にたい」「自分に保険金をかけてくれ。死んだ方がましや」といったことも言われるぐらいの落ち込みようだったそうです。ただ、そこから徐々に手紙のやり取りを繰り返すうちに前向きな内容が多くなり、今では立ち直っているそうです。

一方、事件というのは被害者やその家族だけでなく、加害者の家族にも多くの影響を及ぼすもの。待つ側の苦しみを茂子さんはこう語ってくれました。

職場では言えるはずもないし、信頼できる人にすら相手の重荷になるから相談できない。例えそれが春樹が逮捕されたことを知っている人であっても。普通の人にはわかってもらえないんです。言われた方だってどうしていいか分からないでしょうし…。その弱みにつけこんでいる輩もいると思います。

やはり、こういったことは「聞くプロ」に任せるべきです。カウンセラーであったり、その他になんでもいいですが。そうすることによって気持ちはすごくなりますし、身近な人に重荷を背負わすことにはなりませんから。

「プロに任せる」これを聞いた時、僕は「実際に待つ側だからこそ出てきたセリフだな」と思いました。

僕の両親は運良く色々な人に支えてもらったようですが、茂子さんのように相談できる人がいない場合が多いでしょう。変な噂を立てられるかも知れない、相談して相手の重荷になってはいけない、そもそも相手が誰かに言いふらすかもしれない。

こんなことを考え出したら、弱っている心がさらに弱っていく一方です。もし心が弱っていると感じていなくても、月に一度は心療内科でプロのカウンセラーに話を聞いてもらうのが良いかもしれません。

出所してくる息子に対する不安

息子さんが出所してくることへの不安もお聞きしました。

それはもちろんあります。

「前科のある人が出てきちゃんと仕事があるのか?」なんて考えたりもします。生活が上手く行くのかどうかも分かりませんし…。でも心配しても仕方ないんですね。結局は出てやってみないことには分からない。

だからもう一回息子を信じてやっていくしかないです。

出所するときは受刑者本人も不安です。この先しっかり生活できるのだろうか、仕事はあるのだろうか、周囲の目はどうなるのだろうか、等々。

でも、それは家族も一緒なんですね。むしろ家族の方がその気持ちは大きいのかもしれません。自分は罪を犯してないにも関わらず生活を壊され、出所してくる肉親は本当に更生しているのかも更生できるのかも分からない。だけど、信じて待つ。茂子さんの話を聞きながら、自分自身当時を振り返って身につまされる気持ちでいっぱいになりました。

受刑者家族としての心構え

今回のインタビューを通して、茂子さんからいくつか「受刑者家族としての心構え」を教わった気がします。いくつか例をあげると、

・家族が逮捕されたときはまずしっかりと状況を把握する。「逮捕」=「容疑確定」ではないことを理解しておく。
・その他基本的に弁護士以外とはやりとりをしない。
・一人で悩まない。身近な人ではなくプロに話を聞いてもらう。
・更生したかどうかは結局は出てきてみないと分からない。だったら「信じる」と決める。

ケースバイケースだとは思いますが、どれも今まさに「待ち人」である茂子さんだからこそ聞けた内容です。そこには卑屈にふさぎ込むでもなく、無理に自分を奮い立たせるでもない、息子を待つと決めた一人の母の姿がありました。

受刑者の数だけ人生があり、その生い立ちを家族との関わり方があります。また、家族というものが存在しない人がいるのも事実。埋もれている受刑者、そして出所者のその後を、これからも掘り起こしていきたいと思います。

けもの道をいこう。

2015 11 14 10 00 44

(春樹さんの手紙。検閲印は桜のマークでなくMなんですね。)

(by イノシシ

「罪を犯した人の家族」の苦悩。

「加害者本人」「被害者」、そして「被害者遺族」についてはよくメディアでも語られますが、「加害者の家族」はあんまり取り上げられることがないんですよね。

社会的なケアも不十分…どころか、「家族までバッシングを受ける」ということすらあります。その意味で、罪を犯した家族の苦悩を切り取った本レポートは、非常に貴重で有意義なものです。

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