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同時代をグロテスクかつ鮮烈に描く作家「小野美由紀」を知っているか。彼女の文章は人を「救う」力を持っている

傷口から人生。」がすんばらしい一冊でした。こういう作家と同時代を生きることができるのは喜びですね。

「小野美由紀」を知っているか 

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東京時代、共通の友人が多いこともあり、小野さんとは何度かエンカウントしたことがありました。遠目から見て、すでに只者ではない感じが漂ってました。うん、やっぱり只者ではありませんでした。ブログ連載も、寡作ながらも強烈な文章をアップしており、勝手ながら芸術的に爆発するのを楽しみにしてました。そんな小野さんがついに単著を出したということで、これはもう読まないといけません。

過剰すぎる母、自傷、パニック障害、就活失敗、女もこじらせ気味……
問題てんこもり女子、再生なるか!?

生きる勇気が湧いてくる、強烈自伝エッセイ。


過剰に教育的な母に抑圧され、中3で不登校。

キラキラキャンパスライフに馴染めず大学も仮面浪人。

でも他人から見てイケてる自分でいたくて、

留学、TOEIC950点、ボランティア、インターン等々。

無敵のエントリーシートをひっさげ大企業の面接に臨んだ。

なのに、肝心なときにパニック障害に!

就活を断念し、なぜかスペイン巡礼の旅へ――。

つまずきまくり女子は、問題の本質と向き合えるのか?

衝撃と希望の人生格闘記。

クラブに体験入店したらドレスがワキガくさかった話

で、もう読んだらグイグイ引っ張られます。これはすばらしい読書体験!

爆笑系だと、クラブに体験入店したらドレスがなぜかワキガくさかったという話w

日本有数の歓楽街、六本木。そこで受け入れられれば、私はそこで最大のOKをもらえるはずだ。

手始めに私が応募したのは、自由が丘のクラブだった。自由が丘ぐらいなら、せいいっぱいおしゃれすれば、私でもひっかかるはず。

が、私はここでとんでもないはずれクジを引くことになる。

入店初日、まだドレスも何も持っていない私は、お店に衣装を借りることになったのだが、なんとそのドレスは、とんでもなくワキガくさかったのである。

おそらく、何ヶ月もクリーニングに出していない。ワキの部分には、淡いブルーの布地に、くっきりと黄色い汗染みが浮かび上がっている。わたしは打ちのめされた。いくら私だからって、それはないじゃないか。

しかし、全くもって謎なのだが、私はそれをなぜか申告することができなかったのだ。親切心で貸してくれたママに悪いと思ったのかもしれない。なんか恥ずかしかったのかもしれない。ともかく、私は店の営業時間中、その強烈なワキガ臭を放つドレスを着続けた。

お客さんも、お姉さんも、無言でどん引きしているのが分かる。キャバクラなのに、お客さんが30センチ以内に座ってくれない。

違うんです!

これ、私の匂いじゃないんです! そう言い訳したくても、それを伝えられるだけの耳アカ程度のコミュ力すらも、私は持ち合わせていなかった。営業時間中、私はにっこり笑顔で異臭を放ち続け、お客さんには避けられ続けた。閉店後、私は羞恥心と屈辱感でボロぞうきんみたいになりながら、ソッコーで店をあとにした。

この後も凄まじい展開が待っています。ある意味、ここは本書の白眉です。映像が目に浮かんでやばい。続きは本書で。

マキさんに近づくのは、それが初めてだった。あれっ。斜め向かいに座った時に、私は軽い違和感を覚えた。その正体は、すぐに明かされた。彼女に腕を絡めた、堅気に見えない男性客が、秘密をばらしたからだ。

「こいつね」、タバコのヤニくさい臭いをまき散らしながら、男は下品な笑いを浮かべて言った。

「手術してんの。もともと、こっちなんだよ。俺の金で、手術させてやったの」そう言いながら、男は嬉しそうに親指を立てた。根元に塡めた金の指輪が、ぎらぎらとブルーライトを反射していた。

名文:「母を殴る」

本書を流れる主要テーマは「家族」。自分自身と家族の傷口をえぐるように、それでいて美しく、家族のリアルが記述されていきます。名文を堪能してください。

私は殴った。母を殴った。初めて、母と私の皮膚が触れた。拳の先と、母の頰。人生で初めて、母に触れた気がした。母の身体に触れることが、怖くてこれまで、できなかった。抱きつくことも、甘えることもできなかった。幼稚園以来に触れた母の皮膚はやわらかくて頼りなげだった。老婆の皮膚だった。瞬間、うろたえた。母はいつのまにか老いていたのだ。私よりもずっと弱い老婆に。これまで抱いていた、恐ろしくて憎い母のイメージが、現実の熱さに触れてどろどろと溶けてゆく。同時に時間と距離とが、混線して、バーチャルな世界を見せる。
なんで逃げるの。

母は泣いていた。私も泣いていた。拳が触れるごとに、母の生きて来た時間と、自分の生きて来た時間が交差する。二人分の厚い時間の層の中で、目の前の母はどんどん、小さくなってゆく。母は、彼女の時間の中で、小さな少女だった。目の前の老人の肉体の中に、震える少女がいた。

すばらしい!余計な言葉は不要です。

同時代をグロテスクかつ鮮烈に描く

もはや「グロテスク」とすら言える作品です。キツくて読めない人もいるはず。しかしながら、同時に美しく、鮮烈で、希望もあるんです。これは後世に読み継がれる、カルト的な一冊となりそうです。


そして何より、この本はごく一部の人の「救い」になってしまう系の作品でもあります。それはいろんな意味で「良くも悪くも」なのでしょうけれど、「救い」を与えるのは、やはり作家ができる最大の社会貢献なのではないかと。身を削って、身を自爆させて、結果的に誰かを救うという…モダンなアンパンマンとでもいいますか。ぼくも一応物書きなので、たいへん刺激を受けました。

小野さん、たぶんテレビとかラジオで引っ張りだこになるんじゃないかなぁ。これからの発信が本当に楽しみです。すごい勝手ながら、あまり「潜らず」に、この勢いで切っ先の方でバチバチやってほしいと思っていたりします。そしてそれをネタにする。「作家であり活動家であり作家である」という小野さんを、ぼくは見てみたいです。ロック!

どうでもいいけど、小野さんのブログの人気記事に爆笑しました。これはひどい。もはや存在自体がアートみたいな人ですね。

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Kindleでも読めるのでぜひポチッと。書籍版は品薄になっているようです。

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