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荻上チキ「彼女たちの売春(ワリキリ)」:売春という社会問題に向き合う一冊

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荻上チキさんの渾身の作品。読了したのでメモを残しておきます。

彼女たちの売春(ワリキリ)

・ワリキリは、主に出会い系サイト、出会い喫茶、テレクラなどの出会い系メディアを活用して客をつかまえ、個人で自由売春を行うことを指す言葉だ。

・売春は、女性が当事者となる社会問題のなかでも、最も古典的かつ普遍的なもののひとつだ。(中略)売春はリスクが高い行動ではあるが、ほかに仕事がない女性、あるいはほかの仕事よりも高い報酬に惹かれる女性、さらにはそうするように強いられた女性などが従事することが多い。

・「貧しい国で、売春をせざるをえない女性がいる」という話をすると同情を示してみせるけれど、「この国で、売春をしている女性がいる」というと、途端に「道徳」や「気持ち」の問題として捉え、憤りをみせる者というのは、決して少なくないようだ。

・それは、「社会問題を個人問題化」しようする力だ。そんなのは社会問題ではない、あくまで個人の失敗事例にすぎないと、解決のための議論に水を差すような言葉の数々だ。売春という問題は、しばしばこうした力を味わってきた。

・売春はいつも、個人の心の問題などに還元されてきた。政治や社会の問題として語られるときは、包摂ではなく排除の対象として、セーフティネットではなくスティグマが必要な対象として、生命や人権の問題としてではなく風紀や道徳の問題として、売春は受け止められ続けてきた。

・「喫茶に来る女の子はみんな、お金しか見てないよ。『癒し』や『出会い』を求めている女子なんていないよ。みんなお金のためにやってる。お金ないと、暮らしていけないんだよ。ここだとラクに稼げるからね。みんな、病んでる。」

・初めて「売春」をしたのは19歳のとき。ある日突然、いきなりケータイに「あなたに100万円当たりました!おめでとうございます!」という電話がかかってきた。チカは「ラッキー」と思い、友人にそのことを報告。友人には「それ、ゼッタイ詐欺だよ、やめときな」と忠告されたが、チカはそれを無視。待ち合わせ場所であった男性に「お金をあげるからホテルに行こう」と誘われ、のこのことついていくことに。結局、その場に流されやすいチカは「パイプカットしてるから大丈夫」と言い張るその男性と、生でセックスをしてしまう。男性はその報酬として、「交通費」と言ってチカに1万円を支払った。

・出会い喫茶に通う女性や、利用する男性に話を聞くと、多くの者が口を揃えて「ワリキリをやってる子、風俗をやってる子は、病んでいる子が多い」と言う。

・2011年の取材では、100人の女性のうち33人が、主に親からの暴力・虐待を受ける環境で育っていた。

・生活保護は受けなかったのか。DVシェルターなどに駆け込まなかったのか。警察に相談しなかったのか。そうした質問を投げかけると、返ってくる答えにはいくつかのパターンがあった。「家のない者は生活保護を受けられない」というようなウワサを信じている者。「生活保護を新星したら家族に連絡されて捕まる」とおびえる者。「売春は違法だから捕まって刑務所に入れられる」と思い込んでいる者。そして一番多いのが「名前は聞いたことがあるけれど、どこに行けばいいのか、どんなものなのかも知らない」と、これまで頭をよぎったことすらない者など。彼女たちにとってNPOや行政というのはあまりに遠い存在で、ときには具体的な「敵」としてすら思い描かれている。

・湯浅誠は「反貧困」のなかで、経済的な「貧乏」と「貧困」の状態とを区別し、「貧困」状態に至る背景には、「五重の排除」があると指摘している。それは、教育課程からの排除、企業福祉からの排除、家族福祉からの排除、公的福祉からの排除、自分自身からの排除、の5つ。

・2012年の調査では、約7割が月収にして25万円以上、4割近くが40万円以上をワリキリで稼いでいた。月に10人ほどの客をつかまえれば、確かにそれくらいの収入は確保できる。

・日本のシングルマザーは、きわめて高い就業率を誇っている。前述の調査によれば、シングルマザーの84.5%が終業しており、これは女性全体の就業率よりも著しく高い。にもかかわらず、日本における「有業母子世帯」、すなわち働くシングルマザーの貧困率は58%でああり、OECD30過酷中で最悪の結果となっている。

・まず離婚した父親は、そもそも初婚年齢が低いこと。傾向として、若い頃の暮らし向きがよくなかったこと。現在の所得も、平均的な所得に比べて低いこと。離婚後、再婚する者のほうが人数的には多いということ。そしてその多くは、新しい家庭で新しい子どもを育てていること。さらに転職率が高く、健康状態もよくないこと。こうした傾向があるために、経済状態が悪く、離婚した母親とその間にもうけた子どもに大して、養育費を払う能力そのものが低いということになる。そのため、養育費の徴収強化だけではなく、ほかの対策も必要となる。

・「必要悪なんですよ、風俗って。風俗がちゃんと守られているところのほうが、犯罪率も秩序も、ちゃんとするでしょ。(中略)いろいろ意見はあるやろけど、アングラな世界を生きてきた僕なりに、社旗兄どのように貢献したらいいんやろうかという気持ちで始めたんです。1998年の5月やったかな。」

・売春もさまざまであるため、自己決定の権利を重視することの意義は大きい。その一方で、生きづらさを抱え、また多くの苦難を抱えるが故にアウトサイドの包摂へとたどり着いた者にとって、それが本当に「自己決定」だと言えるのかという問いは、常に持ち続ける必要がある。むしろそれは、選択肢が少ないなかでの、「消極的自己決定」でしかないのではないか、と。

汗を流すフィールドワークと綿密な調査、そして骨太な提言。日本が誇るべき人材だと感じさせる作品です。いやー、こういう本を書ける人は本当に尊敬します…。Kindleでも買えるのでぜひ。

荻上チキさんの渾身の作品。読了したのでメモを残しておきます。

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