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子どもたちがビジネス、納税、政治を「体で学ぶ」。高知「とさっ子タウン」がすばらしい

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全世界で取り組まれている「こどものまち」をご存知でしょうか?ミュンヘンで始まった取り組みで、子どもたちが自ら「まち」をつくり、市民生活を体験するプログラムです。社会体験ができる「キッザニア」をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。

「こどものまち」は日本でも着実に浸透しており、全国約80カ所で開催されているそうです。高知で行われている「とさっ子タウン」は、特に先進的な事例として注目されています。というわけで、出張のついでに「とさっ子タウン」事業を展開する「NPO高知市民会議」の尾崎昭仁さんにお話を伺いました。

 

子どもたちが社会の仕組みと文化を学ぶ

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イケダ:今日はよろしくお願いいたします。プレゼン資料をご用意いただいているんですね!ぜひ、概要について詳しくお話をいただければ。

尾崎:はい、ではご説明をさせていただきます。私たち「NPO高知市民会議」は1999年に立ち上がった中間支援NPOで、人材育成、相談、アドバイス、調査研究などを行っています。「とさっ子タウン」は5年前に始まった事業で、「若者世代の市民協同施設の利用」と「小中学生が参加できる事業」を増やす、という目的をもってスタートしています。

「とさっ子タウン」はいわゆる「こどものまち」と呼ばれる取り組みです。もともとは30年以上前にミュンヘンで始まり、「ミニ・ミュンヘン」の名前で知られています。就労経験や遊び、学びを通して社会について知る取り組みとなっています。

これを参考にした取り組みを高知でも開催しようということで、NPO高知市民会議の10周年事業として、5年前に立ち上げました。

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尾崎:「とさっ子タウン」で、子どもたちは「働く」「食べる」「遊ぶ」「起業する」「議会で討議する」「納税する」といった活動を行います。8月のお盆の時期に2日間開催しており、小学校4年生から中学校3年生が対象になっています。

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尾崎:実行委員会は県内で活躍する、約100名の社会人や高校生、大学生が参加してくださっています。学生がそのうち半数を占めており、運営費を集めるために企業への営業も、主に学生たちが行っています。

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尾崎:目的として掲げているのは「子どもたちが現実の社会やまちに関心を持つ社会の実現」です。子どもたちが現実の政治、税金に興味を持っていただくことを目指しています。

運営の方針は、①高知ならではの仕事や文化、遊びをタノシク体験できる、②異年齢間のコミュニケーションが生まれる場にする、③社会の仕組みを知ってもらう、の三つです。

例えば、高知には路面電車の文化がありますが、とさっ子タウンにも路面電車があり、子どもたちが運営しています。また高知は、やなせたかしさん、くさか里樹さんといった漫画家が生まれ育った地域でもあるため、マンガ家を学ぶブースをタウン内に用意しています。

あと面白いところでは、高知の酒文化である「お座敷遊び」もやってもらいます。お酒ではなく飴をいただくかたちですが(笑)

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イケダ:さすが高知ですね(笑)ほかの地域でやったら「子どもに酒の席の遊びを教えるなんてけしからん!」となりそうなものですが…(笑)

尾崎:はい、文化ですので(笑)それらに加えて、子どもたちは、おじいちゃんおばあちゃん、子ども同士、大学生といった異年齢とコミュニケーションを取ることができるプログラムになっています。

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子どもたちが社会の仕組みと文化を学ぶ

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尾崎:仕組みについても簡単にご紹介させてください。①まず、ハローワークで「仕事」を選びます。②仕事場に行って「仕事」をします。③お仕事をこなして給料をもらいます。④税務署にいって税金を納めます。

職業体験としては、36業種の仕事とその専門家が参加してくださっています。高知新聞社、毎日新聞社とコラボした「新聞社」、NHKのアナウンサー、ディレクターの方がご協力いただいた「放送局」、現場に近いところで働いている警察の方が協力する「警察署」、プロカメラマンの方がお手伝いいただいている「写真スタジオ」などなどがあります。

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尾崎:お給料は地域通貨「tos」で支払われます。1tosは50円に相当します。もらったお給料から、税務署で10%の税金を払い、残ったお金は使うことができます。

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尾崎:お金の使い道もタウン内に用意されており、「ノンアルコールバー」で一杯することもできます。もちろんお酒ではなくて、子どもたちが混ぜるドリンクを楽しめます。ほかにもゲームコーナー、食事どころがあります。

イケダ:ここでもお酒文化が…(笑)

尾崎:ノンアルコールですから(笑)あとは、とさっ子タウン内で、起業することもできます。色々な仕事が生まれましたが、「にもつあずかり屋」という仕事をつくって大儲けしていた子どもたちもいますね。座っているだけでお金が集まる仕組みを見事につくっていました(笑)

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尾崎:最後に、選挙を行います。今年度は4人が立候補し、ポスターをつくり、マニフェストもつくりました。高知県・市の選挙管理委員会の方にご協力いただいて、本物の投票箱と模擬投票券を使っています。今回は3人が議員として当選し、議会が行われました。

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保護者は街に入れない

尾崎:「とさっ子タウン」にはルールがひとつありまして、保護者は街の中に入れないんです。保護者はあれこれ言いたくなってしまうんですよね、どうしても。その代わり、とさっ子タウン内で何があったかを親御さんが知るために、タウンのなかの活動や友達の記録を残すことができる「市民証」を用意しています。

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尾崎:尾崎:地域社会との協力やつながりということでは、地元「大橋通商店街」のご協力で、地域通貨が使える催しの開催を行っています。とさっ子タウンで稼いだ「tos」が使えるというかたちになっています。子ども達と一緒に兄弟や保護者の方が来るので商店街が潤う効果もあると思います。

飲みながら寄付ということで、レストラン様にご協力いただき、特定のメニューにとさっ子タウンへの寄付を付けていただいております。ほかにも寄付付き商品として「とさっ子駅弁」や「お仕事缶バッジ」も展開しています。

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「とさっ子タウン」を経験した子どもが、NPOに関わる

尾崎:「とさっ子タウン」の市民として参加したこどもが、今度は実行委員として参加する、という流れが5年目にして生まれてきました。子どもたちが市民社会の一員として、NPO、社会に関心を持つ流れをつくっていこうと考えています。

イケダ:というか、尾崎さんがご本人も「とさっ子タウン」の学生スタッフ経験者なんですよね。やっぱりきっかけになっているんですか?

尾崎:はい。今の仕事のきっかけは「とさっ子タウン」ですね。

イケダ:本当にすばらしい流れですね。今後10年、20年と年数を重ねていくことで、成熟した市民が続々と輩出されていきそうです。お話ありがとうございました!

 

「こどもファンド」というステップも

というわけで、非常に先進的な取り組みとなっているわけですが、高知にはさらに進んだ取り組みがありまして、それが「こどもファンド」。

未来の高知市を担う子どもたちの『自分たちのまちを良くしたい』という想いを実現するために、「高知市子どもまちづくり基金」を積み立て、その基金を原資として子どもたちの自発的な活動を支援する制度です。当制度は、子どもたちの提案を助成対象とするだけでなく、審査する側にも子どもたちが参加する、全国の自治体に先駆けた取り組みとなっています。

高知市子どもまちづくり基金助成金事業「こうちこどもファンド」 – 高知市公式ホームページ

子どもたちの取り組みに対して、最大20万円の助成金を提供するという企画です。プレゼンをするのはもちろん子どもたち、そして審査するのも子どもたちです。これは全国的にも類例がほとんどない取り組みで、高知が最先端を行っている領域です。

 

歴史と概要

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・平成15年に高知市は「市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例」を制定。高知市が3000万円の拠出し、「公益信託高知市まちづくりファンド」を創った。毎年300万円程度を助成し、予算的に10年間の仕組みだった。

・平成23年に検討委員会で、まちづくりファンドの助成事業の成果を検証。子どもに関する活動に対するパフォーマンスが高いことがわかり、こどものまちづくり活動を支援するための新しい助成制度を立ち上げることに。

・平成23年に高知市が2000万円を拠出し、「こうちこどもファンド」が立ち上がった。個人・団体・企業からの寄付も集め、継続性を高めている。

 

子どもがプレゼンし、子どもが審査する

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(テレビ放送シーンより)

・①「子どもたちによる」まちづくり活動の提案、②「子どもによる」活動実施、③「こども審査員による」助成団体の決定がポイント。大人の審査委員会の下部組織として、子どもが独自の審査委員会を持っている。

・助成決定にあたっては、子どもがプレゼンし、子どもが審査する。子どもからの厳しいツッコミも入る(被災地にピアノを送ろうと考えている団体に対して、子どもが「被災地にピアノを送ることによって、被災地にはどんな利益があるのか?」と突っ込むなど)。

・子ども審査員は現在公募。人数が足りない場合は教育委員会と連携して学校から推薦。

 

助成対象となる活動

・住んでいる地域が学校の周りと楽しくて暮らしやすいところにあする。初年度は10グループに164万円、2年目は全グループに147万円。3年目は9グループに170万円を助成。

・町中の落書きを消す活動、お年寄りとの交流、おばあちゃんに伝統料理を教えてもらいカタログを創る活動などなどを助成している。プロジェクトに対する助成の上限は20万円。

これまでの助成事業はこちら(以下、クリックで拡大)

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高知市の狙い

・大人が想像できないような新しい課題解決を提案してくれることを期待

・こどもファンドで助成を受けた子どもたちが、次代の子どもたちのまちづくり活動を支える大人になることへの期待

・地域活動に参加する若年層の増加を期待

・平成25年度の高知市民意識調査では、「町内や地域で行われる活動によく参加する/ときどき参加する」と答えた20代は18%(全体は49.5%)と低調。町づくり活動が停滞している地域も出てきている。

 

これは素敵な助成制度!

これ、すばらしい事業だと思います。こういう事業に力を入れてくれることで、税金を払う意味をダイレクトに感じることができますね。高知市で住民税払っててよかった!

興味深いのは、この仕組みって高知市だけでしかちゃんと回ってないんですよ。他の自治体でも実施例はあるようですが、どうにもうまくいかないそうで。仕組みのデザインがすばらしいことに加え、高知は大人も子どもも、市民が街を愛している度合いが強いんでしょうね。

 

ぼくは仕事柄、様々な地域のNPOにお邪魔しているのですが、高知は本当に不思議で、市民活動がひじょうに盛り上がっています。現地の方々に理由を聞いたところ、「全国的に見て貧しい地域である割に、ポジティブで社交的な県民性があるからではないか」というお話をいただけました(平均年収がワースト1位の「高知県」で、なぜかNPOが盛り上がっている理由 : イケハヤ書店)。

NPO活動や地域活性化に関わりたい方には、「聖地」といってもいい雰囲気を感じました。まだまだ高知の魅力を開拓しきっていないので、また足を運んでお話を伺いに行こうと思います。

 

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