ロングインタビュー

ブロガーの新たな収益源をつくる:「サムライト」柴田氏に聞くオウンドメディアの未来

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<インタビュー実施日:2013年12月19日>

最近ものすごく盛り上がっている、オウンドメディアを使ったマーケティング施策。コンテンツマーケティング、インバウンドマーケティング、ブログマーケティング、いろいろな呼び方がありますが、まぁ、概ね「ブログを使って集客するマーケティング手法」くらいで理解しておけば、大きくまちがえることはないでしょう。

オウンドメディアを使ったマーケティングのプラットフォームを狙う「サムライト」の柴田さんにお話を伺うことができたので、ご共有いたします。先日リリースされたばかりの注目のプラットフォームです。

人気ブログ「The Startup」のUmekiさんとの共同取材というかたちで、インタビューを実施しました(敬称略)。

いきなりエンジニアに逃げられる

1538929 10202660795823362 1106522226 n(柴田泰成さん)

イケダ:こんにちは、Umekiさんから伺いましたが、なんだか大変なことになっているとか…。

柴田:……あのー、エンジニアと一緒にシゴトをしていて、リリースまで開発してくれるという約束でやっていたのですが、彼が逃亡しまして……ソースコードを含めて、何もない状態で……。そんなわけで明日リリース予定だったのですが、ちょっとむずかしくなってしまいました……。最悪、仕切り直して、来月リリース予定で死ぬ気でやろうと思っています。

Umeki:家がわからないんですよね。発注先の住所は抑えていかないといけない、というライフハックが早速飛び出しました。

イケダ:これ、サムライトが成功したら伝説のインタビューになりそうですね。あの有名ベンチャーは起業当初にエンジニアに逃げられて途方に暮れていた!と。ぼくらは歴史の証人ですね。

柴田:そうなるといいですね……(笑)

イケダ:早速ぼくから色々伺っていきたいんですが、サムライトって、まだほとんど情報公開してないですよね。調べてもThe Startupの記事がすこし見つかるくらいで……そもそも「サムライト」は何ぞや?なぜつくったのか?というあたりを教えてください。

柴田:もともと私自身は、楽天6年、リクルートに1年いて、新規事業の立ち上げばかりをやってきました。学生時代から「30歳で起業する」という目論見でして、実際に30で起業しました。

イケダ:有言実行ですね!すばらしい。

柴田:なぜこの事業を立ち上げたかという点については、私はもともとウェブマーケティングの領域をやってきて、バナー広告、メール営業、ディスプレイ広告の立ち上げ、リードジェネレーション、ソーシャルメディアなどなど、一通りウェブマーケティングの変遷を見てきたんです。

ウェブマーケティングの経験を積んだのち、楽天社内の新規事業コンテストで優勝したことをきっかけに、新規事業企画のプロデューサー領域も経験しました。全世界、1,700件のなかからトップでした。

リクルートに移ってからは、新規事業とSEOの実務を担当し、独立の準備を固めていきました。家具のサイトのタブルームをつくって、そのあと起業しました。

ユーザーのためになるマーケティングを

で、そのウェブマーケティングや新規事業をやるなかで、ずーっと心に引っかかっていたのが、ユーザーを追いかけていたり、無理矢理ふりむかせるような広告の手法なんです。ポイントを配るのはいいが、それが長期的に意味があるかというと、そうでもない。追いかけ回すような広告も、違和感がある。

これまで仕事をしてきて、ユーザーにとってメリットのある広告を提供できていなかったな、と思ったんです。そんなことを思っていたら、市場環境に2つの大きな変化が訪れました。

ひとつ目はユーザー環境の変化です。ソーシャルとスマホですね。これによって、情報の出し手と受け手が対等の関係になっていきました。

ふたつ目は技術の変化です。SEOをやっていたおかげで、Googleのアルゴリズムの変更を担当者として感じました。既存の外部リンク型のSEOは、徐々に意味を失いつつあります。

このふたつの変化が、コンテンツマーケティングというところにつながっていきます。私たちは「タブルーム」を立ち上げるときに実験をしたんです。あえて外部リンクを一切やらずに、内部対策とコンテンツ対策だけで、検索エンジン上位を狙ってみよう、と。

その結果、わずか数ヶ月で「家具」というビッグワードで3位の表示を取ることができました。これに手応えを感じまして…。

今後、ほかの会社も無理矢理ユーザーを振り向かせるのではなく、ユーザーに歓迎されるコンテンツを提供するように変わっていくのではないか。この方法は、私が感じていた課題、不満を改善するアプローチなのではないか。広告のあり方、コミュニケーションが変わるのではないか。そう考えて、起業することにしました。

コンテンツを作り、読者を集めるプラットフォームに

イケダ:具体的には、どんな課題を解決するサービスになるんですか?

柴田:まずは「つくる」という観点の課題解決です。会社のなかにマーケティングに詳しい人はいても、編集ができる人、ライティングができる人、そもそもスペック的、スキルセット的に存在しません。

もう一点としては、つくったはいいけれど、トラフィックが集まらない、という課題の解決。「集客」ですね。つくって、集める、ここを回せるオウンドメディアプラットフォームを作れば、色々な企業がコンテンツを扱えるようになるのではないか、と考えました。

そこでまず最初に考えたのが、オウンドメディアを集めたポータル、ちょうど「BLOGOS」のようなイメージのサイトです。こちらは近日中にリリース予定です……本当は明日リリースする予定だったんですが。このメディアで儲けようというよりは、企業とユーザーを近づけるのが目的ですね。

(イケダ注:無事にリリースしました笑)

とはいえ、事業としては収益を上げないといけません。その後の展開はあまりに詳細はお伝えできないのですが、Umekiさんのブログにも書いていただいたとおり、ハイレベルな書き手を集めたクラウドソーシング的なものを考えています。

「集める」という方向性に関しては、自社のメディアだけでは限界があると考えています。そのため、メディアとのネットワークを築いていき、将来的にはコンテンツを軸にしたアドネットワークのようなものをつくっていこうと考えています。記事単体を拡散させようとしたときに、使っていただけるようなイメージです。記事の下に、バナーではなく関連記事を表示するようなかたちですね。

参考画像:Outbrain社の広告

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ブロガーの新たな収益源に

Umeki:アドネットワークはビジネスとして大きくなりそうですね。すでに競合、類似サービスとかあるんですか?

柴田:実は「Outbrain」という会社が日本に上陸するらしいんですよ。

イケダ:おぉ、知りませんでした、これ。まぁ、この手の海外サービスってだいたいうまく上陸しない気もします。

柴田:私の認識としては、アドネットワークという「場」だけやっていても仕方ない、と考えています。場の提供に加えて「コンテンツづくり」までやるところに意味があるんです。

Umeki:記事下にサムライトの広告枠を入れます。たとえば企業側のCPCが100円です。我々メディア運営者の取り分はどのようなイメージなんですか?Outbrainだと、どのような配分なんでしょう。

柴田:Outbrainについてはわかりません。が、今までの商習慣でいうと、折半、もしくは先に買い取るパターンになると思います。

Umeki:ぼくらがネイティブアド(記事広告)を書くパターン、バナー広告の代わりにアドネットワークを入れる。これ、うまくやれば、メディアの収益性あがりますよね。

柴田:はい。ライター・ブロガーたちの収益性もあがり、我々も、クライアントもハッピーになる道です。そして、これを進めるとライターの地位・単価もあがっていきます。お二人のようなライターはいいかもしれませんが、しっかり仕組みをつくらないと、1文字0.1円だ、という低単価から脱出できる人たちは増えていかないでしょう。

「まとめ記事」はオリジナリティが低い

Umeki:えぐい質問も用意してきたんですが……そもそも、今度リリースするBLOGOS的なオウンドメディアポータルサイトは、読者に本当に読まれるんですか。

柴田:正直、出してみないとわかりません。ただ、見え方としては「企業が提供する良質なノウハウが集まっているサイト」になると思われます。企業がつくるコンテンツは、基本的にプロフェッショナルの知見に基づいているわけです。BLOGOSのように選別してコンテンツを転載し、価値のあるサイトにしていこうと思っています。

Umeki:2014年のオウンドメディアはこうなる、という予測はありますか?

柴田:どうなるか……。そうですね、実施企業数は間違いなく増えると思います。旧来型のSEOの効果が出なくなってきており、今、多くの企業は戦略の見直しを進めています。それが一段落つくのが来年で、じゃあ次どうするの?というと「オウンドメディア」に来ざるをえない。コカコーラ・パークのような顧客管理機能を統合するのも道ですが、ハードルが高いので、当面は「企業ブログの開設・運営」がスタンダードな戦略になっていくのではないでしょうか。

企業がブログを始めてくると、すでにそういう状況になりつつありますが、「似たような記事」が増えていく懸念があります。はじめは「まとめ記事」みたいなものでもいいかもしれませんが、競合が増えてくると、オリジナルなコンテンツとして評価されなくなります。

そこで問われてくるのは企業の専門性や、企業がもっている独自のデータ。これはオリジナリティにつながるので、SEO的にも効果があります。ビッグデータは、コンテンツになっていきます。

ライターの確保が課題

イケダ:先ほど、クラウドソーシング的にライターを集めて記事コンテンツを生産していく、というお話がありました。かなり肝心だと思われますが、これ、むずかしいですよね。

柴田:仰るとおり、ここはめちゃくちゃ難しいです。まずは成功事例をいくつか最初につくって、環境をつくって、整えてからじゃないと、ライターの方々は集められないと思っています。当初は単にライターを集めて、企業とマッチングさせるプラットフォームをつくろうと思ったんですが、それじゃ集まらないと判断しました。なので、メディアをつくって、アドネットワークをつくって、それからだと判断した。おふたりのような人たちは稀少なんです。

Umeki:この話は色んなところでしていて、自分の名前で食っていけるのは200〜300人くらい、ネット領域だと20人くらいなんじゃないでしょうかね。

柴田:そうした貴重なライターたちを奪い合うときに、参入障壁がないんですよね。ライターからしたら、うちでもイノーバさんでも、単価が高ければどこでもいいわけですから。なので、私たちはあえて場を固めてから始めようと思っています。新規事業を手がけてきた経験からいっても、これは勝ちパターンのひとつですね。

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というわけで、たいへん貴重なお話を伺えました。ちょいとマニアックな領域ですが、オウンドメディアを使ったマーケティングは、2014年、間違いなく加熱していきます。サムライトが展開するクラウドソーシング的サービス、アドネットワーク、どのようなものになっていくのか楽しみです。

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