「10年に1度の台風」のなか、社員に出社させる会社は「ブラック企業」だ」が思わぬ反響を呼んでいます。あの堀さんも言及(原文ママ)。そもそも「ブラック企業とは何か」の定義が人それぞれなので、ぼくのスタンスを記しておきます。




様々なブラック企業の「定義」



そもそも、先行者たちはどのようにしてブラック企業を定義しているのでしょう。

まずはWikipedia。

ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義には入社を勧められない過酷な労働搾取企業を指す。

ブラック企業 - Wikipedia


つづいて知恵蔵2013。

労働者を酷使・選別し、使い捨てにする企業。「ブラック会社」ともいう。
度を超えた長時間労働やノルマを課し、耐え抜いた者だけを引き上げ、落伍(らくご)者に対しては、業務とは無関係な研修やパワハラ、セクハラなどで肉体・精神を追い詰め、戦略的に「自主退職」へと追い込む。

ブラック企業 とは - コトバンク


新田龍さんの記事より。

明文化された共通基準はあいにく存在しないのだが、ブラック企業とは一般的に、「明らかに違法、もしくは限りなく違法に近い労働条件(長時間労働、低賃金等)」を、「パワーハラスメントや暴力的強制力、精神的プレッシャーをもって従業員に強いる」会社である、と認識されている。

ユニクロは本当にブラックか?表層的なブラック企業批判の弊害、真の悪徳企業を延命(1/2) | ビジネスジャーナル


新田さんが指摘しているように、明確な定義は存在しません。使う人はそれぞれのイメージで「ブラック企業」ということばを使い、それゆえ、しばしば議論は噛み合いません。「セレブ」とか「ノマド」に似ていますね。




「働く人の心身の健康よりも、企業の論理を優先する企業」



こういうものについて議論するときは、まず、その人なりの定義を述べておくと、少しは生産的になります。というわけで、ぼくなりの定義を考えてみました。それがこちら。

「働く人の心身の健康よりも、企業の論理を優先する企業」




あなたの会社が、「売上や制約数などのゴールを追うあまり、あなたの心身の健康へのケアを忘れている」のなら、その会社はブラック企業といえると、ぼくは考えます。

台風云々の記事に戻れば、「命の危険すらあるなかを出社させる」というのは、まさに心身の健康へのケアよりも、企業の論理を優先している状態です。ゆえに、「10年に1度の台風」のなか、社員に出社させる会社は「ブラック企業」だ」とぼくは自信をもって断定します。

ごく普通に考えれば、経営者が社員を大切にしているのなら「危険ななかを出社させられないから、とりあえず自宅待機して、危険が去ってから出社してくれ」と伝えるでしょう。「強風で危険かも知れないけど、会社のために来てくれ」というのは、社員を大切にしている態度とはいえません。ブラック企業のそれですね。




実体のない「企業」なんぞのために、そこで働く生身の人間の健康が害されるというのは、本末転倒な話です。ぼくらはそもそも、文化的で健康な生活を維持するために仕事をしているわけですから。このことに疑問を覚えない企業は、総じて「ブラック」だと、ぼくは思いますよ。




「世の中には命をかけなきゃいけない仕事もある」?



先んじて書いておくと、「そうは言うけれど、消防士や警察官など、命をかけなきゃいけない仕事もある。それはブラック企業なのか」というツッコミもありえるでしょう。ツイッターでは、すでにそんな声もいただいております。

えぇ、ぼくはそれも「ブラック企業」だと思いますよ。だって、仕事なんぞのために命を張るなんて、おかしな話じゃないですか。「命をかけなきゃいけない仕事」があることそれ自体を問題視し、社会から減らしていくべきです。




たとえば消防の仕事にしても、命の危険を冒さないで消化する方法はありますし、実際、現場ではそのような方法がとられているのでしょう。よく知りませんが、本気で現場に立ち向かっている人ほど、「命がけにならないように」努力していると思いますよ。死にたいと思ってやっている人はいないでしょうから。

もう少し具体的にいえば、ロボット技術が発達すれば、消火・救出作業を機械に任せることもできるようになるでしょう。軽く検索するだけで、先進的な実験がなされていることがわかります。

先の震災では、実際ロボットが多数活躍したそうです。将来的には、危険な現場における作業は無人で行われるようになるでしょう。

439px Small Unmanned Ground Vehicle May 2007
(福島第一原発に潜入した「パックボット」)




技術を進化させていけば、ぼくらの社会からは「命をかけなきゃいけない仕事」は減らしていくことができます。短期的にそうした仕事が存在するのは仕方ないことですが、それをむしろ憎み、減らしていく努力をすべきです。

「そうは言うけれど、消防士や警察官など、命をかけなきゃいけない仕事もある。それはブラック企業なのか」という問いについては、このような回答を与えておきましょう。