大便をテーマにした一冊。いやー、こういう本面白いです。読書メモをご共有。



大便にまつわる実用的知識の数々



・これまで多くの人の大便を集めてきました。大便を提供してもらった人の数は、おそらく6000人を超えているでしょう。

・水分を除いた大便1グラムの中には、6000億〜1兆個もの細菌が含まれています。もちろん、すべてが同じ細菌ではありません。腸内に生息する細菌は1,000種類以上いると考えられます。ここで重要なのは、その種類が人によって異なることです。

・大便は「個人情報」の塊のようなものです。いわば指紋のように違うからこそ、そこにはお情報としての価値がある。大便内の細菌を調べれば、その人の腸内が今どんな状態なのかがわかるのです。

・ちなみに、日本人ひとりが人生80年のあいだに排泄する大便の量は、平均でおよそ8.8トン。

・小腸から大腸に送り込まれる内容物は、1日に約600ミリリットル。大腸では、そこから水分とミネラルを吸収し、マグネシウム、カルシウム、鉄などを排泄します。それが大便として排泄されるまでの所要時間は、約12時間から48時間。

・健康な人の大便を調べると、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が、腸内細菌全体の10〜30%を占めています。それに対して、便秘症など体調不良を抱えている人は善玉菌の割合が少なく、悪玉菌が増えています。ただし、ウェルシュ菌やフラジリス菌などが30〜40%も占めることはありません。(中略)そこで大きな役割を果たすのが「日和見菌」にほかなりません。腸内細菌全体のうち、およそ70%はこれが占めていると考えていいでしょう。この一大勢力には、常に「勝ち馬に乗る」性質があります。

・ほとんどの大腸菌は「性善」でも「性悪」でもありません。善玉菌が優勢な腸内では何も悪さをしませんが、悪玉菌が優勢になると、そちらになびいて腐敗の手助けをするのです。

・動物の中には必要に迫られて積極的に「食糞」をするものがあります。たとえばコアラは、我が子に自分の糞を食べさせる。儒教的な親孝行の嘗糞とは逆ですが、これは不足した物質を補うための行為です。コアラが食べるユーカリの葉はタンニンが多く含まれており、これは毒性があるので、それを解毒してくれる細菌が腸内にいないと食べられません。いわば「離乳食」として、子どもに糞を食べさせるわけです。


・「腸年齢」を若く保ちたければ、成長期から成人期にかけて、できるだけ善玉菌を増やしておかなければいけません。その時期に善玉菌が悪玉菌を圧倒していれば、やがて歳を取って悪玉菌が増えたとしても、その悪影響を低く抑えることができます。

・大便は、便意をもよおしたときに出すのがいちばんです。ただし、排便をうながす直腸の蠕動運動は、1日に1〜2回程度しか起こりません。その蠕動運動が起きた時に私たちは便意を感じるのですが、そこでいつも我慢をしていると、直腸が便意を伝えなくなってしまいます。

・17〜18世紀に模範的な国王として活躍し、人々から「太陽王」と呼ばれたフランスのルイ14世は、いつも便器に腰掛けて排便しながら政務をとっていたことで知られています。(中略)下痢の原因は、主治医が「歯はあらゆる病気の感染源だ」というトンデモない考えの持ち主だったこと。そのため国王の歯をすべて抜いてしまい、食べ物を噛むことができなくなったルイ14世は消化不良を起こし、毎日下剤を飲まざるを得なかったのです。1日に14〜18回もトイレに行ったとの記録が残っているほど悲惨な症状でしたが、国王という立場上、そのために政務をおろそかにすることはできません。

・私は以前、下剤を使っても2週間に1度しか大便が出なかった女性たちに、ヨーグルトを毎日300グラムずつ食べさせたことがありました。薬を使ってもそれだけしか出ないのですから、かなりタチの悪い便秘です。しかし、ヨーグルトの効果はてきめんでした。(中略)ほとんどの女性が、およそ1週間程度で、大便が出るようになったのです。

・食物繊維の摂取量が少ないイギリス人は、1日の大便量が100グラム程度でした。しかも食べた物がすぐに大便にはなりません。72〜96時間、つまり3〜4日間も体内に滞留してから排泄されます。それに対してウガンダ人は1日に1キロ近い大便をしました。食べた物が体内に留まる時間は、16〜24時間。早ければその日のうちに、遅くとも翌日にはスッキリと排泄されるのです。

・日本人が1日に食べるヨーグルトの量は、平均およそ20グラム。大さじ1杯程度です。欧米諸国では1日平均60グラムぐらい食べていますから、日本人のヨーグルト摂取量はその3分の1にすぎません。

・あまり息むことなく、ストーン、ストーンと楽に出ることも「良い大便」の条件のひとつ。思い切り息まないと出ないのは、大便が固いからでしょう。それは、大便に水分が少ない証拠です。

・重さは、1日に合計200〜300グラムが理想です。大きさでいうと、バナナ2〜3本分くらいでしょうか。

・大便は、腸内に長く滞留しすぎると水分を失って硬くなり、滞留時間が短すぎると下痢になります。食物繊維をたくさん食べると、その時間がちょうどよくなるので、適度な水分を含んだダイベンになるのです。ですから、たとえば「ヨーグルトをトッピングしたサツマイモ」などは、理想的な大便を出すのにもってこいのメニューだといえるでしょう。

・牛は、牧草しか食べないのに、あれだけの筋肉を付け、乳も出します。それは、第一胃内(ルーメン)にいるルーメン菌が、繊維を分解する酵素を持っているからです。その働きによって、食べた草の食物繊維が分解され、ルーメン菌も増殖します。そのルーメン菌を第一胃内にいる原虫が食べ、そのときに遊離した菌体アミノ酸が第二、第三、第四胃で吸収され、牛のタンパク質になるのです。パプアニューギニア耕地民も、それとほぼ同じでした。(中略)ほとんどサツマイモしか食べないような食生活でも、腸内細菌の力を借りれば、人間は十分なタンパク質を摂取できるのです。

・私は10年間に1日に600ミリリットルの青汁しか飲まずに生きてきた女性の大便を調べたことがあります。それも、ふつうとは違う腸内細菌を持っていました。超嫌気性の培養困難な細菌ばかりで、それがアンモニアを巧みに利用してタンパク質を合成していたのです。



いやー、面白い…。腸内細菌がタンパク質を創り出すという話はワクワクしますね。自然の力はすごい。

どうでもいいですが、著者の本名は「辯野義己(べんのよしみ)」。これ、すごくないですか。便のよしみで大便の研究者になってしまったという、名は体を表す著者です。他にもたくさん本を書かれているので、手に取ってみたいと思います。