興味があって手に取った一冊。色々面白い情報が詰まっていました。



フランスには「父親手帳」がある



日本では「女性手帳」なんていう話が盛り上がっていましたが、フランスでは少子化対策として「父親手帳」を、父親となる男性に配布しているそうで。


これ(父親手帳)はフランスの健康保険期間から、父親になる男性、またはなった男性に送られるもので、2002年、当時のセゴレーヌ・ロワイヤル家族・児童担当大臣が社会党政権下でスタートさせたものである。

(中略)母親は、妊娠が確認された時点から、母子手帳の交付を受けることによって、社会から母親として認知される。それに比べて父親はどうだろう。妊娠出産は母子だけのものではないのに、父親は存在しないかのような扱いだ。父親だって、父親として社会から認知されて当然だ。

こうして2002年、「父親手帳」が誕生した。これはいかにもフランス的エスプリが効いた粋なアイデアだ。








父親手帳の内容



手帳の中には、父親としての心構えや、父親の権利と義務、民法の規定する親子関係についての説明、関係する公共機関のリスト、そして有名無名の父親たちの言葉が、詩の言葉のようにちりばめられているとのこと。

たとえば、行動心理学者のボリス・シリュルニックの言葉。いいこと言ってます。

「もはや父親は、かつてのように子どもたちが畏れると同時に憧れた、遠いところにいる偉大な英雄ではない。愛情と、日常と、そして社会における数々の冒険を、かつてないほど子どもたちと身近に分かち合うことで、私たちは父親になっていくのである」





男性にある種の覚悟をもたらすだけでなく、母となる女性にも、良い影響を与える効果があるようです。

「(パートナーに)父親手帳が送られてきた時、ちょっと考えさせられたわ。妊娠中の自分の身体の変化についていくのが精一杯で、それまで、なんだかジャンを疎外していたかもしれないって。ジャンは子どもの父親なんだし、これはふたりの共同事業なんだから、もっと分かち合って、甘えるところは甘えて、ふたりで乗り切っていこうって、そう思えたの」






父親手帳の社会的背景




著者は社会的な背景として、「父親の復権」があるのではないかとも指摘しています。

現代の父親たちは、道なきところに道をつけてゆかねばならない、まさに新世紀の開拓者なのである。

(中略)1990年代、改めて父親の重要性に気づいたフランス社会は、共同親権にまつわる法律を整備し、急ピッチで父親のいわば権利回復作業を進めた。それは、フェミニズムの勢いでいったん吹き飛ばされてしまった父親の「場所」が再認知される過程だったと言えるだろう。


父親手帳もまた、そうした父親の権利回復手段のひとつだと、著者は解釈しています。なるほど、これ、日本でも同じような話は言えそうですよね。




それほど大きな予算が掛かるわけでもなし、日本でも父親手帳の配布は進めてほしいですね。日本ではまだ今の時代にあった父親像がうまく提示されていない気がします。女性手帳を配るより、よっぽど少子化に役立つのではないでしょうか。

(調べてみたら、高松市も同じように「父子手帳」を配布しているようです。効果や反響を知りたいところ。)









そんなわけで、育児の先進国とも言えるフランスの父親事情がまとまった一冊です。日本社会のヒントを貰えるので、興味がある方はぜひ。6年前の本なので、古本もお手頃になっております。