正統派の若者論「ポストモラトリアム時代の若者たち (社会的排除を超えて)」が面白かったです。ちょっと高価な本ですが、その価値ありですね。





大学生はもはやモラトリアムではない



書中では、若者という期間が「モラトリアム」としての機能を失いつつあり、それによって社会的排除が発生しているという指摘が展開されます。

しかし時代が進むにつれて若者の反抗に対するまなざしは厳しさを増していき、青年期はもはやモラトリアムとしての機能を失ってしまった。若者の反抗は「あってはならないもの」となり、そこに理由が見いだされることはなくなってしまった。





本書の内容とは微妙にズレるんですが、この「モラトリアムの消失」というテーマは、今の大学生たちと話していても感じるものです。特に文系大学生に関しては「在学中の4年間」は、もはや「モラトリアム」ではなくなりつつあるのです。




ぼくが大学生の頃(2005〜2009年)は、景気も比較的よかったので、「就職できないかもしれない」という危機感はほとんどありませんでした。ぼくが在学していた早稲田大学では、のんべんだらりと遊び呆けるのが「スタンダード」であり、インターンなどに精を出すのはかなり例外的なことでした。ぼく自身も4年間、ひたすら図書館に篭って本を読んでました。見事に「意識低い」系です。




しかし、今の大学生たちは、「このままじゃまともに働けないかもしれない」という危機感を、比較的多くの方が抱いています。事実、就活戦線はぼくらの頃より数段厳しいものとなっているので、危機感を抱くのは自然なことでしょう。

危機感を抱いた学生たちは、積極的に専門性、人間性を磨くための活動に力を注ぎます。意識の高い学生が集まるゼミ・授業に参加し、1年生からインターンに打ち込み、社会人との接点をつくる。バイトは単純労働ではなく、できるだけ専門性の高い仕事を志向する。自らスモールビジネスを立ち上げる人も少なくありません。

彼らにとってはもはや大学生という期間はモラトリアムではなく、明確な目的意識(「社会で活躍できる人材になる」)のもと行動する「修業期間」となっています。のんべんだらりと友だちと飲み歩いてカラオケオールして授業サボって単位を落とす…みたいな世界とは無縁の4年間です。




もちろんすべての学生が、こうした危機感と目的意識を持ち合わせているわけではありません。しかし、ぼくが就活したわずか5年前と比べても、明らかに大学生たちの意識は変わっています。





変わらぬ大人たちの眼



一方で、大学生たちを見る大人たちは、時代の変化に気づかずに「大学生のうちに遊んでおけよ!」というアドバイスを相変わらず提供しているようにも思います。

とある大学生が「社会人から遊んでおけって言われたけど、遊んで失敗した場合の責任は自分で取るわけで、ダマされちゃいけないよね」と漏らしていたことを思い出します。

ぼくら大人は新卒学生に「即戦力」を求めているわけで、「遊んでおけ」というのは二枚舌と取られてもおかしくない、無責任かつ的外れなアドバイスです。むしろ「これからの日本社会は厳しいから、何か専門性を身に付けた方がいいよ。うちの会社でちょっと修行する?」なんてアドバイスの方が、数段本人と社会のためになるでしょう。




ただ、大人が相変わらず大学生をモラトリアムだと見なしているというのは、必ずしも悪いことばかりではありません。

大人たちは大学生たちを「遊ぶ猶予がある若者たち」と捉えます。将来のための自己研鑽を積んでいる学生が、そう考える大人の前に立ったとき、大人たちは「大学生"なのに"頑張ってスキルを身につけようとしてすごい」「大学生"なのに"意識高く行動していてえらい。わたしが大学生の頃と大違いだ」と評価します。

「大学生"なのに"」という前置きは、当の大学生にとっては、基本的にプラスに作用するでしょう。職場では「未熟であること」を前提にケアしてくれるようになるでしょうし、高いパフォーマンスを出したら「大学生"なのに"すごい!」と高く評価してくれるようになります。ひとことでいえば「おいしい」ポジションなのです。




現在の状況は、下記のように整理できるでしょう。

大学生:モラトリアムは消失しており、スキルや人間性を高めることに精一杯
大人:相変わらず大学生という期間はモラトリアムだと考えている(…一方で、新卒学生には即戦力を求めている)


時代が進めば社会人の意識は変わり、

大学生:モラトリアムは消失しており、スキルや人間性を高めることに精一杯
大人:モラトリアムは消失しており、スキルや人間性を高めるべきだと考えている。"だから"新卒学生には即戦力を求めている。


という構図になり、大学生という時代は完全にモラトリアムではなくなると思われます。今は過渡期なんでしょう。




ぼくは「大学生なんだからたっぷり遊んでおけよ!」みたいなアドバイスは無責任かつ的外れだと思うので、大学生のみなさまには「社会で通用するスキルや人脈を身につけておくべき」と強く伝えるようにしています。もちろん、そのためのサポートもできる範囲で行っております(OB訪問受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。 nubonba@gmail.com)。





というわけで、書籍の本筋とは微妙に逸れましたが、モラトリアムと若者について考えさせてくれる良著です。ニート、ひきこもりなどの若者支援に興味がある方は、とりあえず必読です。