湯川さんの新刊。電子のみで1,250円と挑戦的ですが、Kindleの有料ランキングに入っているところを見ると、200〜300部はすでに出ていそう。






精神世界の存在を信じる人が増える理由



個人的にたいへん面白かったのが「精神世界の存在を信じる人が増える理由」。何を言っているかわからないかもしれませんが、湯川さんは「精神世界」的な真理観というものが、これからの社会では広がっていくと「未来予測」されています。


「スピリチュアルな考え方が主流になる」と主張すれば否定されるが、「目に見えない世界の存在を信じ直感を大事にする人が増える」という表現にすれば、多くの人は同意してくれるだろう。

経済至上主義、科学万能主義に懐疑的な人が増えるなかで、真理は別のところにあることにうすうす気づいている人は増えているはずだ。

U理論のように、見方によっては完全に精神世界的な真理観に立脚しているような理論や主張が、これからますます増えてくるのだと思う。


以下、湯川さんがそう考える5つの理由について、考察を加えつつご紹介です。




1. 「自分らしく生きる」という価値観の人が増えるから




1つ目の理由は、「自分らしく生きる」という価値観になれば、精神世界的な真理観を持つ可能性が高いと思うから。
親や社会が敷いてくれたレールの上を「大過なく」進んでいく人たちは、物事の因果関係が比較的明確だ。これぐらいの偏差値なのでこの大学に入れた。この大学を卒業したから、この会社に入れるだろう。

(中略)一方で自分らしく生きる価値観を持っている人は、自分で自分の人生を切り開いていく。自分の人生を切り開いていくと、人生には山も谷もあり、予測できないことが次々と起こることが分かってくる。そして課題を1つ1つクリアしていくのだが、クリアしたときに自分の実力以外の何かに助けられることがある。

論理的には説明がつかない何らかの力のおかげで、うまく行っている感じがする。起業家に精神世界的な真理観を持っている人が多いのは、そのためだ。


道なき道を行くときには、失敗も成功も、説明ができないことが出てくる。自分ひとりで成否をコントロールできるなんて、どう考えても傲慢で、世の中には自分では感知しえない未知の力が存在している。

これはぼく自身も創作活動をしていて、しばしば感じることです。よく作家の人は言いますが、たまに「何かが降りてくる」ことってあるんです。ぼく風情の作家でも「自分でこんなこと考えていたのか!」と驚くような言葉がふと出てきたりします。

「何かが降りてくる」ことは再現不可能で、論理的には説明できないものです。エリザベス・ギルバートは「精霊の力」と表現していますね(エリザベス・ギルバートに学ぶ、表現者に付きまとう苦悩を回避する方法)。彼女のプレゼンなんかは、まさに精神世界的です。




2. 直感力、クリエイティビティが重要になるから




2つ目の理由は、直感力、クリエイティビティを高めたい人は、精神世界的真理観にたどり着くことが多いから。

(中略)直感力やクリエイティビティを高めるには、U理論が主張するように柔軟な思想で偏見を排除し、自分の内に秘める怖れを乗り越えて、自分の内なる声に耳を傾けるという方法が有効だと思う。

直感力やクリエイティビティを高めるために、U理論を始め、先に紹介した精神世界的な思想に興味を持つ人が増えるのではないだろうか。


本書で何度か出てくる「U理論」。知っている人は、まさに創造性について探求しようと試みた方がある人でしょう。イノベーションのプロセスに関する理論で、通底する価値観として、かなり「スピリチュアル」っぽさがあります。難解で読み解く&実践するのは苦労しますが、好きな人は好きな本です。ぼくは挫折しました…もう一回読んでみますかね。






3. 他人に対して寛大になるから



3つ目は、自分らしく生きて人生が充実してくると、他人に対しても寛大になり、自分は他人ともつながっている1つの存在であるという真理観を受け入れやすくなる。

自分らしく生きて幸福であるのなら、それぞれが自分らしい人生を歩むので他人と競争する必要がなくなり、他人を蹴落とす必要がなくなる。また自分が幸せだとほかの人にも幸せになってもらいたくなる。

ほかの人の幸福を自分の幸福をとらえる心の余裕が出てくる。そうなると、宇宙が1つという真理観も抵抗なく受け入れられる。


これは直感的にわかる話ですね。心に余裕があれば、「自分=私」というミクロな概念から、たとえば「自分=家族」や「自分=友人」、もっと広げて「自分=まだ見ぬ誰かを含めた、全人類」という、「自分」の拡張に至ります。「人類皆兄弟」を肌感覚で理解できるという境地です。

たとえば、ぼくは子どもができて、自分の範囲が着実に広がっていることを感じています。もしも心に余裕がなければ、「子どもなんて生まなきゃ良かった…」とか後悔していたかもしれません。このまま人間的に成熟していけば、「人類皆兄弟だからな」と割り切り、絶妙なコミュニケーションが取れるようになるのかもしれません(?)。




4. 人類の存続に関わるから



4つ目は、世界や宇宙が1つであるという真理観が広がらない限り、人類に未来はないかもしれないから。

(中略)人は、他人とも宇宙ともつながっているという右脳的な考え方、精神世界的な真理観が広がることでしか、真の問題解決にはつながらないのではないかと思っている。そういう意味で精神世界的な真理観を推し進めようという動きが活発になるのではないかと考えている。


いいかえると、もはや本能的に人々は利他的な振る舞いをするようになる、ということだと考えます。美しいから、倫理的だからそうするのではなく、何よりも「自分たちを守るために」誰かを助ける、という状況ですね。ぼく自身は、まさに「利己=利他」という行動を推し進めようと考えている人間だったりするので、これもよくわかります。




5. 科学が進歩するから



そして5つ目、最後の理由は、究極の未来を考えれば、精神世界的な考え方と科学が融合せざるを得ない、と思うからだ。なぜなら科学も宗教も共に、真理を追究し変化しつづけるものだからだ。

(中略)真理を追究する2つの未知は、別の場所から光の方向に向かってトンネルを掘っているだけ。最後に光にたどり着くころには、1つに融合する運命にある。

(中略)「異次元の存在が実験の結果明らかになった」というような発見でもあれば、精神世界的な真理観を持つ人が増えるのではないかと思う。そして21世紀中に、そのような発見がある可能性は決して低くない。


宇宙論における「人間原理(宇宙が今の構造なのは、人間が存在しているから)」なんかは、科学を突き詰めていったら精神的な境地にたどり着いてしまったという、ある種の極北でしょうね。

科学が進歩することによって、多くの人々が「見えない何か」の存在を受け入れる、これは実に面白い未来です。




ほかにもまだまだ面白い切り口の未来予測がたくさん詰まっています。紙の本と変わらないボリュームなので、1,250円は決して高くないですよ。

恥ずかしながら?書中ではぼくもちらほら登場しています。ありがたいお話です。