この記事、すばらしいですね。困窮者へ食料支援を行うNPO「フードバンク山梨」の取材記事です。

朝日新聞デジタル:(2013参院選)子どもの貧困 貧困家庭に食料を支援する、米山けい子さん




「見えない貧困」問題



フードバンク山梨は、不要な食料品などを集め、困窮者の家庭に届ける仕事をしているNPOです。対象となるのは「あすの食べ物にも困っている」人たち。貧困の度合いは相当高いです。

記事中では、こんなプロフィールの方の話が語られています。

 【ケース(1)】高校生の娘2人を抱える父子家庭。50代前半の父親は建設会社に正社員として勤めていたが、2006年にリストラされた。再就職先も09年に解雇。その後、パートや派遣社員になったが、この3月に打ち切られた。失業保険は8月で切れるが、仕事は見つからない。もし娘たちが大学進学を望んでも「無理」と話す。NPOの食料支援は原則3カ月間だが、延長を求めている。

朝日新聞デジタル:(2013参院選)子どもの貧困 貧困家庭に食料を支援する、米山けい子さん


え?ここまで厳しいなら生活保護受ければいいじゃない、と思いますが、記事によれば「このお宅は生活保護に頼ろうとせず、懸命に仕事を探しておられます」とのこと。いやいや、食うに困ってるくらいなら、受けるべきでは…子どももいるわけですし。

詳しい事情は語られていませんが、「頼ろうとせず」という文言から推測するに、「生活保護は恥ずかしいものだから受給したくない」という価値観をお持ちなのかもしれません。地方に行けば行くほど、この種の恥意識は強いといいますし。強烈な貧困ルポ作品「出会い系のシングルマザー」には「バレない売春で稼ぐ方が、生活保護の差別よりマシ」という強烈な言葉が記されていたことを思い出します。

さらに、フードバンク山梨の米山さんの言葉を紹介しましょう。

「生活保護を受けていれば、行政は把握できます。でも、このお宅は生活保護に頼ろうとせず、懸命に仕事を探しておられますから、外からは貧困が見えない。学校給食のない夏休みに、げっそり痩せてしまう子もいるそうです。ふつうに暮らしている子どもたちのなかに、1日に1食しか食べられない子が紛れ込んでいるんですよ。これは『見えない貧困』です。声を上げられない子どもたちの貧困は、大人たちよりもっと見えにくい


生活保護をはじめとする行政の接点が失われることで、存在しているはずの貧困が「見えない」状態になっているわけです。生活保護を「恥」に仕立て上げたい政治家(片山さつき氏とか)や大衆(主に2chに生息)の方々に、ぜひ理解してほしい観点です。

フードバンク山梨の活動でも、困窮者の発見において行政機関が大きく寄与しています。

私たちの活動を自分で見つけ、直接連絡してきた方は6%にすぎません。あとの94%は公的機関を経由しています。


貧困問題を解決するためには、「困ったらすぐに行政に助けを求める」という文化を形成すべきであることがわかります。この文化を形成するのは容易ではなくて、相変わらず市民の側の「生活保護=恥」意識は根強いですし、行政側の「水際作戦」の問題もあります。

・中部 60代 夫婦
 夫婦で生活困窮。役所では「65歳まではダメな決まりなんです」と言われた。

・北陸 30代 夫婦と子ども2人
 妊娠中の妻と子どもを抱えて失業。家族に頼れず生活保護申請に行くも「働ける」「本気で仕事を探していない」「そんな状態で子どもを産むな」と説教され受理してもらえず。


・九州 40代 男性
 自営業をしていたが現在自己破産手続中。田舎のため新しい仕事をしようにもみつからない。役所に行ったら「自己破産して恥ずかしくないのか」「死ぬ気でがんばれ」と言われて断られた。

生活保護の水際作戦事例を検証する | SYNODOS -シノドス-


「困ったら行政に駆け込む」ことが一般的になった暁には、行政職員、ケースワーカーの負担も高まるので、この点も解決すべき課題となるでしょう。

もちろん、困窮者が自らアクセスできるよう、各々のNPO団体が活動をしっかり社会に認知させることも大切です。が、それはかなり遠回りな話です。効率がいいのは、やはり行政を窓口に介するアプローチでしょう。




ぜひ多くの方に、「外から見えない貧困」、そしてその状況に苦しむ子どもがいることを知ってほしいです。とりあえずこれは紛れもない事実ですので、その事実を知った上で、どう行動するか、一緒に考えていきましょう。

会員登録をすれば記事全文を読むことができます。他にも重要な論点が指摘されているので、ぜひご一読を。

朝日新聞デジタル:(2013参院選)子どもの貧困 貧困家庭に食料を支援する、米山けい子さん




関連記事:「生活保護は恥」というケチ臭い価値観—「社会的強者」とは誰か




関連本はこちらがおすすめ。生活保護問題に関する入門的な一冊です。