あまり本を読んで泣くタイプではないのですが、これはやられました。レビューもものすごい評価になっていますが、激しく納得。すごい本です。読書メモをご共有。

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不可能への挑戦



・農薬を使わずにリンゴを育てる。簡単に言えば、それが男の夢だった。少なくともその時代、実現は100%不可能と考えられていた夢である。

・アダムとイブがエデンの園で食べたのはリンゴということになっているけれど、旧約聖書には善悪を知る木の実と書かれているだけだ。善悪を知る木がいかなるものかはよくわかっていない。正体不明の木の実がリンゴになったのは、英語でもドイツ語でもリンゴということばが、元々は木の実を意味する言葉だったからだ。

・野性のリンゴは一般的に小さくて酸味や渋味が強く、少なくとも現代人にはとても食べられたものではない。

・木村は農薬のかわりに、自分たちがいつも食べている食品で病気を防ぐ方法を探せないかと考えた。それならリンゴを食べる人はもちろん、自分たち農家も安全にリンゴを栽培できる。

・一刻も早く正解に辿り着くために、できるかぎり実験の数を増やしたかった。木村は翌年、二カ所の畑を無農薬にした。さらにその翌年には、思い切って四カ所すべての畑で農薬の使用をやめた。リンゴの収穫はゼロになった。当時はまだ水田があったので完全な無収入ではなかったけれど、一家の収入は限りなくゼロに近づいた。

・木村はユニークな除草法を思い付く。田植えを終えて一週間後の苗が落ち着いた頃合いに、苗の間にタイヤチェーンを引きずって歩くのだ。これを一週間おきに三回から四回繰り返すだけで、水田には雑草がほとんど生えなくなった。

・「あのときは、リンゴの木にお願いして歩いていたの。リンゴの木はどんどん弱りはじめてました。おそらくは、根っこまでダメになっていたんでしょう。ちょっと幹を押しただけで、木がぐらぐら揺れるようになった。これじゃ、枯れてしまうと思ってな。リンゴの木を一本一本、回って頭を下げて歩いた。『無理をさせてごめんなさい。花を咲かせなくても、実をならせなくてもいいから、どうか枯れないでちょうだい』と、リンゴの木に話しかけていました」

・森の木々は、農薬など必要としていないのだ。今までどうして自分は、そのことを不思議に思わなかったのだろう。自然の植物が、農薬の助けなど借りずに育つことを、なぜ不思議に思わなかったのだろう。(中略)雑草が生え放題で、地面は足が沈むくらいふかふかだった。土がまったくの別物だったのだ。(中略)これだ、この土を作ればいい。


・「リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然のなかで、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。そしていつの間にか、自分が栽培している作物も、そういうもんだおと思い込むようになったんだな。農薬を使うことのいちばんの問題は、ほんとうはそこのところにあるんだよ。」

・「人間に出来ることなんて、そんなたいしたことじゃないんだよ。みんなは、木村はよおく頑張ったって言うけどさ、私じゃない、リンゴの木が頑張ったんだよ。これは謙遜なんかではないよ。本気でそう思ってるの。」

・「リンゴの木が、リンゴの木だけでは生きられないようにな、人間もさ、一人で生きているわけではない。私もな、自分一人で苦労しているようなつもりでいたけどよ、周りで支えてくれる人がいなかったら、とてもここまではやって来られなかった。」


・(台風が来たのにも関わらず)木村の畑の被害はきわめて軽かった。他の畑からリンゴの木が吹き飛ばされてきたほど強い風を受けたのに、八割以上のリンゴの果実が枝に残っていたのだ。リンゴの木は揺るぎもしなかった。



花が咲いたシーンは、ほとんど映画を見ているような感覚になります。…と思って調べてみたら、これもう映画になるんですね。公開は今年の6/8とのこと。もう一度話題になりそうな一冊です。





廉価な文庫だけでなく、Kindle版も出ておりますので未読の方はぜひ。