早速読了!面白かったポイントをメモしたのでご共有です。




「メディア野郎」が縦横無尽に語るメディア論



・これからの企業にとって、キャッシュよりも大事になるタレントとアテンション。その奪い合いにおいて重要な役割を果たすツール、それが「メディア」です。例えばB2Bの業界内メディアで、自社の製品やサービス、企業文化などについて、良く書かれれば、特に始まったばかりのスタートアップ企業にとっては、タレント、つまり優秀な人材を獲得する上で非常に有利に働きます。

・皆さんは、世界最大の社内報が何かをご存知でしょうか。それは、発光体が株式会社ではありませんが、米軍が出している機関誌「STARS AND STRIPES(スターズ・アンド・ストライプス)」ではないかと、私は思っています。「スターズ・アンド・ストライプス」はほぼフルスペックの新聞に近い内容で、世界で毎日約30万部の発行です。

・私は組織にとって社内報の機能というものは大変に重要だと思います。なぜならば、強い社内報メディアがあると、組織に属する人間のモチベーション獲得において、大いにレバレッジが効くようになるからです。

・創刊された「Yogini」を見て、あるいは「BRUTUS」のシェアハウス特集を見て、初めて「あ、私もやってみたいかも」と消費者はそこに自分の欲望を発見したわけであり、世が市場やシェアハウス市場が「発見」されたわけです。そして喚起された潜在的な欲望が、製品・サービスへの需要として顕在化され、さらにはメディアが介在することで、供給自体も刺激され、その好循環の結果、ヨガ業界やシェアハウス業界が誕生し成長していくのです。

・私が思うに、メディアの「影響力」「信頼性」「ブランド価値」の本質、あるいは、広報や経営者が一流メディアに無意識のうちにでも感じてしまう「畏怖の念」とは、前述のようなプロセスを経て発生する、予言の自己実現能力に対するものです。論理的にあり得る可能性としては、根も葉もない嘘ですら、自己実現させ、現実にしてしまう能力があるわけですから、有力メディアと言うものは神様みたいな存在ですよね。

・さて、このような文脈を経て考えると、ネット中心でやっているニュースメディア、ブログなどによくみられる「間違った情報を伝えても、事後に訂正して、謝罪をすればいい」という態度には、問題がないとは言えないことがおわかりいただけると思います。

・(略)その可能性とは、具体的には「この記事は、今すぐには読まれないかもしれないが、きっと将来において、グーグルの検索結果を通じ、今ココにはいない誰かに発見されて、その時に、強い興味と熱烈な歓迎を持って読まれるだろう。だから、私はそのことを信じて、今ココにはいないかもしれない誰かのために、良い記事を作ろう」という態度です。

・長期的でしか、大きな改善が期待できないものの代表が(オーガニックなSEOの観点からの)「検索流入」です。(中略)言わば「座布団」のように常にサイトのアクセスを下支えしてくれる存在になりますから、やはり大変重要な項目です。

・その意味では、SEOの重要性などは、純粋に技術的なレイヤーの話に留まりませんし、「グーグルが、文章の文体や構成そのものまでも変えている」とも言えます。デジタル化(つまりはノンリニア化)によって、メディア消費は全体として、どんどん、即物的で刹那的で断片的なものへと変化していっています。しかし、プロのメディア人として、このこと自体を嘆いていても仕方がありません。海に出た漁師が天候の変化に歯向かうようなものです。

・「シブヤ経済新聞」や「ディマンドメディア」のような新しいニュースメディアが出てきた時には、「そんなもの、ジャーナリズムではない」という議論がよく出てきます。しかし、私に言わせれば、これは寿司職人が「回転寿司なんて寿司じゃないね」と言っているレベルの議論に過ぎません。消費者が、寿司業界の内側の「あれは寿司じゃない」と同業者の足を引っ張るような内輪揉めの議論に、興味を持つはずがありません。






という感じで、入門から応用まで、幅広く現代のメディアについて扱った一冊となっています。特にウェブメディアに関しては厚めの記述となっており、類書ではなかなか読めない内容も多数含まれています。




個人的に面白かったのが「グーグルが、文章の文体や構成そのものまでも変えている」という話。僕もまさに、たまに「検索エンジンのための記事」を書いちゃったりもしています(いやー、個人メディアで食ってくためには必要なのです…)。

僕の興味は、コンテンツクリエイター「グーグル病」は一過性のものなのか?という点にあります。ツイッターやフェイスブックのような新しいチャネルは、むしろ検索エンジンに頼らなくても、少なくとも刹那的なトラフィックはもたらしてくれます。SEOがよく施されたNAVERまとめ記事などは、「クッション」として機能し、「グーグルには掛かりにくいけど、価値のあるコンテンツに」対して間接的・中長期的に検索流入をもたらしてくれる可能性もあるでしょう。

僕自身ブログをやっていて思いますが、コンテンツを作るときにSEOを気にしすぎてしまうのが、やや苦痛だったりします。昔は「このネタ書きたいけど、検索エンジンで読まれないから書くのやめておくか…」なんて、ちょっと本末転倒なこともしばしば頭をよぎります。クリエイターが小手先の工夫に終始せずとも、良質なコンテンツが上澄みとして表出するようなメディア空間が、今後実現されると僕は幸せです。




その他、色々とこれからのメディアについて思考が刺激されました。入門にも応用にもふさわしい一冊なので、「メディア」に関心がある方には幅広くおすすめできる一冊です。