プレジデントさんから献本頂いた一冊(感謝です!)。350ページを超える、働き方本の決定版ともいえる書籍。「フリーエージェント社会の到来」などの主張をまた一歩進め、包括的にこれからの働き方について描いています。読書メモをご共有。





難しい決断を見て見ぬ振りをすると訪れる未来



・「いつも時間に追われ続ける未来」。ようこそ、いつも仕事に追われ続ける未来へ!この未来では、すべての活動が細切れになり、私たちは世界中の同僚や取引先とやり取りしながら仕事をし、世界中のライバルと競い合うようになる。いまでも、せわしなく仕事に追われていると感じている人もいるかもしれない。三分以上腰を据えて一つの活動に専念することさえできない人もいるだろう。しかし、2025年には、そんな程度ではすまなくなる。

・「時間に追われることの弊害」。専門技能を磨きにくくなる。観察と学習の機会が失われる。気まぐれと遊びの要素が排除される。

・「孤独にさいなまれる未来」。都市化の進行(2030年には世界の都市人口は50億人に達する)。移住の増加(1965年と比較して、2010年には国境を越えた移住経験者は7,500万人から2.14億人に増加した)。エネルギー価格の上昇(オフィスに通勤せず、在宅で勤務する人が増える)。家族のあり方の変化(核家族が増え、別居と離婚が珍しくなくなる)。大企業や政府に対する不信感。幸福感の減退(豊かな国の人々はえてして、心理学者のフィリップ・ブリックマンとドナルド・キャンベルの表現を借りれば、ハムスターのように、いくら走っても前に進まない「満足感のふみ車」の上を走り続けている)。余暇時間の増加(テレビの視聴時間が増え、社交活動の時間が減る)。

・「繁栄から締め出される未来」。2025年には、人々の経済的運命を決定する要因が変わり、国家内、企業内の格差が広がる。

・一体化が進んだ世界では、ごく一握りの地域が世界経済の牽引役になる。高い能力をもった人材が世界全体に均等に散らばるのではなく、一部の土地に集中する傾向が強まるからだ。リチャード・フロリダは「クリエイティブ都市論」で、そういう世界を「デコボコな世界」と呼んでいる。





第一のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ



・ゼネラリストと会社の間には、社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」があった。(中略)問題は、そうした旧来の終身雇用の「契約」が崩れ始めたことだ。ゼネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている。そうなると、一社限定の知識や人脈と広く浅い技能をもっていても、大して役に立たない。

・高い価値を持つ専門技能の三条件。「その専門技能は価値を生み出せるか?」「その専門技能には希少性があるか?」「その専門技能は、まねされにくいか?」

・カリヨン・ツリー型のキャリアを築く。今後主流になるのは、いくつもの小さな釣り鐘が連なって職業人生を形作る「カリヨン・ツリー型」のキャリアだ。精力的に仕事に打ち込む期間と、長期休業して学業やボランティア活動に専念したり、仕事のペースを落として私生活を優先させたりする期間を交互に経験し、ジグザグ模様を描きながら仕事のエネルギーや技能を高めていくのだ。




第二のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ



・これからやって来るのは、矛盾に満ちた時代だ。テクノロジーの進化とグローバル化の進展により人と人の結びつきが強まる反面、私たちはいま異常に時間に終われ、孤独を味わうようになる。そういう時代に意義を見いだせる職業生活を送るためには、この矛盾を回避する方法を見つけなくてはならない。

・昔は人間関係や人的ネットワークが自然に形成され宇野に任せておけば十分だったが、今後はそれでは十分でなくなる。未来の世界の多くの側面がそうであるように、意識的・主体的な選択と行動が不可欠になる。関心分野を共有する少人数のブレーン集団である「ポッセ」、多様なアイデアの源となる「ビッグアイデア・クラウド」、そして、安らぎと活力を与えてくれる現実世界の友人などで更生される「事故再生のコミュニティ」を築くために、意識的に努力しなくてはならない。





第三のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ



・<第三のシフト>は、未来に向けて求められる三つのシフトの中で最も難しい。やりがいと情熱を感じられ、前向きで充実した経験を味わえる職業生活への転換を成し遂げ、所得と商品を中核に据える職業人生から脱却しなくてはならない。具体的には、自分の前にある選択肢の一つ一つを深く理解し、それぞれの道を選んだ場合に待っている結果を知的に分析した上で、行動に踏み切る勇気をもつ必要がある。

・<第三のシフト>で要求されるのは、仕事に関するふるい約束事を脱却し、未来に押しつぶされないものに転換することだ。多くの人にとって、仕事に関する古い約束事とは、次のようなものだったはずだ。「私が働くのは、給料を受け取るため。その給料を使って、私はものを消費する。そうすることで、私は幸せを感じる」。

・仕事に関する古い約束事の核をなすのは「お金を稼ぐために働く」という考え方だ。しかし未来に向けて、この前提を問い直す必要がある。本当に、仕事の目的は、お金を稼ぐことだけなのか。

・<第三のシフト>を推し進める舞台は整った。産業革命以降、仕事に関する古い約束事のもと、お金と消費が仕事の中核をなしてきたが、それを次のように書き換えることが可能になりつつある。「私が働くのは、充実した経験をするため。それが私の幸せの土台だ」。

・私たち一人ひとりにとっての課題は、明確な意図をもって職業生活を送ることだ。自分がどういう人間なのか、人生でなにを大切にしたいのかをはっきり意識し、自分の前にある選択肢と、それぞれの道を選んだ場合に待っている結果について、深く理解しなくてはならない。そのためには、自分が望まない選択肢にきっぱりノーと言う勇気が必要だ。自分が大切にしたい要素を優先させる職業生活を送れる場を積極的に探す姿勢が必要だ。「普通」でありたいと思うのではなく、ほかの人とは違う一人の個人として自分の生き方に責任をもち、自分を確立していく覚悟が必要だ。





漫然と日々を過ごすと訪れる暗い未来と、主体性をもって職業生活を送ることで得られる明るい未来を対比的に描き出した、刺激的な一冊。

「金のためだけに働くな」「自分の生き方・選択に責任と理解を持て」という「第三のシフト」は著者も述べているとおり、そう簡単な話ではありません。この章を読んで心がグサグサやられる日本人は少なくないかも。僕もところどころ痛かったです。

別記事にて書きたいと思いますが、「カリヨン・ツリー型」キャリアの話も面白いですね。うちももうすぐ子どもが生まれるので、数年は仕事のペースを落とそうと考えています。「定年退職」がどう考えても死語になる以上、ゼロイチではなく、グラデーションのようにキャリアのオン・オフを調整していくことは、一般的になるのでしょう。




というわけで、読み応えのある決定版ともいえる「新しい働き方」本。幅広くおすすめできる内容です。




プレジデント的には奇しくも?「スペンド・シフト」に続く「シフト本」の第二弾だったりしま。こちらも明るいメッセージを含む名著です。