うちの奥さんがえらくおすすめしてきたので読んでみた一冊。
めちゃくちゃ良い内容です。もっと早く出会いたかった。




いい仕事とは?



人間は基本的に、いい仕事をしたい生き物。他の人々に対して「いい影響を持ちたい」という欲求がある。

いい影響とは、その仕事に接した人間が「より生きている感じになる(よりハッキリ存在するようになる)」ことを指す。

・アーティストも、料理人も、仕事に触れた人が、より新鮮で生き生きとした状態になること、存在の輪郭がよりハッキリすることに、喜びを感じるのではないか

・クリエイティブという言葉が指し示しているのも、実は創作物ではなく、この「生まれ直す」ような人間の創造性にあるのではないか。

・眠っているような状態や、生きているのか死んでいるのかわからないような状態ではなく、人が「より生きている」ようになることを助ける働きが、「いい仕事」なのではないか。


西村さんの「いい仕事」の定義。僕はライターなのでこの感覚はすごく納得感があります。いい文章って、自分の生と向き合うような触発を与えますよね。




自分の仕事



・たとえばここに高校生ぐらいの女の子がいて「美容師になりたい」と相談してきたとする。僕ならその彼女に「どんな○○○になりたいの?」という問いを戻す。「美容師になりたい」といっている彼女のなりたいものが、美容師とは限らないから。人を奇麗にする仕事がしたいのかもしれない、人に感謝される仕事をしたいのかもしれない。

職名よりも「どんな」という部分の方が、その人の本体に近いのではないか。なにがしたいということより、それを通じてどんな自分でいたいとか、どう在りたいということの方が、本人の願いの中心に近いのではないか。

・「好きなことを仕事にする」という言葉は、どれほど役に立つのか。

・「自分がお客さんでいられないことはなにか?」という問いを考える。どんなに映画が好きでも、ただそれを観ているだけで満足すれば、お客さん。映画を見て、いてもらってもいられない衝動に駆られることがあれば、それは自分の資産。「好き」よりさらに前の感覚的なもの。


「どんな○○○になりたいの?」は面白い問い。僕もキャリア相談を受けた時に使おうと思います。




働くことは本当に喜びなのか



・本人の実感以外のところから、まるで倫理や徳や常識のように語られる「働くことは喜びである」といった言い切りには同意できない。自分の仕事だと思い込まされるようなファシリテーションが社会に施されているとしたら?

・「やるべきこと/大事だと思うこと」は本人以外の第三者が与えることもできる。

・美しい花を見て、思わず手を伸ばしてしまうように、自分の中から思わず手が伸びて、掴みにいくような衝動。それは思考というより、存在から湧き上がってくる動き。それが成果に至るひとつながりの働きとして他社や社会に差し出される時、その人ならではの、かけがえのない<自分の仕事>になるのではないか。

仕事の憂鬱さを語る人が少しずつ増えている。その原因は、仕事の意味や価値を、根本からは問えない閉塞感に在るのではないか。「この仕事は本当に必要なのか?」ということ。この問いに向き合わなければ、先人が築き上げた仕組みの高度な微調整に、仕事が終始してしまう。それでは働く意味を再構築できないし、救われないのではないか。


・「いったい何のために働いているんだろう?」と問い直す働き手は、社会に増えているのではないか。いや、そんな戸惑いはとうの昔に通過しているのだろうか。

自由とは、自らに由っていることを示す言葉。手足を縛られていないとか、選択肢が十分にあるということではなく、自分の由来を辿ることのできる動きや働きを指す。


本書の白眉は終章。「この仕事は本当に必要なのか?」という問いに根本から向き合うことができていない、というのは痛烈、深刻な提言。

自由についての解釈も素晴らしいですね。本書ではフランクルの「夜と霧」を引用しながら、身体的自由を完全に奪われた状態でも、人間は自由になりうることが指摘されています。




というわけでまれに見る良著でした。これは多くのビジネスパーソンに読んでもらいたい本です。







実は、西村さんの本はこちらの方が有名。未読なのでポチりました。