Online Adさんに紹介されてたフォードのキャンペーン「Fiesta Movement」について。最先端事例として共有すべき、素晴らしいキャンペーンです。
Fiesta Movement Chapter 1 Completed
来年早々にも米国で販売を開始するFiestを、ソーシャルメディアスペース(マイクロサイト、Facebook、YouTube、 Twitter、Flickr、その他)を活用したマーケティングを行った結果、8万人が購買すると手を挙げている。仮にFiestaを1台200万円だとすると総額1,600億円の売り上げにつながることになる。
1㌦の広告費も使わず、若干のマーケティング予算を支出しただけのこのFiest MovementはとてつもないROIをたたき出したことになる。
補足すると、YouTubeで600万PV、Flickerで74万PVを稼ぎ、認知度は60%向上したとのこと。すごい。
この全18ヶ月のキャンペーン、現在チャプター1が終了した段階です。チャプター1では「100 people. 6 months. 600 missions.」というキーワードで、「100人のエージェントに6ヶ月間、来年発売のFiestaを試走してもらい、600のミッションをこなしてもらう」という内容のキャンペーンが行われました。
ミッションの内容はこんな感じ。6つのカテゴリーで600テーマがあります。ごく一部です。
“Travel”
「今までに海を見たことが無い人をFiestaに乗せて、海まで行く」
“Technology”
「パナソニックのタフブックがどれくらいタフか試す」
「クラッシュテストの動画を撮る」
“Style/Design”
「デザイナーのマット・ムーアにFiestaをデザインしてもらう」
“Social Activism”
「障害者のボーリング大会を支援する」
“Adventure”
「目隠しをしてペイント弾を打ち合うゲームをする」
“Entertainment”
「犬にサッカーをさせる」
テーマとしては、誰かを巻き込んで行われる性質のものが多いです。選定されたテーマを見ていくだけでもかなり興味深い。
勿論、動画だけでなく、Flickrでの画像投稿、ブログ記事もあり。当然それらは4000人以上の応募者の中から選ばれた100人のエージェントが、自発的に行っているものです。
エージェントへの金銭的なインセンティブは与えられていません。与えられるのは試乗車と「エージェント」の資格、FiestaMovement.comという集約サイトへの掲載権といった程度のもの。エージェントたちは「評判」のために活動しているのです。実際に彼らの職業はマーケター、女優、歌手、ビデオアーティストなどであり、セルフブランディングを目的にFiesta Movementに参加していると思われます。
エージェントたちのクリエイティビティはなかなかどうして素晴らしく、彼らが積極的にコンテンツを公開することで、見事一つのムーブメントが形成されたようです。メンバーの選定と、彼らが参加しやすい土壌を作ったことが重要な成功要因だと感じます。
この企画に限らず、ソーシャルメディアを用いたキャンペーンを行う上では「Why(なぜ消費者が参加するのか?)」という点が重要です。ソーシャルメディアマーケティングの「5W1H」としてクマムラゴウスケさんがブログで説明している箇所を引用します。
“バイブル” が生まれる前のハナシ – 24
Buzz/Viral 型のアプローチにおいて “Why” を考えるにあたって、もっとも見失われてしまう点、ソレは消費者を情報の受信者としてだけでなく、情報の発信者としても捉えなければならないという前提が欠けているという点だったりする。Buzz/Viral 型のアプローチの成功を決定づける要因は、そのアプローチによって発信された情報を受けた消費者が、いかにして他の消費者に、その情報を伝播させるコトができるか、という点になってくる。ソレを突き詰めて考えていけば、消費者を情報の受信者としてだけではなく情報の発信者としても捉えなければならない、というコトがわかってくるハズだ。
フォードのこのキャンペーンでは、とにかくWhyが良く練られています。フォードブランドによる権威付け、適度な競争のエッセンス、社会貢献、ソーシャルメディアに親和性の高いコンテンツ、多様なテーマと6ヶ月という絶妙な期間…学ぶべきところは多いです。
どうすれば参加してもらえるのか、は勿論のこと「どうすれば参加してもらいやすいのか」という微妙な感覚は、企画の立案者が実際にソーシャルメディアを使いこなしていないと得がたいものです。普通の企業が外部コンサルなどを使わずにソーシャルメディアに取り組むと、どうしてもここら辺が甘くなりがちです。どれだけ良いものでも、共有されにくい時点でダメなのです。その点、ソーシャルメディアの能力を買われ、フォードにヘッドハントされたスコット・モンティは流石に優れています(彼はもともと声の大きいブロガーです)。
今後続くチャプター2ではチームを組んで行動することが求められるようです。現在申し込み期間です。詳細は明らかにされていませんが、同様に参加者がコンテンツを自発的に生成し、WEB上のムーブメントを演出する方針なのでしょう。注目。
さて、この規模・質のマーケティングが日本で行われるのはいつでしょうか。日本ではこの品質のエージェントが集まらないということも考えられますが、同等のことが行えるだけの下地は十分整っていると感じます。インフラはあるので、あとは大ブランドによる戦略的なキャンペーンが行われるかどうか。
妄想ですが、ビデオカメラのキャンペーンなんて面白いですよね。従来のようにブロガーに配るだけの短期間・単発のキャンペーンではなく、しっかりと予算を組んで、中期的な戦略を立てた上で、ビデオカメラを使ってインフルエンサーにコンテンツをアップしてもらう。競争と社会貢献のエッセンスを取り入れながら、多くの人の参加を獲得する…うーん面白いです。
ペプシがスーパーボウルに広告を出稿するのをやめて、ソーシャルメディアを用いたキャンペーンに予算を振り分けるそうです(英文記事へリンク)。大ブランドによる良く準備されたキャンペーンですから、こちらも良い成果を上げるのではないでしょうか。期待です。
2010年を前にして、アメリカではソーシャルメディアマーケティングが成熟期を迎えようとしています。日本はまだまだトライアル期間で、専任部署による統合的・中長期的なマーケティングが行えるレベルには達していません。ソーシャルメディアマーケティングの有効性は既に立証されています。必要なのは適切なローカライズと、事業主のリテラシー向上です。もっともっと日本は力を入れなくてはなりません。来年は「日本にソーシャルメディアの“暴”風を!」という意気込みで一層頑張りたいと思います。