久しぶりに読書メモを。いい本なので未来を知りたい方はぜひ。


フィリップ・コトラーによる資本主義論。

なぜ、世界はこれほどまでに歪なのか――。歴史をひも解いても、資本主義以上に優れたシステムはない。ただし、所得の再配分、雇用問題、環境問題など課題が山積でもある。"近代マーケティングの父"と称される世界的経営学者であり、3人のノーベル賞受賞者に師事した一流経済学者が、資本主義の未来図を描く。

コトラーが資本主義を語る作品。言わずと知れたマーケティングの大家ですね。資本主義の問題点がずらずらと指摘されており、頭がすっきりする一冊です。気になった部分をメモしておきます。

メモ。

以下に、私の考える資本主義の一四の欠点を挙げる。これらの深刻な欠点は、一部だろうが全部だろうが可能な限りの対処をし、是正していかねばならない。

1.資本主義は、根強く残る貧困の解決策をまったく、またはほとんど示せない。

2.資本主義は、所得と資産の不平等を拡大させる。

3.資本主義は、何十億人もの労働者に生活賃金を支払うことができない。

4.資本主義は、自動化の進展に直面し、人間の仕事を十分に確保できなさそうである。

5.資本主義は、企業活動による社会的費用の一部しか彼らに負担させない。

6.資本主義は、規制がなければ環境および天然資源を搾取する。

7.資本主義は、景気循環を生み出し、経済を不安定にする。

8.資本主義は、個人主義と利己心を重視するため、共同体と共有資源を犠牲にする。

9.資本主義は、消費者に多額の借金を促し、結果的に製造業主導型経済から金融主導型経済へとシフトさせる。

10.資本主義は、政治家と企業を一致団結させ、彼らの利益のために大多数の市民の経済的利益を犠牲にする。

11.資本主義は、長期的な投資計画よりも短期的な利益計画にくみする。

12.資本主義は、製品の品質や安全性、広告の真実性、反競争的な行為に対する規制を必要とする。

13.資本主義は、GDPの成長だけを重視しがちになる。

14.資本主義は、市場の方程式に社会的価値と幸福を持ち込む必要性がある。

私の最終目標は、これら一四の欠点それぞれについて、その背後にある力学と原因を詳しく分析し、考えうる解決策を提案することにある。うまくいけば、資本主義はいまより巧みに貧困を減らすことができるだろう。

経済成長と経済発展の違いを端的に示すのがアフリカのアンゴラだ。アンゴラのGDPは二〇%成長したが、同時に貧困もかなり増加した

GDP増加分の多くは、支配階級のエリート層やその一族、仲間内のポケットに流れ込んだ。たとえば、アンゴラ大統領の娘は億万長者だったが、アンゴラのために価値を生み出すことは何一つしなかった。

これと対照的に、ビル・ゲイツはマイクロソフトという会社を興して億万長者何人分もの財産を築いたが、少なくともこの会社は米国経済の発展と働き口の増加に貢献した。エジプトの支配者であったホスニー・ムバラクは、四二〇億ドルと推定される財産を築いた。

また、アフリカ各国の大臣たちは多くが億万長者だ。その金はどこから来たのか? 大半は外国からの援助資金である。経済発展の一助となることを目的とした援助資金のほとんどは、支配階級のエリート層のポケットに収まった

ピュー研究所によれば、米国の中間層は人口の五三%から四四%にまで減ったという。他の研究でも、社会階層の上方流動性が米国で減少しており、いまや英国やフランス、その他の西洋諸国より低いことが明らかになっている。

米国の公共教育の質の悪さと、高等教育の手頃さが失われつつあることを考慮すれば、中間層に上昇するのはますます難しくなりつつある。若者が学校に入学して能力を判断される頃にはすでに、家族と生まれついた経済環境によって人生の針路が決められているのだ。

では、スーパーリッチ層とは何者なのか。

労働経済学者のシルビア・アレグレットの試算によれば、二〇〇七年の「フォーブス400」(米国の長者番付)にランクインしているウォルトン家の六人は、全米国人の下から三〇%に匹敵する純資産を持っているという

これは米国人の下から一億人分ということになる。この六人は、たまたま生まれ落ちた家庭が大当たりだったにすぎず、みずからが手にする富を生み出すようなことは何一つしていない。彼らはたんに、ウォルマートを創業したサム・ウォルトンという億万長者の受益者にすぎないのである。

労働者への報酬に応じて最高幹部の報酬を制限する 二〇一〇年、上場企業のCEOへの報酬額が全社員への報酬額の中央値の何倍になるかを公開するよう求める法案が議会を通過した。その狙いは、株主が報酬慣行について企業間の比較をできるようにすることにあった。オバマ大統領は、企業幹部への高額報酬を抑制するため具体案を示した。企業幹部への報酬は連邦最低賃金と連動させるべきだ、と提案したのだ。

そのうえでピケティは、一〇億ユーロを超える資産については五%から一〇%というさらに重い累進課税をすれば、巨額の財産を解体するのに役立つだろうとしている

これを米国に当てはめると、上から一万六〇〇〇人(〝一%〟のうちのさらに一%)が対象となり、その純資産額は合計で六兆ドルになる。相当な額の税収が生まれることになる。うまくいけば、その税金は大衆の教育と医療の改善に使われるだろう。

ピケティの提案は魅力的だが問題もある。それは本人も認めている。

第一に、資産税によって人々のやる気が削がれてイノベーションが減る、と富裕層は声高に主張するだろう。ただし、ピケティはイノベーションへの悪影響はないと考えている。

第二に、この提案は決して発議されることもなければ、議会で成立することもないだろう。なぜなら政治家は、次回の選挙に当選するために富裕層に大いに頼っているからだ

第三に、富裕層はピケティの資産税が存在しないどこかの国に資産を移すだろう(二・五%の資産税があるスペインには資産を移さないはずだ)。これを防ぐにはすべての国が資産税を成立させなければならないが、それを期待するのは明らかに非現実的である。

ピケティは現実主義者だが、拡大する富の不平等を抑制する他の手段と比較検討する叩き台として、この提案をしたのだ。

ここで重要な問題は、はたして機械では処理できないほど頭を使う仕事が存在するのかどうか、そして、そのような仕事が十分にあるかどうかである。もう一つ重要な問題は、消えゆく仕事を上回るペースで新しいタイプの仕事を創り出せるかどうかである

新しいビジネスは、それ以前よりもはるかに少ない社員しか雇用しない傾向がある。写真共有サイトのインスタグラムは二〇一二年に一〇億ドルでフェイスブックに買収されたが、三〇〇〇万人の顧客を持つ同社の社員はわずか一三人だ。一方、絶頂期には一四万五〇〇〇人を雇用したコダックは、デジタル革命の犠牲となり、最後には破産申請に追い込まれた。

ワークシェアをする。二〇〇〇年二月にフランスが行ったように、週の平均労働時間を三五時間に減らす。なすべき仕事量が変わらないと仮定すれば、企業はより多くの社員を雇う必要が出てくるはずだ。

ただし、実際にはフランスではそうならなかった。主な理由として、フランスではレイオフが困難なことを企業が知っているため、多くの社員を抱えて立ち往生したくないと考えたからだ。

フランスの場合、それまでと同じ社員数のまま生産性を上げるという方法で乗り切った。 「一日一一時間で週に三日働く」という働き方を確立する。そうすれば家族と過ごす時間が増えるし、娯楽や自己能力開発の商品・サービスの市場拡大にもなる。

このアイデアは世界で二番目の金持ちであるメキシコの大富豪カルロス・スリムが提唱しており、似たような考え方はグーグルのラリー・ペイジも提案している。 無給の長期休暇を充実させる。ハネウェルはこれを実施している。 職業訓練と再訓練のプログラムを増やす。

ブータンの生み出したこの理論をさらに精緻化しようと取り組んでいる研究者も複数いる。二〇〇六年、国際経営研究所の所長メッド・ジョーンズは、次の七つの分野でウェルネス(健康さ)を調査することを提案した。

1.経済のウェルネス:消費者信用残高、平均所得に対する消費者物価指数の割合、所得配分などの経済指標を用いた統計的手段および直接調査によって計測。

2.環境のウェルネス:汚染、騒音、交通量など環境面の指標を用いた統計的手段および直接調査によって計測。

3.肉体のウェルネス:重病や太りすぎの人数など、肉体面の健康指標を用いた統計的手段によって計測。

4.精神のウェルネス:抗うつ薬の使用量や精神療法の患者数の増減など、精神面の指標を用いた統計的手段および直接調査によって計測。

5.職場のウェルネス:失業の申告数や転職、職場での苦情、訴訟の件数など、労働面の指標を用いた統計的手段および直接調査によって計測。

6.社会のウェルネス:差別、安全、離婚率、家庭内不和の申し立て、家族間の訴訟、公的な訴訟、犯罪率など、社会的指標を用いた統計的手段および直接調査によって計測。

7.政治のウェルネス:地方自治体の権限、個人の自由度、外国との紛争など、政治面の指標を用いた統計的手段および直接調査によって計測。


資本主義に未来はある。

コトラーが指摘する資本主義の問題点は、いずれも納得感があるものです。広がる格差と貧困にどのように立ち向かうか。ヒント溢れる一冊なのでぜひポチッと。