ビッグイシュー基金が「『若者の住宅問題』-住宅政策提案書[調査編]-」という素晴らしい調査レポートを発行しています。本レポートより、若者が直面している「住まいの貧困」の現状をダイジェストでお伝えします。


「未婚で年収200万円以下の若者」の8割は親の実家に住んでいる

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まずは本調査の概要から。

(調査の概要)

  1. 首都圏(東京都、埼玉・千葉・神奈川県)と関西圏(京都・大阪府、兵庫・奈良県)に住む
  2. 20 ~ 39 歳、
  3. 未婚
  4. 年収 200 万円未満の個人
を対象とし、居住実態と生活状況に関するアンケート調査を 2014 年8月に実施した。学生は、調査対象に含めていない。

回答者の選定では、首都・関西圏の別、性別、年齢が偏らないように留意した。調査の実施は、イプソス株式会社に委託し、同社が利用可能なインターネット調査パネルから対象者を選び、1,767人から回答を得た。

一言で言うと「都市部に住む低所得かつ未婚の若者」の住まいに関する調査ということです。

この調査でまず印象的なのは、「親との同居率」。実に約8割の若者が、親と同居していることがわかりました。

調査結果によると、親同居の割合は 77.4%におよぶ。国勢調査(2010 年)の結果から、未婚の若者一般(首都・関西圏の 20 ~ 39 歳)に関し、親同居率をみると、61.9%であった。

本調査の回答者では、親同居の割合がきわだって高く、それは、経済力がより低いために、親もとに住むことで生活を維持しようとする人たちが多いことを示唆する

住居費負担が高すぎるために、家を出ることができないわけですね。ちなみに、ぼくが住む高知市などでも、こうした話はよく耳にします。調査は都市部の若者を対象にしたものですが、雇用環境が十全でない地方においても、状況は同じだと思われます。


少子化との関係も示唆?

次に興味深いのは結婚に関する意向。調査対象の若者たちは結婚への意向が低く出ています。

「結婚したいし、結婚できると思う」は 6.6%と少なく、「結婚の予定がある」は 2.5%とほぼ皆無であった。回答者の大半は、結婚の予定をもたず、結婚を希望するかどうかにかかわらず、結婚の可能性は低いと考えている。

(中略)経済力が低く、結婚指向が弱いために、親もとに住み続け、親同居の継続が結婚指向をさらに弱める、というサイクルが生まれている可能性がある。

調査では語られていませんが、これは少子化との関係とも示唆していると思います。わかりやすくいえば、一人暮らしをしている場合、割と気軽に将来のパートナーを家に連れ込むことができ、そのまま同棲できるわけです。かくいうぼく自身も、一人暮らしをきっかけに妻と同棲を始め、結婚、そして出産に至りました。若者たちに親の家を出てもらうことは、少子化対策としても有効だとぼくは考えています。


親の家を出たがらない若者たち

次に「転居志向」についての調査。こちらも興味深いです。

「親持ち家」は、若者一般の多くにとっては、“出ていくべき場所”である。

しかし、「親持ち家」に住む回答者の定住指向は強く、「(親の家に)住み続けたい」が 70.4%におよぶ。上述のように、低所得の若者の多くは、「変化」を計画する条件をもたず、親の家の“内”側で「安定」した状態にある。その“外”には「不安定」な世界が待っている。彼らにとって、「親持ち家」は、“出ていくべき場所”であるどころか、“とどまるべき場所”になる。

低所得の若者にとっては「親の持ち家」がセーフティネットとして機能してしまっている、ということなのでしょう。少しひねった言い方をすれば、「親の持ち家」は「社会性」を帯び始めているとも言えます。子ども世代は住居費負担の軽減に、親・祖父母世代は介護人員・世帯収入の確保として、「親の持ち家」を活用し始めているのではないかと思います。


親と別居している若者の13.5%はホームレス経験あり

ホームレス状態を経験したことがあるか、という問い。こちらもなかなかショッキングです。

低所得層のなかで、ホームレス状態の経験が不均等に生じている点をみる必要がある。

定まった住居をもたない状況の経験者は、親同居のグループでの 4.6%に比べ、親別居のグループでは 13.5%とより多く、また、住宅タイプ別にみると、民営借家のアパートに住む人たちにおいて、11.2%と相対的に高い比率を示す。

さらに「社宅・その他」では、ホームレス状態の経験者が 23.4%におよぶ。この「社宅・その他」は、社宅・官舎および独身寮に加え、住み込み、間借り・下宿、シェアハウスなどの不安定な居住形態を含み、そうした不安定な場所に住んでいる人たちの多くが定まった住居をもたない状態を経験したとみられる。

親の持ち家を頼れない場合、低所得の若者は、とたんに不安定な状態に放り出されるということがわかると思います。「漫画喫茶」「脱法ハウス」などはそうした若者を吸い上げる装置として機能しているのでしょうね。


親の「持ち家頼り」という時限爆弾

調査終盤のメッセージも痛烈。

本調査では、未婚・低所得の若者の住宅確保のために、「親持ち家」が大きな役割をはたしている実態が明らかになった。そのストックの保全に対する支援が新たな課題になる可能性がある。

親の家の「安定」は必ずしも持続しない。年を経るにともない、住宅の物的劣化が進むにもかかわらず、高齢化する親と低収入の子は、修繕のための資力をもっていない。持ち家ストックの保全は、低所得者の住む場所の維持につながる。私有財産である持ち家に対する公的支援の根拠は、容易には成立しない。

しかし、「親持ち家」という“私的”な空間は、低収入の若者に住む場所を供給する点において、“社会的”な役割をはたしている。親の家が劣化し、そこでの不安定就労者の保護が困難になれば、政府は低所得者向け住宅供給を拡大する必要に迫られる

自立サポートセンター・もやいの稲葉剛さんは、本調査の発表記者会見で、「親の持ち家頼り」の現状を、「日本社会における時限爆弾」という表現でなぞらえました。早期に住宅政策の方向性を変えていく必要があるといえるでしょう。

稲葉さんは、レポートのなかでもメッセージを発しています。

昨年、生活保護法が 63 年ぶりに抜本改正され、扶養義務者への圧力が強化された。近年、社会保障費削減の流れの中で、「家族による支えあい」を制度の中に組み込んでいこうという動きが強まりつつある。

私はこうした政治の動きを「絆原理主義」と呼んで批判してきた。公的な支援が必要とされる領域において、「公助」を「支えあい」で代替させようとするのは、生存権保障の後退であり、国による責任逃れに他ならないからである。

今回のアンケート結果は、むしろ「家族による支えあい」に依存し過ぎた日本社会の歪みを映し出しているように私には思える。

これ以上、「支えあい」を強調するのは、危険すぎる道である。家族による支えが「ホームレス化」のリスクを回避してくれている間に、打つべき手はたくさんあるはずだ。


レポートのダウンロードはこちらから

非常に興味深い調査ですので、ぜひご一読ください。以下のサイトから無料でダウンロードできます。

『若者の住宅問題』PDF版をアップロードしました


また、2月8日は東京で本調査に関するシンポジウムが開催されます。こちらも有意義な内容となること請け合いなので、関心がある方はぜひご参加を。

『市民が考える若者の住宅問題』『若者の住宅問題』―住宅政策提案書[調査編]―発表シンポジウムのご案内


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