移住前、名古屋で「福祉理美容」を推進している「全国福祉理美容師養成協会(通称ふくりび)」の赤木勝幸さん、岩岡ひとみさんにお話を伺いました。固い名前の団体ですが、めっちゃ素敵なことをやられています。どうぞお楽しみください。


「福祉理美容」って何?

その前に一般的知識として、「福祉理美容」をざっくり説明しておきましょう。

もっともイメージしやすいのは、介護施設や自宅などに訪問して美容的なサービスを提供する「訪問理美容」だと思います。

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出かけることが難しい高齢者や障害者の方を対象に、病院やご自宅、介護施設へ訪問して、理美容サービスを提供しています。

訪問理美容事業、福祉理美容師養成事業 NPOふくりび

「福祉理美容」の概念は広く、訪問理美容以外にも、たとえば彼らが開発している「いけてる医療用ウィッグ」なんかも福祉理美容の範疇に入ります。

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他には、就労支援の一環として、障害者の方々向けの身だしなみワークショップなんかも展開しています。これも福祉理美容の

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また違う切り口では、介護職員、看護師向けに「エンゼルメイク(いわゆる死化粧)」の共同研究も行っています。これもまた福祉理美容の一環なわけですね。

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というわけで、そんな「福祉理美容」を専門にしているお二人に話を伺ったわけです。あんまり表に出てこない方々なので、貴重なインタビューとなっております!


美容師は、お客様の人生に寄り添う仕事

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イケダ:本日はお時間ありがとうございます!名古屋からはるばる来ていただいて…。ずっとお話聞きたかったんですよ。

岩岡:えっ、ホントですか?もともとご存知だったんですね。

イケダ:え?ふくりびって有名じゃないですか?NPO業界だと。

岩岡:うーん、どうなんでしょう、地味にやりつづけてきたので…。もともとは、彼(赤木さん)が有限会社でやっていた訪問理美容から始まっていて、7年前にこの法人を作りました。

一見派手そうにみえますが、コアは2人しかいないんです。プロジェクトベースでアウトソーシングするかたちで運営しています。

訪問理美容自体は、彼が19年前に始めました。当時は介護保険法もなかったですし、「それ、お金儲かるの?」と言われつづけてきました。「これは絶対大事でしょ」と、誰も見向きもしない活動でしたが、そこから始まっています。

今は状況が変わりつつあって、業界的にも「福祉美容が大事だよね」ということになりつつあります。業界紙でも、今年の3月にはじめて福祉美容特集が組まれていました。で、この号は創刊以来初めての売り切れだったらしいんですよ。田舎でこそこそやっていたことが、少しずつ広がりつつある感じですね。

赤木:スタンダードになればいいと思ってやってきたので、それはありがたいな、と思っています。私たちが始めた頃は「福祉理美容」とか「訪問理美容」とか、そういう考え方が広がっていなかったので、だいぶ一般化してきたかな、と。

岩岡:介護とか福祉の業界も、理美容の視点が少しずつ根付きつつあります。まず最初のケアというと、どうしても衣食住になってしまうのですが、やっぱりオシャレはしたいし、モテたいわけですね。それは老若男女、障害の有無を問わず持っている欲求です。

あとは自己表現をしにくい人たち、たとえば障害があったり、認知症だったり、食べ物が制限されていたり…理美容というのは、そういう方々にとっても、やろうと思えば最後までなんとかアプローチできる、関わってあげられる部分なんですね。

口紅を塗ったり、髪をとかしたり。そういう関わり方は、満足感も高い傾向があります。周囲にいらっしゃる方々にとっても、やっぱり、自分の大事な人がぼろぼろになってしまうと罪悪感を抱いてしまうことがあるんです。

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赤木:19年お店をやりながら、たくさんのお客様を見てきました。色々な事情でサロンに来れなくなってしまった方、「すみません、すみません」と謝ってしまう障害者の親御さんとか。障害があったり、高齢だったりすると、平等に扱ってもらえないんですね。

うちのお客様に、40代半ばくらいに病気でピック病(若年性認知症)という病気になってしまった方がいらっしゃいました。その人は病気になってから、毎日美容院にいって、毎日コンビニでタバコを買って、毎日お友達のところにお茶を飲みに行くようになりました。そういう特性がある病気なんですね。

やっぱり、うちに毎日いらっしゃってくださるので、毎日1ミリだけ髪を切るというのを繰り返していました。で、10円を毎日入れてもらうようにしました。結局、3ヶ月くらい毎日来ていただいて。ごくごく単純に、地域の中にそういう場所があってもいいな、と思うんです。

他には、がんで亡くなってしまったお客様なんですが、お亡くなりになってから家族によばれて、「生前お世話になった赤木さんにメイクとカットをお願いしたい」、と言ってくださいました。そのときは、子どもさんと一緒にメイクをさせていただきました。そんな風に、地域から気軽に声をかけてもらうこともあって…僕たち美容師ができることは本来たくさんあると思うんです。

イケダ:なるほど!すごい、美容師って超素敵じゃないですか。そういう可能性がある職業なんですね。


ブラックな実態も:若い美容師が疲弊している

岩岡:「生涯顧客」という言葉がありますが、お客様が年を取っても、病気になっても、亡くなってからもお見送りできる関係性をつくっていきたいということですね。お客さんに障害があってもサロンに連れて来れる。家にも訪問できる。そういう理美容がいいじゃないかと。

今だと、医療用のカツラって「こそこそ買う」ものになってしまっていて、医療用ウィッグを付けるようになると、今まで行っていた美容室に行けなくなるんですよ。それって、変な話です。

お客様は「自分のことを大事に思ってくれるお店に通いたい」と思っているのに、店舗側はクーポンサイトに踊らされて一見さん重視になってしまいがちです。間違ったマーケティングの結果、スタッフも定着しない、やりがいも感じることができなくて…という状況にあるんだと思います。

本来は、お客様の人生に寄り添うことができる仕事であるはずなのに、美容師自身もその価値がわかっていない、お客様も美容師にそこまで頼れない、という感じですね。

赤木:サロンの経営という点では、若い子とかが大きいサロンに入って「訪問理美容やりたい、お客様に医療用ウィッグをやりたい」といってもオーナーに断られてしまうことがあるようです。

イケダ:美容室の経営者も、理美容という仕事の可能性にいまいち気付いていないわけですか。

岩岡:そうなんです。昔ながらオーナーさんは、すっごくわかりやすく言うとイケイケゴーゴーで、ガンガン儲けて外車に乗って、その裏では搾取して、みたいなモデルだったんですね。

でも、今業界に入ってくる子は、もっと堅実で、人のために仕事をしていきたいと考える真面目な子が多いんです。で、オーナーとの価値観の違いにがっかりしてやめてしまうんです。上の世代だけがバブルを引きずっている感じがありますね。

赤木:一部のオーナーたちは、ステータスが「ファッション雑誌に載ること」なんですよね。訪問理美容やっている方がかっこいいのに、と思いますけれど…。

岩岡:うちは理美容という仕事を、別の視点で捉えています。理美容は言語の壁も越えますし、意外と世界的にも共通する部分があります。私たちは海外でもプログラムを実施していますが、日本の美容技術は世界トップレベルなので、どこの国でも日本人の技術は通用します。高付加価値なのにもかかわらず、なぜか賃金が低くて、労働条件も悪くて。

イケダ:うーん…もったいない状況ですね。若くて志のある人たちが、疲弊していくわけですか。

赤木:働き方とかでいうと、美容師さんって、社会保険に入っていない人も多いんですよ。

イケダ:え?普通に勤めているのに?

岩岡:いわゆる「ブラック企業」ですね。結局、中小が多いので払えないんですよね。だから離職率が高くて、「こんな店さっさとやめてやる」と思いながら働きつづけて、お互いにいやーな感じになっていくわけです。変な構造になってしまっています。反面、素敵な業界なので、そういった業界構造を変えていけたらいいな、と思っています。


業界最安値の医療用ウィッグでイノベーションを起こす

イケダ:この医療用ウィッグの事業、すごい面白いですよね。クラウドファンディングも始まりました(医療用ウィッグ写真集を発行し、全国のがん拠点病院へ寄贈したい)。これ、かなりお安く高品質なんですね。

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岩岡:大手のメーカーさんだと15〜30万円くらいしますね。ウィッグの違いは髪質なんです。人毛か人工毛で値段が変わります。15万くらいのものだと、どうしても髪質が悪かったりしますね。

イケダ:それが6万円から買えるわけですね。コストイノベーションですねぇ。

岩岡:商品もパンフレットも色々取り寄せましたが、結局のところ、広告費とか場所代なんですよ。当たり前といえば当たり前で、デパートに出店していたら高いはずじゃないですか。医療用かつらって、じっくり比較して購入する商品じゃないんですよ。病気で弱っていて焦っていて、そういう中で買ってしまう。だから、コストが高かったという構造があるんです。そうやって売ってきた業界なんです。

イケダ:なるほど…。

岩岡:必要になるときまで、ウィッグの良い悪いなんてわからないじゃないですか。本来は、病気になる前からウィッグについて知っていたり、近くにいる髪のプロ、つまり美容師が知っているのがいいわけです。

なので、私たちのウィッグは美容室で買えるように、そこで切れるようにしています。かっこよくて安価で高品質なウィッグを、普通の美容室で普通に売ろうというコンセプトなんです。

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「個室じゃないと医療用ウィッグは切れない」という考え方もあるようですが、医療用ウィッグは髪が抜ける前に探す人が多いので、個室にこだわる必要はありません。

また、小さい美容室だったら営業時間外に対応することもできます。お客様がいたとしても、トイレで試着して出てきて、そのまま切ってもらえばいいわけです。個室がなくても、医療用ウィッグは対応できるんです。ですが、多くの美容師さんはできないと思われているんです。病気のことがわからないとウィッグを切っちゃいけない、と思い込んでいたり。

イケダ:医療用ウィッグはニーズはあれど、課題が多い商品なんですね。

岩岡:ニーズという点でいうと、乳がん、子宮がんの薬は、脱毛の副作用が一般的に強いんですよね。生存率が高いがんなので、病後も働きつづけるケースが多いんです。そういうとき、ウィッグが必要になってきます。髪がないと、自信もなくなってしまうんです。

私も昔から髪が抜けたらどうしようと思っていたんです。ちょっと極端ですが、「抗がん剤の副作用で髪が抜けるくらいなら、いっそそのまま死にたい」という変な美徳を持っていたんです。それくらい嫌なんです。

仕事のなかで色々な医療用ウィッグかぶりましたが「これはバレるでしょ」というものが多いんです。毛量や生え方が不自然で…。かつらだということがバレると、病気だということもバレてしまうじゃないですか。医療用ウィッグは、誰にもバレないくらい自然でなきゃいけないんです。

高いし、ダサい。バレてしまう。これではいけないと思って、このウィッグを作り始めました。

イケダ:超熱い!これはイノベーションですねぇ。具体的にはどういう工夫があるんですか?

赤木:裏地も毛量も調節して、自然に見えるように工夫しています。頭頂部も自然です。

岩岡:販売でいうと、美容室が在庫を持たなくて良いように2種類にしています。

イケダ:おぉ、2種類しかないんですか。

岩岡:今までのウィッグは、メーカー主導で美容室を加盟店にしていきまいた。構造でいうと、メーカーが強いんですね。でも、ウィッグは化学繊維が入ってくると染めることができないんです。そうすると、たとえば「10色ラインナップ」で在庫を置かないといけないんです。導入のハードルがあるんですね。

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岩岡:うちのウィッグは人毛なので、この間の色を染めることができます。パーマもかけられます。2種類のみでも、フレキシブルに対応できます。

この方が、美容師さんも面白いじゃないですか。普通のメーカーのウィッグは、最初から形がきまっているんですね。これはイチからつくるので、美容師の腕次第でどんな髪型にもなるんです。自分がいつも通っているお店があれば、髪を失ったとしても、前の髪型を再現することができます。

イケダ:すばらしいです。ここまでやって、安いんですもんねぇ。

岩岡:闘病中の30代、40代はお金も必要なのでなるべく安く、自然なものを提供したいです。15万円くらいでやっているサロン、メーカーさんが多いんですが、質は必ずしもよくなくて…。

私たちは、普通にウィッグを売りたいんです。当たり前に買って、当たり前に切ってもらう。かつらになっても、誰も心配しなくていい世の中になるわけです。そこの悩みをなくしてあげたいんです。もう商品もありますし、美容室というインフラもあるので、あとは広げていく段階です。

イケダ:普及していくでしょうね、これは。クラウドファンディングも成功を祈ってます!


美容室は福祉のインフラになりえる

イケダ:今まさに話がありましたが、美容室というインフラは面白いですね。この間、新潟の山古志に行ったんですが、そこにも美容室はありました。どんな集落にも美容室ってあるんじゃないかと。

岩岡:まさに、美容室はインフラとしての可能性があります。福祉という視点から見ると、美容室の価値が見えてきます。

良い大人が毎月来る場所、しかも1時間くらい話すわけです。飲食店だって定期的じゃないじゃないですか。全国一律、田舎まであって、だいたい個人事業主なので、何かをやろうと思ったらすぐできます。地域の人たちとお話をして、住民たちの情報を得ることができます。たわいもない話をするなかで、必要なニーズを拾い上げることもできると思います。

イケダ:面白い!雑談するなかで「お隣さんが最近困っているようなのよ…」とか、支援を必要としているような世帯の情報も届いたり。

赤木:普通の理容室さんとか美容室で、NPOを案内してもいいですね。

インフラという話だと、うちのお店も10年近くイルミネーションをやっています。地元では名物おじさんになっています。65歳になったら地域の「イルミネーションおじさん」になっていこうと思っています(笑)

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何が言いたいかというと、地元の人はやっぱりうちのお店を知ってくれています。だからこそ、うちが福祉のことをやっていくというのは、意味があると思うんです。

イケダ:めっちゃエキサイティングな話です。美容師、美容室にそんな可能性があるとは。


美容師のキャリアは「開業」くらいしかゴールがない

岩岡:美容業界のキャリアパスって「お店を出す」しかゴールがないような感じなんですよね。安月給で先が見えない、新しい子が入ってくるけど教えないといけない、遅くまで帰れない…せめて独立しようぜ、と。

美容師は、免許があるので比較的お金が借りやすいんですね。でも、開業で借金背負ったら当然大変じゃないんですか。給与計算とか人事とか、そういったマネジメントを苦手なまま始めちゃって、借金を返せなくなることも多いんです。

30代くらいで独立しなかったらもう未来はない、と言われているんですよ。30すぎると転職もしにくくて、「お客さん持っていないならいらないよ」と言われてしまったり。年を取ると、美容師としての価値が下がってきてしまったり…。

イケダ:若い人たちは、多分気付いていないんでしょうね。

岩岡:社会に出たあとに気付きますね。

赤木:若い子たちは社会貢献意識が高いんですが、会社ではできないんですよね。

岩岡:たとえば福祉理美容がやりたい人は、週に1日は介護施設で働けるようにするとか、多様な働き方を認めていかないと、結局人材が流出していってしまうんです。このままだと、美容師という仕事自体、魅力がないものになってしまいます。

赤木:東北の震災が起こったときに、美容師を集めてボランティアバスツアーを開催したのですが、参加した若い子たちは「美容師を続けていてよかった」と書いていましたね。

岩岡:美容師になる人たちというのは、エモーショナルな人たちが多い気がします。損得だけで動いているというより、お客様に喜んでほしい、ありがとうと言われたい、そういう人が多いので、うまくいけば広がるんですよね。

イケダ:なんとももったいない。みなさんはそこを変えようとしているわけですね。


オール1でも中卒でも社会に貢献できる仕事

イケダ:すばらしいお話が伺えました。美容師の方々に読んでもらいたいですね。

赤木:美容師というのは、極論、オール1でも中卒でも社会貢献できるし、自分の得意なことを通して社会に関わっていけて、自分らしく生涯働くことができます。僕なんかも中卒です。

イケダ:そうなんですか!

岩岡:私は子育てをしながらこういう仕事をしていて、毎日遊んでいるといえば毎日遊びで、毎日仕事といえば毎日仕事という感じです。すごい面白いし、毎日ワクワクしています。

我々よりも若い世代にチャンスをつくって、譲っていくというのは最初から意識しています。切り拓いたらそこはもう若者に譲って、違うところを開拓したいですね。

私の子どもはもう18歳で一緒に働いています。早く子どもを産んだ分だけ、娘たちの世代、さらにその子どもの世代ために新しい仕組みを作っていこうと思っています。


クラウドファンディングを支援!

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350万円とたいへんチャレンジングな金額でクラウドファンディングに挑戦しています。医療用ウィッグの普及啓蒙活動の一環として、写真集を制作して寄贈するとのこと。共感する方はぜひご支援を!

できあがったヘアカタログ&髪・肌・爪の悩みサポートブック(写真集)は、全国397箇所のがん診療連携拠点病院を中心に、多くのがん患者さんに情報が届くように、500病院以上へ寄贈したいと考えています。

患者さんの「キレイ」をサポートするために、現在も医師や看護師、その他の専門家と連携して活動を進めていますが、このプロジェクトを通して、もっとたくさんの方々と繋がって行きたいと考えています。そのために、今できることとして今回の企画を提案します。応援していただいている方のメッセージです。

医療用ウィッグ写真集を発行し、全国のがん拠点病院へ寄贈したい(岩岡ひとみ(NPOふくりび)) - READYFOR?


訪問理美容、医療用ウィッグのNPO法人ふくりび



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