これ、すごい文章ですね…。軽く引用して紹介したいと思います。

「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開1(篠田博之)
「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開2(篠田博之)


「人生格差犯罪」

黙って自分一人で勝手に自殺しておくべきだったのです。その決行を考えている時期に供述調書にある自分が「手に入れたくて手に入れられなかったもの」を全て持っている「黒子のバスケ」の作者の藤巻忠俊氏のことを知り、人生があまりに違い過ぎると愕然とし、この巨大な相手にせめてもの一太刀を浴びせてやりたいと思ってしまったのです。自分はこの事件の犯罪類型を「人生格差犯罪」と命名していました。

しかし「生まれたときから罰を受けている」という感覚はとてもよく分かるのです。自分としてはその罰として誰かを愛することも、努力することも、好きなものを好きになることも、自由に生きることも、自立して生きることも許されなかったという感覚なのです。

人生の行き詰まりがいよいよ明確化した年齢になって、自分に対して理不尽な罰を科した「何か」に復讐を遂げて、その後に自分の人生を終わらせたいと無意識に考えていたのです。ただ「何か」の正体が見当もつかず、仕方なく自殺だけをしようと考えていた時に、その「何か」の代わりになるものが見つかってしまったのです。それが「黒子のバスケ」の作者の藤巻氏だったのです。


「出所後にすぐ自殺します」

自分は昨年の12月15日に逮捕されて、生まれて初めて手錠をされました。しかし全くショックはありませんでした。自分と致しましては、「いじめっ子と両親によってはめられていた見えない手錠が具現化しただけだ」という印象でした。

取り調べで刑事さんや検事さんから「社会復帰」という言葉が出て来たことがあります。自分は先ほど申し上げました通りに刑務所から出所後にすぐ自殺しますので、社会復帰はしません。


「無敵の人」

いわゆる「負け組」に属する人間が、成功者に対する妬みを動機に犯罪に走るという類型の事件は、ひょっとしたら今後の日本で頻発するかもしれません。グローバル経済体制の拡大により、一億総中流の意識が崩壊し、国民の間の格差が明確化して久しい昨今です。

自分のように人間関係も社会的地位もなく、失うものが何もないから罪を犯すことに心理的抵抗のない人間を「無敵の人」とネットスラングでは表現します。これからの日本社会はこの「無敵の人」が増えこそすれ減りはしません。日本社会はこの「無敵の人」とどう向き合うべきかを真剣に考えるべきです。また「無敵の人」の犯罪者に対する効果的な処罰方法を刑事司法行政は真剣に考えるべきです。


「人生格差犯罪」にどう向き合うか

ざっくりと引用しましたが、お時間がある方はぜひ全文を読んでいただきたいです。文章としてだけ見れば、良くも悪くも、滅多にお目にかかることはない本気の文章です。

被告人が語っている「人生格差犯罪」というのは時代を象徴するワードになっていきかねません。その種の犯罪が「ひょっとしたら今後の日本で頻発するかもしれません」と書いていますが、これに関しては同じような懸念を抱きます。

この種の犯罪に立ち向かうために必要なのは、社会的に恵まれた強者が、その「恵み」を独占せずに循環させる努力をすることだと考えています。あえてこの言葉を使いますが、「勝ち組」は積極的に「負け組」に「恵み」を与えていかないといけないのです。勝ち組だけで恵みを独占していると、格差はいつまで経っても埋まりません。いわゆる「ノブレス・オブリージュ」が日本に求められるとぼくは考えています(ノブレス・オブリージュと日本人 : イケハヤ書店)。

また、何をもって勝ち/負けを判断するのか、これを個人として考えていくことも求められるでしょう。資産1億円持っていれば、大企業で年収1,000万貰えれば幸せかというと、本人にとっては不幸である可能性もあるわけです。その逆に、年収200万円でも幸せに生きている人も、事実として存在します。少なくとも「お金」だけで勝ち負けを決めるという態度は、論理的ではありません。「ありのままの自分を認めてくれる人の数」の方がまだ勝ち負けの指標として納得感があります。


日本で生まれ育つと「平等」であることが当たり前に思えてきますが、この世の実態は不平等です。昨今の経済情勢を考えると、不平等さは増しています。

平等は、永遠に達成されない理想のようなものです。被告人の言う「人生格差犯罪」を防ぐためには、この認識を持たないことには始まらないと思います。


自分が恵まれているのなら、そのことに自覚的になり、できる範囲で、恵みを循環させましょう。自分が恵まれていないというのなら、やはりそれに自覚的になり、心身の健康を守りながら、自分を認めてくれるコミュニティを探してみましょう。

自分ではどうしようもない事情で人間は浮き沈みするわけですから、変に自己責任に追いやられると、自他を破滅させる道にしか進まないと思われます。個人の努力でどうこうできるほど、この世の中は甘くないのですから…。


「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開1(篠田博之)
「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人意見陳述全文公開2(篠田博之)