これは物議を醸し出しそうな作品ですねぇ。2/21発売の新刊です。献本を読み終えたので読書メモを残しておきます。


「仕事を辞めて専業主婦になるのは、新しいフェミニズムよ」

・みんなが家庭作りに熱中し始めた理由は、いくつもある。自給自足生活への憧れ。環境への配慮。子育てと両立できる仕事。温かい家庭への憧れ。けれど、その根底には共通するものがある。わたしたちの時代は、経済も環境も危機に瀕している。こんな時代だからこそ、誰もが人として真に意義のある人生を送りたいと、本気で考えているのだ。

ストレスだらけで、離婚を経験したベビーブーマーたちは、バランスの取れた人生がどんなものかを、こどもに教えてくれなかった。だから、その子供たちは、出世することしか頭になかった親が、幸せな人生を送ったとはとうてい思えずにいる。となれば、意義のある幸せな人生のヒントを、遠い昔の古き良き時代に求めるのは当然なのだ。

・彼女たちは、昔ながらの専業主婦1.0からバージョンアップしたまったく新しい進化形、専業主婦2.0なのだ。そして、少し大げさかもしれないけれど、いま、"ハウスワイフ2.0革命"が起きているのだ。

・子供を公立学校に通わせるのがいやで、自宅で教育する母親も急増している。そう、ホームスクーリングで実際に子供に勉強を教えるのは、父親ではなく、ほぼ100%母親なのだ。ホームスクーリングで勉強している子供は、1999年には85万人だったが、2003年には110万人に、2007年には150万人にもなった。ホームスクーリングを選んだ理由としては、"学校の環境に不安を感じる"ちおうのが第一位だ。以前は、子供を自宅で教育するのは圧倒的に宗教上の理由だった。

・ホームスクーリングで子供を育てている母親はたいてい、今大人気の育児法を実践している。添い寝、長期の母乳、スキンシップを重視する愛着育児法だ。

・アメリカ人の4人に3人が保育園には批判的だ。

・「仕事を辞めて専業主婦になるのは、新しいフェミニズムよ」と言うのは、シカゴ在住の20代のママ。幼い息子と一緒に過ごせるように、ソムリエの仕事を辞めて、パートタイムで助産師として働いている。「それは女性の権利なの」。

・もうおわかりだと思うが、ハウスワイフ2.0現象の根っこには職場への不満がある。手作りの品を売って生活しようとする人が増えているのは、機械相手の仕事ではなく、手作業に惹かれているせいでもある。同時に、時間の融通も利いて、家族と一緒に過ごせるからでもある。

・「1960年代のフェミニズム運動のおかげで、女性は一生懸命働けば、会社で出世できると思った。だから、わたしたちの母親は外に働きに出たの。でも、現実はぜんぜんちがった。産休はこれだけしかないの?これじゃあ仕事をしながら、子育てするなんて無理、と思い知らされた。仕事と家庭のバランスなんてあったもんじゃない。だから、やっぱり仕事を辞めて、桃の瓶詰めを作るわ、と言い出すの

・たしかに、現実は厳しい。フェミニズム運動が起きて、女性はこれでようやく男性と方を並べて仕事ができると期待した。けれど、その期待に見合うほど社会は成長しなかった。社会が働くママを失望させたのだ。

・家庭を優先させて、女性が自ら仕事を辞めたことにすれば、会社や社会の問題点はうやむやになる。(中略)女性が専業主婦になるのは、母性本能のせいだということにしておけば、仕事を続ける母親は、自分を偽っているか、自然に反したことをしているような気になる。そういう報道のせいで、女性は本当は職場が決めたことなのに、まるで自分が決めたかのように錯覚するのだ。

・実際に行われた調査では、専業主婦の母親より、働く母親のほうが遥かに幸せで、充実しているという結果が出ている。だからといって、専業主婦の母親にはならないほうがいいというわけではない。たったひとつの生き方だけをマスコミが誉め称えるのは、問題だと思うのだ。

・大半の主婦ブロガーは、家事の復活は進歩的で革新的だと考えている。

「昔は、家事だけをやってるなんて、無能な証拠と思われたから。でも、いまはぜんぜんちがう。家事にも能力や技術が必要な時代だから、わたしはそのことをブログで広めてるの」

・無数のファンがいるママ・ブロガーのヘザー・アームストロングもその一人だ。アームストロングは子育てに悪戦苦闘する専業主婦の日常を、ブラックジョークを交えてブログにアップしている。ブログの一日の訪問者数は10万人。年間広告収入は100万ドルと言われている。

・「フェミニズム運動全盛期に、女性は悪魔と取引してしまった。キッチンに閉じ込められてうんざりしていた女性は、何も考えずに受け入れてしまったのだ。もっと便利な生活にしてあげようという食品業界の甘い囁きを。それと引き換えに、それまでよりも食べ物にお金を使うようになって、健康を害して、家族関係まで危うくなった」(マーガリート・マントー・ラオ)

・現在の手作り食ブームには大きな、いや、特大の問題がある。昔から食べ物に責任を持たされてきた女性ばかりが、大きな、いや、特大の罪悪感を抱かされることだ。

・19世紀の農家の主婦とちがって、成功しているいまどきの主婦は、人知れずひっそりと家事をこなすなんてことなしない。自分が身につけた技術の発信源をいくつももっている。技術を伝えて、家事に熱心に取り組んでいることを、多くの人に認められているのだ。

・いまどきの主婦はちがう。家庭を復活させて、世の中に女性の声を届けようとしている。

・「動機はちがうけれど、極端に保守的な人と極端に進歩的な人が、そっくり同じことをしてる」とレイチェルは言う。

・そう、モルモン教とハウスワイフ2.0は、パンとバターのように切っても切れない間柄だ。モルモン教では女性は母親としての務めが何よりも重要視されている。幸福な家庭を築くのが人の指名なのだ。若くして結婚する人も多い。モルモン教の本拠地ユタ州は、アメリカでいちばん初婚平均年齢が低い。また、その信者のあいだでは結婚したら、夫婦は子供をたくさん作るのがあたりまえだ。というわけで、ユタ州の出生率は全国平均の1.5倍。

・昔と現代では価値観が逆転しているのだ。かつては貧しい人たちが必要に迫られてやってきた家事を、どちらかと言えば裕福な人たちが復活させるという不思議な現象が起きている。

この本で紹介したハウスワイフ2.0はとくに裕福ではないけれど、知的で問題意識の高い人たちだ。ほぼ全員が大卒で、ほぼ全員が中流以上の家庭出身。だから、家事に対する考え方も、貧しい人とはまるでちがう。(中略)自分たちほど恵まれていないママに対する気遣いなど、これっぽっちもない。フルタイムで働かなければならない事情がある母親が、この世にごまんといるのを知らないかのようだ。

・ハウスワイフ2.0現象は、実は不合理な社会に対する悲鳴なのかもしれない。食の安全や適切な医療、環境保護、働く親が軽視されている社会に、多くの人が悲鳴をあげているのだ。

どうでしょう。あとがきにも指摘があるんですが、日本でもこの動きは見られますよね。うちの妻なんかも感覚的には近いのかも。

なんというか、この種のテーマは嫉妬が渦巻きそうな予感がして、あまり触れたくない気がします。「働けるのに働かないなんて贅沢だ!」とか…。日本でどんな議論になるか注目ですね。