ブログ・メルマガでも何度か書きましたが、1/18〜1/24まで、飛騨古川の「飛騨里山オフィス」に滞在していました。取材旅行と仕事を兼ねた旅、すばらしい時間を過ごすことができました。

やさしい里山にある、こもって働ける古民家たち | 飛騨里山オフィス HIDA SATOYAMA OFFICE


空き家活用の先端事例として

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(今回滞在した「末広の家」)

「飛騨里山オフィス」は現地の空き家を「オフィス」として貸し出すというプロジェクト。2014年1月現在は「トライアル期間」ということで、「一棟貸しで一週間5万円」という格安料金で利用できます。5人で一週間滞在すれば、一人当たりなんと1万円。交通費込みで5万円程度で飛騨地域を楽しむことができてしまいます。

そんな里山オフィスのスタッフである株式会社柳組の竹川恒平さんのお話を伺うことができたので、簡単なインタビュー形式でお送りいたします。


イケダ:すばらしい時間を過ごすことができました。現地の空き家に泊まるというのは、新しい旅のスタイルになりますねぇ。

竹川:現在は「一棟貸し」のスタイルなので、たとえば「2月1日から2月20日まで貸し切ってるから、好きな時に泊まりに来なよ」という使い方もできますね。メンバーの予定を合わせるのって難しいじゃないですか。

イケダ:クリエイティブな使い方ですねぇ。ちょっとした大家さん気分になれますね。場所に囚われない仕事をしている人には魅力的でしょうね。そもそも、このプロジェクトはいつ始まったのでしょうか?

竹川:2012年の5月にスタートしています。古民家の貸し出しに着手したのが同年7月です。現在もトライアル期間という位置づけで、今年で2年目に入ってます。

イケダ:数でいうと、何組くらいの方が利用してきたのでしょうか?

竹川:40組くらいはご利用いただいていますね。

イケダ:おぉ、意外と多いんですね。

竹川:リピーターの方も多いです。飛騨が好きでいずれリタイアしたら移住したい、という方でも、4回いらっしゃっている方もいます。

イケダ:4回!その方は飛騨古川に滞在しながら仕事をしているのでしょうか?

竹川:その方は旅行がメインという感じですね。パッケージの旅行では味わえないところに衝撃を受ける方が多いようです。

イケダ:あ、「里山オフィス」ですが、普通に旅行に使ってもいいんですね。仕事メインかと思ってました。確かに、サイトを見ると「ご旅行目的のステイからリゾートオフィスとしてもご利用いただけます」と書いてありますね。

竹川:そうです。オフィスとしてだけでなく、短期滞在の旅行にもご活用いただいています。仕事目的の方、旅行目的の方、今はちょうど半々くらいですかね。幅広くご利用いただければ嬉しいです。

イケダ:ホテルではなく民家(空き家)に住まう、というのは新しい観光スタイルとしても受け入れられていくと思います。文化を肌で感じることができるのが素晴らしいですね。古川の方々が愛用するお惣菜屋「おかずや 山本」は本当に美味しかったです(笑)

竹川:そういった話は現地の方にとって実は刺激的で、そもそも古川は宿泊客は少ないんです。やはり高山の方が人気でして、古川に来るとしても、祭りの時期か、そうでなければ1〜2時間観光して高山に戻ってしまったり。そんな背景があるので、私たちがプロジェクトを始めて、地元の方々も「なんか1ヶ月泊まってる人いるけど、何してるの!?」「おかずや山本でいいの!?」と驚かれています。

イケダ:ぼくは高山を一泊二日で観光するより、古川に1〜2週間滞在する方が楽しいと感じますけどねぇ。生活してみないと、やはり色々見えませんから。


空き家活用の課題

イケダ:こうやって空き家を使わせていただくというのは、滞在者としては本当に有意義です。が、空き家活用は簡単ではない、というお話もよく伺います。飛騨に限らず全国的に広がっていってほしい活動ですが、この取り組みの中で、どのような課題を感じていらっしゃいますか?

竹川:まず空き家の現状でいうと、こんな地図を制作しているんです。オレンジが空き家で、黄色65歳以上のみで住んでいる世帯です(参考:飛騨市民新聞「空き家対策 待ったなし」 – やさしい里山にある、こもって働ける古民家たち)。

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イケダ:現地の方から伺っていましたが、これは凄まじいですね。空き家に囲まれている家なんかも普通にありますね…。

竹川:こうして地図に落としてみると、インパクトがありますよね。ここは「相場崩し(景観を乱すこと)」を嫌うので、不要な空き家はちゃんと解体する方が多いです。なので空き屋率が全国比で高いわけではないんですが、古い街並が魅力なので、空き地ばかりになるのは問題ですね。

イケダ:何も手をつけずにいると、このままだと空き地だらけになる、ということですね…歴史ある建物が取り壊されていくのは、なんとも心苦しいです。

竹川:課題という点については、やはり空き家を貸してもらうことが難しいですね。空き家とはいえ、大家さん個人の財産であって、その場所に色々な思いがあるのが普通です。おいそれとは貸してくれるわけではありません。

倉庫代わりに使っており、撤去が大変で引き渡せない。長らく人が住んでいないので建物の状態が悪くなって、売るに売れない、ということもよくあります。売るに売れない一方で、大家さんの多くは、やっぱり貸すよりは売りたいと考えているのが現状です。

イケダ:需要と供給がマッチングしてない、という感じですね。政策レベルで流動化を進められるといいのでしょうけれど…。

竹川:「里山オフィス」に関しては、利用させていただく代わりに、空き家の管理を我々が行うので、大家さんには喜んでいただいています。物件によっては、維持管理だけ年間100万円以上掛かっていたケースもあります。貸し出していただくことで、大家さんにとってはコスト削減になるわけです。


東京から移住して働く

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(冬の飛騨古川)

イケダ:ところで、竹川さんはもともと何をなさっていたのでしょう?

竹川:今と同じように、もともと建築関係の仕事をしていました。私は東京生まれ、東京育ち。新宿で生まれました。

イケダ:おぉ、東京生まれで、飛騨ですか。

竹川:で、建築の仕事をしていたわけですが、新しい家を建てることに疑問を抱き始めて…。35年ローンを組んで建てて壊して、という仕組みに違和感がありました。

そんななかで、もっと古い物件を活用できるようになったら、暮らしの選択肢が増えるんじゃないのか、生活をデザインできるんじゃないのか、と思い至りました。で、飛騨で地域活性化に取り組む「美ら地球」の山田拓さんに出会って、このプロジェクトに関わることになりました。

イケダ:東京からこちらに移住して、どうでしょうか?

竹川:気に入っています。こちらは本当に四季の色合いが濃くて、冬はご存知の通り極寒・豪雪。春になって雪が溶けると、田んぼ一面に水が張られ、山が新緑と雪で彩られ…夏は涼しくて過ごしやすく、鮎も捕れます。秋は紅葉で鮮やかに色づき、新酒も出てきます。食べ物も季節折々で違うので、すべての季節を楽しんでほしいですね。

イケダ:現地の方に伺って素敵だなぁ、と思ったのは「5月下旬になると、山が大きくなる」という表現です。東京ではまず感じられない世界でしょうねぇ。

竹川:かといって、東京へは定期的に戻っているので、二拠点で働いている感じですね。東京までは遠いんですが、それがまたよかったりして。

イケダ:もうすぐ北陸新幹線も通りますし、東京はさらに近くなりますよね。飛騨—東京の二拠点で生活をするビジネスパーソンは地味に増えていくのかもしれませんね。


古民家に住まう、という新しい旅行スタイル

空き家活用は全国的な課題ですが、飛騨里山オフィスはまさに最先端事例として注目すべき取り組みだと感じます。

シンプルにいって、こういった取り組みは新たな旅行スタイルとして期待ができます。ぼくは仕事柄、日本全国を訪れることが多いのですが、「空き家に一週間滞在して、現地の暮らしを楽しむ」というのはまったく新しい体験でした

「ホテルや旅館に二泊三日で滞在して、美味しいご飯と温泉を楽しむ」というのも楽しいですが、やっぱりお金が掛かりますからねぇ。空き家をレンタルするかたちなら、宿泊費が抑えられることに加えて、自炊中心の生活ができるので、長期滞在をしてもそれほどコストがかさみません。比較的長期間滞在できるので、ゆっくりと観光することもできます。仕事を持ち込むのもありでしょう。

ぼくが滞在した「末広の家」の写真をこちらの記事(飛騨古川「里山オフィス」に一週間滞在したわけですが、豪邸すぎて文豪になった気分でした)にまとめていますので、気になる方はぜひ合わせてご覧ください。ぼくはリピーター確定です。今度は夏あたり、2週間ほど借りて、家族や友人を呼んで過ごしてみたいと思います。

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