すでに記事を2本(よしもとばなな&本田健が語る:「サドベリー教育」を知っていますか小説家・よしもとばなな氏「小学校3年で勉強は捨てました」)アップしていますが、「サドベリー教育」について詳しく伺ってきました。現場のスタッフの方、生徒さん、親御さんのお話を伺えたのでまとめておきます。


サドベリースクールの3つの特徴

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まずは東京サドベリースクールの加藤さんから、教育の特徴や理念についての簡単な解説。

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今日はお集りいただきありがとうございます。サドベリースクールの特徴からお話したいと思います。

まず、カリキュラム・テストがありません。子どもたちは自分の好きなことを学びます。私たちは、人間は本能的に好奇心をもっていると考えています。好きなことは、人に言われなくても勝手に身体を動かしていくものです。みなさんも今日の講演会は、自分で学びたいから、自分の意思で足を運んだのだと思います。

写真に映っている10歳の男の子は、パソコンで映像を編集することを好きになり、短編映画とCMをつくりました。今ではソフトの使い方を、私たちが教えてもらっています。好きなことに没頭し、どんどんと次に進んでいきます。

料理が大好きな女子生徒は料理を作って、学校の仲間に振る舞っています。歌が好きな生徒は自主的にコンサートを開催しています。1年中読書をする子どももいますし、自然の中でスケッチをする子どももいます。

ぼーっとしている子どももいます。私たちはこの時間を大切にしています。これは自分を見つめなおす、重要な時間です。


ふたつ目の特徴は、子どもたちは大人と同様、対等な一票の権利を持っていることです。校則や年間予算、スタッフの雇用も子どもたちと行っています。スタッフは選挙を通して子どもに選ばれます。よく驚かれますが、私たちは、子どもたちに選ばれないと働くことができないんです(笑)

あらゆることを子どもたちと話し合うようにしています。ケンカが起きたときには、何時間も話し合います。


三つ目の特徴は、異年齢と共に過ごします。サドベリースクールでは、社会に出たときと同じように、幅広い年齢の人と時間を過ごします。


サドベリースクールの3つの価値観

私たちが大切にしている3つのことをお話します。ひとつ目は、信じること。自分と相手を信頼します。

料理が好きな子どもの話です。サドベリーレストランを自主的に運営するなど、活発に行動していました。しかし、突然、彼女は学校に来なくなりました。

私たちは彼女を信じて、待ちました。春休みが終わったとき、彼女が明るい声で「レストランに面接を受けにいって、合格しました!」と電話してきてくれました。16歳で採用するのは前代未聞だが、採用を決めてくれた、と。これは彼女が自分自身を見つめて、信じた結果だと思います。


ふたつ目は、安全であること。子どもたちには安全基地が必要です。家庭はもちろん、学校も安全である必要があります。サドベリーでは、相手と自分が違う存在なんだ、という安心感を持っています。

私たちは、価値観も意見も好き嫌いも違います。サドベリーで学ぶ子どもたちは、それを当然のことだと知っています。その人は、それだけで十分すばらしい存在である、ということです。


最後に、楽しむこと。やりたいことを見つけたとき、どうしたら実現できるかを考えていきます。今の自分に満足することは、自分自身を見つめることにつながってくる。才能を伸ばすということは、好きなことを楽しみながらやりつづけることだと思っています。


サドベリースクールに通う生徒の話

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つづいてスタッフの杉山さんと3人の生徒のディスカッション。高校生からサドベリーに通う18歳のNさん、中2から通う14歳のTさん、7歳からサドベリーで育っているHさんの三人が登壇しました。

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杉山さん:普段、学校では何をしていますか?

Nさん:料理が好きなので料理をしています。洋菓子やパンを年下の生徒とつくって、学校やイベントと売っています。ここでも売っていました、もう完売してしまいました。ありがとうございます。

Tさん:ゲームをやっています。ゲームとといっても、みんなでできるパーティゲームが好きですね。スマブラとかマリオとかぷよぷよとかを、一日中やっています。

Hさん:物事を決めるミーティングなどに参加することが多いです。年齢ごとに興味が移っています。振り返ると、毎日ゲームをしている時期も、何もやっていない時期もありました。今は歌を歌うことが好きで、年に2回コンサートをやっています。


杉山さん:NさんとTさんは一般的な学校に通った経験があります。Hさんはそういう経験がありません。一般的な学校とサドベリーの違いをどう感じているかについて、教えてください。

Nさん:色々なことが違っていて、挙げるときりがないのですが、一番は自分で選択できることだと思っています。ここでは何でも自分で決めます。自分で決めることは、自分と向き合うことだと思っています。一般の学校に通っていたときは、自分に向き合う余裕がありませんでしたが、今はその余裕があります。

Tさん:自分で選択するというのは、何をするかしないかを自分で決められるということですよね。ぼくはサドベリーに入ってすぐは、「勉強は必要ない」と思っていたのでひたすらゲームをしていました。しかし、最近は勉強はやっぱり必要だと思い始めたので、勉強をしています。ほかにも色々やりたいことはありますね。この講演に登壇したのも、自分で決めたことです。


杉山さん:Hさん、一般的な学校に行っていなくて、困ったことやよかったことはありますか?

Hさん:同年代の子どもたちがいるキャンプにいったんですが、正直話が合わないな、と思った(笑)同世代の子たちはファッションとかの話が好きみたいだけれど、私は色々な人と話すので、ファッションと経済を結びつけて話したかったりする。でも、そういう話にはならなかったです(会場笑)。Nさんはどうですか?

Nさん:私は地元が長野県で、サドベリーに入るために上京しました。Hさんの言うとおり、メイクとかファッションの話はサドベリーではできないので、地元に帰ると楽しい部分はありますね。

地元の友だちとは、考え方が合うかというとそうではなくて、ベースの部分が違うと思う。ただ、意見が違うのは当たり前で、大切なのは認めあうことだと思っています。元から私はそういう考え方をもっていたが、サドベリーで習慣として学んでいきました。


杉山さん:サドベリーはどういう雰囲気の学校だと感じていますか?

Tさん:アットホームだと思っています。通っている生徒全員が楽しい時間を共有できる友だちです。生徒全員というと年齢にもバラツキがあるが、年齢意識は特にないです。最初はさすがに不安はあったけれど、年下の子がゲームに誘ってくれて、すぐに仲良くなりました。

Hさんサドベリーという場所は、自分の好きなこと、やりたいことを実現できる学校だと考えています。たとえば、2年ほど前までは私くらいしか音楽をやりたい人がいなくて、コンサートがありませんでした。そこで私は、サドベリーに関わるミュージシャンの方々を巻き込み、コンサートを運営することにしました。これは、本当に自分がやりたいと思ったから、実現できたことだと思っています。


杉山さん:最後に、自分自身、どういう人でありたいと思いますか?

Hさん:とっても難しい質問です。私は自分の気持ちにウソを付かない人間でありたいな、と思っています。

15年間生きていて、社会を見ていて実感することなんですが、本当に好きなことをやっている人は意外と少ないと思っています。本当にやりたいことがあっても、それを犠牲にして仕事に就く人が増えているのではないでしょうか。私はどれだけ貧乏になっても、やりたいことをやっていきたいと思っています。

私は20歳になるまでに、中国語、日本語、英語の三ヶ国語を通訳できるようになりたい、という夢があります。私は7歳に戻っても、この教育を選ぶと思います。サドベリーはハイリスクだと思いますが、一度見学にいらしてください。


杉山さん:…なんかまとまっちゃいましたね(会場笑)

Tさん:なんかおまけみたいですけど…(笑)ぼくはありのままで生きていきたいと思っています。楽しいことをするためには環境が必要だと思います。逆算していくと、高校入学が目指すべきことだと感じています。


おまけふたつめですが(笑)この質問を事前に問われて、一週間以上悩んだんですが、質問の答えが出ませんでした。なんとかでありたいの「なんとか」を考えていたら、そこではないと思った。「ありたい」がなくて、ありのままの自分を信頼しているので、このままで生きたいと思っています。

料理が好きなので料理の道に行くか…自由に生きなきゃいけない、好きなことを仕事にしないといけない、ということに囚われず、今までのように生きていきたいと思っています。


なぜサドベリースクールに決めた?親からのお話

続いて保護者による対談。6歳から3年サドベリーに子どもを通わせているYさん。15歳から3年通わせているHさん。6歳から3年通わせているKさん夫妻の四人の方が登壇しました。

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Q:そもそもなぜサドベリーに決めたのか?

Hさん:きっかけですよね。中学生の頃に、娘が突然学校に行かなくなりました。「公立や私立にいっても、もう学ぶことがない」と。困った挙げ句サドベリーの見学に行ったら、ここにする、とその日に彼女が決めました。

Kさん妻:うちの子どもは幼稚園を卒園してからそのままサドベリーに入学しています。色々なものに興味を持っているときには、それを見守るようにしていました。が、小学校の入学時点で、それが維持できないと気づいたんです。そこに疑問を感じているときに、サドベリーに出会いました。好きなだけやって、集中できる、そこに魅力を感じました。

Kさん夫:千代田区に住んでいたが、近くの学区に入れるつもりだった。でも見てみたら、それはそれはひどかったんですよ。ぼくの年代の小学校だと、子どもが授業中に静かにしないとぶん殴る。それをやらないと聞いた時点でありえないと思った。今度は私立を見たら、北朝鮮のように見えた。家内からサドベリーの存在を聞いて知って見に行ったら、子どもたちが幸せそうな顔をしていました。それでここだ、と決めた。

Yさん:仕事の関係でサドベリーを知りました。社会のなかで輝いている人たちは、やりたいことをやりつづけていた。サドベリーはそういう意味でいいんじゃないか、と思い決めました。


Q:子どもたちはどう変化しましたか?

Hさん:毎年変わっていくんですが、ここ最近は料理洗濯掃除がうまくなりましたね。土日は家中がピカピカになっています。今ある暮らしをしっかりする、というのは3年間で身に付いたのではないかと思っています。

Kさん妻:子どもが純粋に、自分のペースで自分らしく生きているな、という感じがします。自分がやりたいものが出てきて、それを続けているのを見ると、それだけでよかったと感じますね。

Kさん夫:とりあえず毎日が楽しそうですね。1年半前に、娘から「空手やらない?」と言われた。まったくやったこともないのに。更新のたびに「まだ続ける?」と聞くが、しっかり続けている。改めて、自分で決めたことは一生懸命やっていくんだな、と思った。本屋さん連れてって、言われたので連れて行ったら、ドリルを買っていた。そして勉強しています。

Yさん:自分で決めたことを自分でやる、という感覚がありますね。時間に正確なんですね。3時に帰る、というときっちり3時に帰ろうとする。約束に対する意思が強くなった気がします。


Q:子どもの将来に不安はありますか?

Hさん:ありますね。ただ、親なら誰でも不安だとも思います。将来どうなっていくのか、というよりは今健康で、元気でいるか、という意味の不安です。将来については、結局私が心配することではない、私の役目ではないと思っています。

Kさん妻:親の一人としては不安を感じます。ただそれは当然で、自分の将来はどうなのか、主人は、家族は、というと、みんな心配ですよね。その前に、自分がどう生きるか、幸せに生きるかという姿を見せることが大切だと考えています。

Kさん夫:あります。かといって、有名私立校に入れたって不安だらけだったと思う。

Yさん:不安はあります。自分の不安が子どもに投影しているように思える。どちらかといえば、この問いは自分に向いているように感じますね。


Q:読み書きできないという話については?

Kさん妻:読み書きできないというわけはありませんね。ゲームをやるにも文字が読めないと進めないので、必ず知りたい興味が出てきます。競争心も出てくるので、結局自分からやりたい、という風になっていきますね。

Hさん(生徒):読み書きは習ったことないので困りますよね(笑)何度も困ったけれど、物心つく頃、9歳とか10歳くらいの頃にはできましたね。マンガが好きだったので、ふりがなのないマンガを読みたくて、最低限は身に付いていきます。一般の学校で学ぶようなものは、興味がないと学べませんね。そこを学ぶという意味では、一般の学校の方がいいと思います。


Q:ゲームについて。ほかの家族はストップを掛けている。視力が落ちるのではないか、と。

Kさん夫:ゲームについては決めごとをしました。休憩する、動いているところではやらない、そして「やり倒す」。もうやっていませんね。

Kさん妻:子どもがゲームが好きなら、止めるのは無理だと思います。そこから学んでいるので、もうやらせた方がいいと思います。その道の能力を持っていることもありえるので、やっても問題ない方法を模索するのがひとつでは。

Hさん(生徒):私もゲームをやっていたけれど、飽きるものです。そのうちほかのことに興味が移ってくるはずです。心配は特にいらないのかな、と思います。

杉山さん:ゲームについて私もひと言。小中高とゲームをやっていたけれど、ゲームで友だちができることはいっぱいあったんですよね。サッカーとか野球と同じで。ゲームをやっているとなんか目の敵にされてしまう。ゲームは悪者だ、という不安があると思う。マンガも不安視されていましたよね。しかし、ゲームもマンガも日本の重要なコンテンツになっている。悪い面ばかりだけでなく、良い面も見ていくことは大切では。


Q:サドベリーは向き不向きがあるのでは?会社員とか公務員に行くような子どもはサドベリーに向いていない?

Kさん夫:ぼくは子どもは全員向いていると思います。ただ、ご両親の感覚については向き不向きがあると思います。

Kさん妻:子どもをよく見て、選んだらいいと思う。今は、学校を選べる時代になったと思います。親子で相談して、選択のひとつとして考えるといいのではないでしょうか。

Nさん:与えられるのが好きな子は、公立の学校が過ごしやすいと思う。見学に来て、ここで学びたい、学べるものがあると感じるのなら、そこの子には向いているんじゃないかと思います。

杉山さん:すべての子に合っているかは正直わかりませんね。すべての子の性格を知っているわけではないので。サドベリー教育について知って、関心を持った人には相性が合う可能性があると思います。まずは雰囲気を感じて、見ないとわからないので、見学に来てください、とお伝えしています。


と、いうわけでサドベリー教育についてのリアルなまとめでした。ほかにも記事を書いているので、こちらも合わせてぜひ。

よしもとばなな&本田健が語る:「サドベリー教育」を知っていますか : ihayato.書店
小説家・よしもとばなな氏「小学校3年で勉強は捨てました」 : ihayato.書店