昨日、「一般財団法人 東京サドベリースクール」主催のイベントに参加してきました。本田健さん、よしもとばななさんのお話を伺ったのでメモとして残しておきます。豪華なイベントですねぇ。前編として、ベストセラー作家の本田健さんの話をまとめました。


サドベリー教育ってそもそも何?

サドベリー教育って、そもそもあんまり知られていないんですよね。これとっても面白い教育方法でして、ひとことで言えば「好きなことを徹底的にやらせる」教育法です。

東京サドベリースクールには授業がありません。
テストもないし、人から指示を受けることもありません。
クラスも学年もチャイムもありません。
誰かの用意した選択肢の中から選ぶのではなく、まったくゼロベースの中から、自分の好奇心を追及しつくしたり、自分たちに必要なシステムを、自分たちで作り上げたりしています。
つまり生徒たちは、自分でやりたいことや必要なことを見つけ出し、それを好きなペース、好きな方法、好きな人たちと共に活動しているのです。

東京サドベリースクールとは | 一般財団法人 東京サドベリースクール

スタッフの方いわく、特徴は「カリキュラム、テストがない」「生徒とスタッフが平等な立場で学校運営に参加する」「異年齢と共に過ごす」の三つ。どれも日本の公教育とは大きく違ったアプローチです。


「将来読み書きができなくなる可能性がありますが、いいですか?」

というわけで、まずは本田健さんのトークをお楽しみください。ベストセラー作家としても著名ですが、ご自身のお子さんもサドベリー教育で育てた経験を持っている方です。

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みなさんこんにちは、作家の本田健です。なぜ私が講演会のトップバッターかというと、サドベリー教育に縁があるんです。まずはその話をして、そのあとによしもとばななさんとお話させていただきたいと思います。

サドベリーにはじめて興味をもったのは16年前になります。娘が妻のおなかにいるときです。テレビを付けたら、たまたま「外国の教育特集」としてサドベリーが紹介されていて、興味深く見ました。それから数年後、娘を小学校に入れるとき、この番組の内容をふと思い出した。

……でも名前が思い出せない。なんとかベリー。「ベリー 教育 自由」とか検索したけど出なかった(笑)なんとかサドベリーを見つけて、2005年にアメリカのキャンパスに見学に行きました。


広大なキャンパスで、子どもたちが遊び回っていました。日本人のイメージだと休憩時間。でも休憩時間が終わらない(笑)

それを見て、これだ!と思いました。入学は家族三人で決めたのですが、「バレエが好きなだけ踊れる、あの学校がいい」という子どもの意見もあり、早速ボストンに移住した。

まずは面接がありました。「将来読み書きができなくなる可能性がありますが、いいですか?」と聞かれてちょっと引いた。しかも、面接はけっこう落とされると聞いた。すでに家財道具もこっちに送っているのに(笑)

ここまで来て落とされたらどうしようもないので、はい、多分大丈夫です、と言ったら「あなた面白いね」と言われて入学許可が下りました。

渡米した時点では、娘は英語を話せなかったの、特例的に「通訳」という身分で学校に潜り込んだ。スパイのようなものです(笑)で、学校に入ると、いったい誰が先生かわからない。あっちの高校生は大人びているので、先生かと思ったらおっさんくさい18歳だったり(笑)


サドベリー教育では「親」が試される

それで、学校にいた14歳の子に勉強好き?と聞いた。「うん」と。何を勉強してるの?と聞いたら「数学」。サドベリーは試験がないけど、そこら辺はどうなの?と聞いたら「試験?意味がわからない」と。「だって、自分が一番よく知ってるから。なんで試験を受けるの?」。

……という感じで、サドベリーを受ける子どもは、ひじょうに大人びてしっかりしている。4〜5歳くらいから自分で考える、というノリでやっているので大人以上に考えているんですね。両親の会にいくと、子どもにやり込められたことを愚痴っている(笑)まずは親が試されるんですね。

サドベリーでは、子どもは朝から晩まで好きなことをやります。そうなると、疲れた両親に批判的になっていきます。「パパ、どうしてそんな仕事をしているの?」「ママ、そんなんで人生いいと思ってるの?」と言われてしまう。大人側がやりこめられてしまうわけです。

その後、私たちはビザの更新ができなくて帰国することになった。これは日本に帰ってサドベリーの手伝いをするためじゃないか、と考えました。そして日本に帰国後、サドベリーに関する講演会をはじめ、この教育方法がすこしずつ広がっていきました。


「退屈のプール」に子どもを浸ける

ある教育学の博士とお話したとき、子育てで大事なことを3つ教えてもらいました。①親が自分のことが好きであること。いきなりハードル高いですよね(笑) ②両親がお互いを好きかどうか。③親がお子さんを好きかどうか。

これができれば勉強なんていらないです、とその人は言っていました。仕事柄、様々な天才的な才能を持つ人たちの話を聞く機会がある。面白いのは、ほとんどの人たちが10〜30代に自分の才能を見つけている。

みなさん、どこかの段階で自分探しをやっています。その軌跡がひじょうに面白い。小中高で見つける人もいるが、大学に入って、大学中退して、何かを見つけ、それを才能として磨いていく人たちがいます。やっぱり「人との出会い」に集約されますね。

自分が自分をはっきり誰だかわかっているのか、自分が何をやりたいのか、これを理解するのは大切。だけれども、学校ではあまり教えません。才能を開花してきた人は、これを見つけています。

サドベリーのすばらしいところは、幼少期にこれを見つける環境を用意してくれる。大人になると時間がなくなり、自分と向き合うことが難しい。たっぷりとした時間の中に、「退屈のプール」に人を漬け込めば、人は何かを始めるものです。

7〜8歳になると忙しくなってしまう。先日も、小学生たちばビジネスマンのように予定調整をしている場面を見かけた。サドベリーではTodoリストから解放される時間が用意されています。才能を見つける、磨くという点で、サドベリーはひじょうに理にかなったものだと思っています。


ハイリスクだけど、ハイリターンがあるかはわからない

色んな生き方があると思います。言われたことをこなす生き方、好きなことをやる生き方。みなさんがどういうお子さんに育ってほしいかはわかりませんが、サドベリーはハイリスク、そしてハイリターンがあるかはわからない(笑)、教育だと思います。

でも、時代の流れは変わっているとも思います。2020〜2030年に活躍する人材になる機会をプレゼントできるという意味では、素敵な教育だと思います。

楽に生きたければサドベリーに送ってはいけません。サドベリーは、危険かつ面白いスタイルだと思います。


というわけで、本田健さんのすばらしいトークの抜粋まとめでした。長くなってしまったので、よしもとばななさんとの対談は後編としてまとめました。続けてぜひお読みください。

小説家・よしもとばなな氏「小学校3年で勉強は捨てました」